
第一次世界大戦後の日本と国際社会
9/9(火)
2025年
SHARE
ビジョナリー編集部 2025/09/01
80年という時間を長く感じる方もいるかもしれませんが、あっという間の人生と感じている方もいると思います。2025年、戦後の日本社会も人の人生と同じだけの歳月を重ね、記憶から消し去ってはならない歴史を歩んできました。戦争のない社会こそが、世界の共通の認識となるように戦争を放棄し、人間の尊厳を大切にしてきたこの80年間は、間違いなく私たちの歩むべき道だったと感じます。しかし、それが世界中の大切な命の犠牲の上に築かれた悲しい歴史であることも反省し、多くの人々の懸命な努力の上に成り立っていることを、私たちは忘れてはなりません。
私たちが「平和な80年」という節目について考える今も、世界の現実は複雑です。今月、中国では「抗日戦争勝利80年」の記念行事が予定され、そこにはウクライナでの戦闘を続けるロシアのプーチン大統領も招かれているといいます。他国が「勝利」を記念する一方で、私たちは「戦争無き社会」の意味を問い続けてきました。武力によらない繁栄を目指したこの国の歩みは、世界的に見ても稀有な存在です。そして、その価値が今、改めて問われていると考えなくてはいけません。
そもそも、なぜ戦争は起きてしまうのでしょうか。歴史を紐解けば、無数の「事実」は見つかりますが、一つの「真実」にたどり着くのは容易ではありません。国際的な力関係、経済的な対立、メディアの報道、そして国民の感情。人々の感情はそれぞれであり、そして戦争を経験していない若い世代になるとそのような歴史も他人事になるのかもしれません。戦争は、様々な要因が絡み合い、社会全体の「空気」が作られ、気づけば後戻りできない道を選択してしまう。私たちビジネスリーダーに求められるのは、この社会の「空気」を冷静に読み解き、安易な世論に流されないための確かな視点を持つことではないでしょうか。
日本の平和と経済成長は、しばしば車の両輪のように語られます。戦後の繁栄が、人々の心に余裕をもたらし、平和を維持する上での大きな支えとなったことは事実でしょう。しかし、ここで一つの問いが浮かびます。もし、この「豊かさ」が大きく揺らいだ時、私たちは平和という原則を守り通せるのでしょうか。『経済的な苦境がナショナリズムを煽る』という歴史の教訓を、私たちは学んでいくことが大切です。
この連載は、単に過去を振り返ることが目的ではありません。戦後80年という今だからこそ、私たちが手にしてきた平和という資産の価値を再確認し、未来を考えるための土台を築くことを目指しています。この連載が、私たちが次の世代へ何を伝え、何を決意すべきかを、共に考えるきっかけとなれば幸いです。
第一次世界大戦後の日本と国際社会