麻辣湯の進化と拡大―外食業界に新風を巻き起こす理...
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その先に広がるのは“非日常”──普段は入れない場所を巡る特別な旅
ビジョナリー編集部 2026/03/31
近年、観光のあり方が大きく変化しています。その一つとして注目されているのが、普段は立ち入ることのできない場所を訪れる“体験型ツアー”です。
非公開エリアに足を踏み入れる特別な体験が、多くの人の好奇心を刺激しています。
空港や競技場で味わう“裏側の世界”
東京・羽田空港では、格納庫見学ツアーが注目を集めています。厳重な管理のもと、作業員しか入れない飛行機整備の現場。その巨大な空間には旅客機が整然と並び、東京ドームの1.8倍という圧倒的なスケールに誰もが息を呑みます。
案内スタッフの声とともに扉が開くと、目の前に広がるのは、初めて見る機体の構造や仕組みの数々。エンジン中央に描かれた白い渦巻き模様は、回転中かどうかを瞬時に判別するための工夫です。整備士やパイロットしか知らないエピソードに、参加者の目が輝きます。
この見学には何度も足を運ぶリピーターも多く、「毎回異なる機体が見学できて新鮮」と語るファンも。特に、今は訓練用としてしか見られない“スーパードルフィン”など、希少な機種に出会える日もあり、その偶然性も大きな魅力になっています。
国立競技場のスタジアムツアーでは、選手やVIPだけが通れる特別エリアに案内されます。観客席や展望デッキを巡り、スタッフ専用通路を抜けてたどり着くのは、天皇陛下が利用される貴賓室。柱や壁には奈良吉野杉や越前和紙など、日本の伝統的な素材が使用され、贅沢さと歴史の重みが同時に感じられます。
注目すべきは何といっても陸上トラックへ入場できる体験です。テレビ越しにしか見ることのできない舞台に立ち、実際に走ることもできます。スタート地点に立つ瞬間の臨場感は、他にはない特別な体験です。「一生の思い出ができた」「アスリートになった気分を味わえて感動した」と、多くの参加者がその余韻を語ります。
インフラツーリズムの拡がりと新たな価値
こうした“立ち入り禁止”のエリアを訪問できるプランは、「インフラツーリズム」という新たな旅の形として注目されています。空港や競技場に限らず、ダムや地下放水路、発電所、そして都市の交通拠点まで、暮らしを支える構造物そのものが観光資源へと生まれ変わっているのです。
国土交通省の調査によれば、2023年度にインフラ関連施設を見学した人は約100万人と、6年前のほぼ2倍に。「社会の仕組みへの興味」や「知的探究心」が高まっている証拠でしょう。
特徴は、施設の役割や成り立ち、運営の裏側まで深く学べることです。ガイドによる解説や体感型プログラムを通し、「なぜ必要なのか」「どんな技術が詰め込まれているのか」といった、本質的な気づきが得られます。
例えば、埼玉県春日部市にある首都圏外郭放水路は、洪水時に莫大な水を地下に流す世界最大級の防災拠点。「地下神殿」とも称される巨大な水槽はSNSでも話題となり、国内外から多くの見学者を呼び込んでいます。コースも多彩で、防災教育や冒険気分を味わえるものまであるといいます。
また、東京都心の地下40メートルに広がる調節池をLEDで照らし出す「光の回廊」ツアーも登場。防災の重要性を肌で感じつつ、幻想的な空間美も堪能できる新しい観光スタイルが登場しています。
地域経済や住民サービスを変える波
こうしたツアーの広がりは、地域にも恩恵をもたらしています。既存のインフラをそのまま活用できるため、大がかりな追加投資を抑えつつ、観光需要に応えることができるのです。現地での宿泊や食事、土産物の購入などによる経済効果も見逃せません。
自治体が旅行会社や地元企業と連携して運営することで、観光振興と産業活性化、住民サービスの向上が同時に実現します。とくにダムや放水路などの施設は、小中学校の社会科見学や防災教育の現場としても活用され、地域住民の防災意識向上にもつながっています。
愛媛県西条市では、訪問証明として限定配布される“ダムカード”を目当てにリピーターが増え、観光協会や民間企業と手を組むことで地域のブランド力が向上。北海道美瑛町では、採石場跡や堰堤を活用したジオツーリズムが人気を集め、観光庁の補助金を活かした高付加価値ツアーが展開されています。
予約困難な人気ツアーの舞台裏
こうした“裏側探訪”は、人気ぶりに予約困難となることもあります。成田空港が実施する「スペシャルバスツアー」では、スタッフでも滅多に入れないエリアを巡れるとあって、受付開始と同時に満席になることもしばしば。滑走路や駐機場、66メートルの管制塔など、テレビでしか見られない場所に入れる醍醐味があります。
“ここだけの特別な体験”が最大の魅力となる一方で、実は運営には多くの苦労があるといいます。安全対策や日程の調整、地元住民への配慮など、クリアすべき課題は山積みです。インフラの特性上、危険を伴うため、ガイドの育成や人数制限、時には一時的な中止も必要になります。
自治体や事業者は、官民で役割を分担したり、地域一体の周遊ルートを開発したりと、持続可能な仕組み作りに注力。有料化による収益確保や、記念グッズの販売で維持費を賄うなど、一過性で終わらせない工夫も広がっています。
未来を見据えて──観光の進化と地域の新たな価値
これから、“立ち入れなかった場所”を巡るツアーは、ますます多彩に進化していくでしょう。都市型インフラの見学や、防災教育と観光を組み合わせた新しい体験型プログラムが次々と登場。国土交通省も「インフラツーリズム魅力倍増プロジェクト」を展開し、モデル地区の指定や補助制度で新しい旅の形を後押ししています。
また、地域の個性や歴史を活かしたオリジナルツアーも盛んです。大阪の地すべり対策トンネルや、福島県のダムや橋、鉄道を組み合わせた広域周遊など、「見学」にとどまらないストーリー性や体験価値が求められています。
“非日常”が日常を豊かに変える
このようなツアーは、実際に参加してみると、社会や地域、歴史、さらには未来への思いを巡らせるきっかけがあふれています。
旅の本質は「新たな世界との出会い」にあります。未知の世界に触れて、普段の生活に新たな視点を持ち帰る新しい旅のカタチが、多くの人の心を動かしてやみません。
「少しだけ日常を離れてみたい」「自分だけの好奇心を満たしたい」と思ったなら、ぜひ一度挑戦してみてください。あなたの人生に新しい彩りを添えてくれることでしょう。


