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全長7.2mーー日本一短い鉄道トンネル「樽沢トンネル」の今
ビジョナリー編集部 2026/07/29
群馬県長野原町、かつてJR吾妻線の岩島駅から川原湯温泉駅の間に存在していた「樽沢(たるさわ)トンネル」。その長さは、わずか7.2メートルです。大型バス1台分よりも短いこの場所は、かつて「日本一短い鉄道トンネル」として全国の鉄道ファンや旅行者に親しまれていました。
2014年に八ッ場(やんば)ダム建設に伴う路線変更で鉄道としての役割を終えましたが、樽沢トンネルの物語はそこで終わりませんでした。
たった7.2m!樽沢トンネルの概要
樽沢トンネルの最大の魅力は、なんといってもその短さです。全長7.2メートルは、一般的な電車1両(約20メートル)の約3分の1ほどしかありません。時速60キロメートルで走行する電車であれば、わずか約0.4秒で通過してしまいます。
建設当時、巨大な岩山全体の地盤を崩すよりも、岩盤の出っ張り部分に小さな穴を穿つ(うがつ)ほうが合理的な判断だったと言われています。建設コストを抑え、土砂崩れを防ぎ地盤を維持するという観点から選択された手法だったのです。
「日本一」の称号と八ッ場ダム建設
樽沢トンネルは、1946年(昭和21年)に国鉄長野原線(後のJR吾妻線)が開業した際に誕生しました。
列車でアプローチすると、「トンネルに入る!」と思った瞬間に通り抜けてしまうため、車窓からの一瞬の光景を楽しむ旅行者が急増。「日本一短い鉄道トンネル」という愛称で定着し、吾妻線を代表する名物スポットとして広く知られるようになりました。 しかし、長年続いたその歴史に転機が訪れます。地域の一大事業であった八ッ場ダムの建設です。
ダム湖の底に沈む旧ルートから高台の新ルートへと線路が付け替えられることになり、2014年9月、旧線区間の運行が終了しました。樽沢トンネル自体は水没エリア外に位置していたものの、路線変更に伴い、惜しまれつつも鉄道トンネルとしての約68年の歴史に幕を閉じることとなったのです。
鉄道施設としての役目を終えた樽沢トンネルですが、現在も撤去されることなく、貴重な歴史的遺構として現地に保存されています。廃線に伴い、「現役の日本一短い鉄道トンネル」の称号はJR呉線(広島県)にある川尻トンネル(全長8.7メートル)へと引き継がれました。しかし、旧線区間にたたずむ樽沢トンネルのノスタルジックな姿は、今もなお多くの人々を引きつけてやみません。
現在の体験価値:レールバイク「アガッタン」で駆け抜ける
現在は、旧線路を活用した人気観光アトラクション「吾妻峡レールバイク Agattan(アガッタン)」のコースとして見事に再生しています。
国指定名勝である吾妻峡の美しいロケーションや八ッ場ダムを望む「渓谷コース(片道約2.4km)」の途中に、樽沢トンネルが組み込まれています。専用の自転車型トロッコに乗って、自分の足でペダルを漕ぎながらコースを進んでいきます。
かつて電車では約0.4秒で通り過ぎていた7.2メートルの空間を、自分のペースでじっくりと堪能できるのが最大の魅力です。頭上に迫る迫力ある岩肌や、トンネルを通り抜けた瞬間に広がる吾妻峡の大自然を、五感全体で感じることができます。
アクセスと周辺観光情報
樽沢トンネル周辺は、四季折々の自然と温泉に恵まれた群馬県有数の観光エリアです。
| 項目 | 詳細・おすすめスポット |
|---|---|
| レールバイク受付 | 「吾妻峡レールバイク アガッタン」公式サイトより事前予約必須(土日は混雑しやすく冬期休業あり) |
| 周辺ドライブスポット | 道の駅 あがつま峡: 足湯や天然温泉「天狗の湯」が併設されたドライブの拠点 |
| 観光名所 | 八ッ場ダム: 巨大なダム堤体や展望台からの眺望、水陸両用バスなどの体験型アトラクション |
| 名湯 | 川原湯温泉: 800年以上の歴史を誇る開湯伝説の湯。散策後の日帰り入浴にもおすすめ |
終わりに
かつて列車が一瞬で駆け抜けた小さなトンネルは、時代を経て、人の足でゆったりと歴史を踏みしめる特別な場所へと生まれ変わりました。
アガッタンは特に週末の予約が埋まりやすいため、事前に運行スケジュールを確認のうえ早めの予約をおすすめします。爽やかな風を感じながら、7.2メートルの特別なトンネルを体感しに訪れてみてはいかがでしょうか。


