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後払い決済のトラブル急増、その背景と対策――「便利さ」の裏に潜むリスクとは?
ビジョナリー編集部 2026/04/17
「商品が手元に届いてから支払えるから安心」「クレジットカード情報を入力しなくてもいい」と、ネットショッピングで急速に普及している「後払い決済」。「Paidy(ペイディ)」「NP後払い」「GMO後払い」といった専門サービスに加え、最近では「メルカード(メルペイ後払い)」や「ファミペイ翌月払い」など、大手プラットフォームに紐づいたサービスも日常的に目にするようになりました。
しかし、この支払い方法を巡るトラブルが急増しています。全国の消費生活センターに寄せられる相談は、2024年度だけで4万件を超え、その数は3年前の3倍以上に膨れ上がっています。その背景と実際に起きている事例、そして私たちが気をつけるべきポイントについて解説します。
後払い決済の仕組み
後払い決済は、ネット通販などで商品を購入した際、代金を後日コンビニや銀行などで支払うことができるサービスです。世界的には「BNPL(Buy Now, Pay Later=今買って、後で払う)」と呼ばれ、クレジットカードを持たない若い世代や、セキュリティの観点からカード情報を入力したくない層にとって大きな選択肢となっています。
販売側にとっても、決済事業者が代金を立て替えてくれるため、未回収リスクを抑えながら新規顧客を開拓できるという大きなメリットがあります。
急増するトラブルの実態
サービスが身近になる一方で、消費者トラブルの内容も複雑化しています。「身に覚えのない請求が届いた」「返品したはずの商品に請求が続く」といった声が後を絶ちません。
具体的には、SNS広告で「初回9割引き」「いつでも解約可能」と表示された美容液を購入したケースなどが挙げられます。初回分が届いた後に解約を申し出ても、「実は定期購入が条件だった」として次回分の代金や高額な解約金を請求され、窓口に連絡がつかないといった事態が発生しています。また、他人の電話番号を不正利用して高額な家電などを注文する「なりすまし」の被害も目立っています。
EC事業者が直面する課題
販売側にとっても、後払い決済の運用はリスクと隣り合わせです。返品やキャンセルが発生した際、決済システムとの連携にタイムラグが生じると、自動的に督促状が発送されてしまい、顧客満足度の著しい低下を招く恐れがあります。
また、巧妙化する不正注文を防ぐため、事業者は高度な与信審査エンジンや不正検知システムの導入を余儀なくされており、市場の拡大に伴ってセキュリティ対策コストも増大しています。
業界の自主規制と法的課題
こうした事態を受け、2021年には主要決済事業者が「日本後払い決済サービス協会」を設立しました。クレジットカードの割賦販売に準じた自主規制や、悪質な販売業者の排除に向けた取り組みを進めています。
しかし、現時点で加盟しているのは大手7社程度にとどまり、全ての事業者が同一の基準で運営されているわけではありません。明確な法律による強制的な規制が及ばない領域もあり、事業者間での不正利用者情報の共有や、実効性のある検証体制の構築が急務となっています。
利用者ができる自衛策とは?
こうしたトラブルに巻き込まれないためには、消費者一人ひとりが高い意識を持ってサービスを利用することが重要です。
まず、購入を確定させる前に契約内容を徹底して確認する習慣をつけましょう。特にスマートフォンの画面では、重要な情報が「詳細はこちら」といった別リンクに隠されていたり、小さな文字で記載されていたりすることがあります。単発の購入だと思い込んでいても、実際には定期購入が条件となっていないか、また2回目以降の支払額が大幅に上がらないか、解約の手順はどうなっているかといった点を必ずチェックしてください。この際、後々のトラブルに備えて、広告画面や注文確定時の注意事項などをスクリーンショットで保存しておくことも非常に有効な自衛策となります。
また、後払い決済サービスの大きな特徴である「通知」の仕組みを正しく活用することも大切です。多くのサービスでは、決済が完了した瞬間にメールやSMSで通知が届きます。こうした通知をこまめに確認することで、自分では買った覚えのない「なりすまし注文」にも早期に気づくことが可能になります。
万が一、不当な請求を受けたり、身に覚えのない利用が発覚したりした場合は、決して放置してはいけません。速やかに販売業者と決済サービス運営会社の双方へ連絡を入れましょう。もし業者側の対応が不誠実であったり、解決の糸口が見えなかったりする場合には、一人で抱え込まずに、速やかに消費生活センター(消費者ホットライン「188」など)に相談することが、被害を最小限に抑える鍵となります。
事業者に求められる誠実な対応
健全な市場形成のためには、EC事業者の姿勢も問われています。価格や解約条件などの重要事項は、誰が見ても一目で理解できるよう明示しなければなりません。初回割引をフックにした「定期縛り」などは、特定商取引法などの法令に抵触するリスクがあることを認識する必要があります。
また、最新のAIを活用した与信スコアリングの導入など、テクノロジーによる不正防止策の強化も不可欠です。
リスクを理解し、賢く活用する
ネット通販拡大の流れのなかで、後払い決済は身近な存在となりました。しかし、「便利だから」「カードがなくても使えるから」と油断してしまうと、思わぬ落とし穴に足を取られることもあります。
私たちができることは、契約内容をしっかり確認すること、少しでも不安を感じたら一度立ち止まること、そして万一のときはすぐに専門機関に相談することです。
今後も市場規模の拡大は続くと見込まれていますが、健全なサービス利用のためには、消費者自身の「知る力」と事業者の「透明性」「誠実な対応」が不可欠です。


