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2026

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    ビジネスシーンの足元が変わる時——「革靴離れ」の背景と歴史をたどる

    ビジネスシーンの足元が変わる時——「革靴離れ」の背景と歴史をたどる

    ビジネスシーンでは長らく革靴が定番でしたが、その風景が少しずつ変わりつつあります。スーツにスニーカー、あるいはカジュアルなシューズを合わせるスタイルを目にする機会が増えてきました。

    本記事では、靴の歴史をたどりながら、現代社会で起きている「革靴離れ」の背景と、今後のビジネススタイルの行方について解説します。

    革靴のルーツを辿る——人類と足元の進化

    革靴の起源は意外にも古く、約5500年前、アルメニアの洞窟から発見された一枚革の靴が世界最古のものとされています。

    古代エジプトでは気候に合ったサンダルが主流だった一方、ギリシャやローマ時代には階級や職業を示す多彩な履物が生まれ、靴職人が重宝された時代もありました。中世ヨーロッパでは、つま先が長く伸びた靴(プーレーヌ)など、富や権力の象徴としての“装飾的な靴”が貴族たちの間で流行しました。

    そして産業革命を迎えると、靴づくりも大きく変わります。

    イギリスのノーサンプトン地方に代表されるように、ミシンの発明や新しい縫製技術によって、大量生産が現実のものとなりました。この流れは日本にも波及し、明治維新以降は軍や官公庁で西洋靴の導入が進み、やがて一般市民にも「靴を履く文化」が広がっていきます。

    日本のビジネスマンと革靴

    日本のビジネスマンにとって、革靴は長らく「社会人の証」としての役割を果たし、面接、入社式、営業先への訪問——どの場面でも黒いドレスシューズは不可欠な存在でした。

    その一方で、「履くと足が疲れる」「手入れが面倒」などの声も絶えませんでした。本革は定期的な手入れが必要で、合成素材と比べて重く、クッション性も乏しいものです。長時間の立ち仕事や外回りの日には、その負担は決して小さくありません。

    そのため、冠婚葬祭や重要な式典以外では「革靴を避けたい」と感じる人が増えていったのも自然なことと言えるかもしれません。

    カジュアル化の波とコロナ禍

    2000年代半ばに始まった「クールビズ」や「働き方改革」、さらに2020年以降のコロナ禍によるリモートワークの拡大は、ビジネスファッションの常識を大きく変えました。ネクタイやスーツの着用が必須ではなくなり、Tシャツやジャケット、カジュアルパンツがビジネスウェアとして定着する中で、「革靴を履く理由」がどんどん希薄になってきました。

    加えて、スニーカーの進化も大きな影響を与えています。最新の技術を取り入れたスポーツシューズは、クッション性、軽さ、通気性に優れ、1日中着用しても疲れにくいと支持されています。

    保守的と言われる業界でも、足元がカジュアルになっているケースが目立っています。

    市場データで見る「革靴の苦戦」と「スニーカーの躍進」

    国内の靴市場を見てみると、近年その全体規模が頭打ち傾向にあります。2015年度にピークを迎えた後、2020年度にはコロナ禍の影響で大きく縮小し、その後も完全な回復には至っていません。

    しかし内訳を詳しく見ると、スニーカーやスポーツシューズの売上構成比は年々増加し、直近では市場全体の6割に迫る勢いです。一方で、紳士用の革靴は全体の1割程度にまで縮小し、売上もコロナ前から大きく減少したままです。

    業界の象徴的な出来事として、日本を代表する老舗メーカーが自社工場を閉鎖したニュースがありました。かつては就職活動や新社会人の定番だったブランドが業績悪化に苦しんでいるのは、市場全体の変化を如実に物語っています。

    革靴の価値観が変わる瞬間

    しかし、このような流れの中でも、クラシックな革靴を愛する層が完全に消えることはありません。一部の愛好者にとっては、「趣味の逸品」「自己表現の一部」としての価値を増しています。高級時計や万年筆のように、細部の仕立てや履き心地を楽しむ“嗜好品”としての位置づけが強まっているのです。

    一方で、機能性とドレス感を両立した「ハイブリッド型」も登場しています。見た目は従来のドレスシューズでも、内部にスポーツシューズ並みのクッション技術を搭載した商品が人気を集め、従来型と新型の「融合」が進んでいるのも特徴的です。

    ビジネスマンの「足元の選択」はこれからどうなるのか

    このような時代の変化の中で、ビジネスマンの「靴選び」に求められる価値観は大きく変わりました。「楽で疲れにくい」「メンテナンスが簡単」「TPOに合わせて選びたい」といったニーズは、今後ますます重要になっていくでしょう。

    また、健康志向やSDGs(持続可能な開発目標)への関心も高まり、リサイクル素材やヴィーガンレザーを使ったシューズが支持を集める傾向もあります。

    各人が自分らしいスタイルを模索し、自由に選択できることが、現代ビジネスパーソンの新たな魅力となっているのです。

    まとめ

    歴史を振り返れば、靴は常にその時代の生活や文化を映し出してきました。「革靴離れ」の背景にも、社会の価値観、技術革新、ファッションの多様化、そして働き方そのものの根本的な変化が複雑に絡み合っています。

    これからも、靴は私たちの生き方や価値観を象徴する鏡となるでしょう。

    #ビジネスファッション#オフィスカジュアル#ビジネスマン#ビジネススタイル#スーツコーデ#働き方改革#革靴#ドレスシューズ#スニーカー通勤#ビジネスシューズ

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