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2025

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    真珠湾攻撃とその裏側

    #07真珠湾攻撃とその裏側

    アメリカとの戦争突入と聞いて、多くの人が思い浮かべるのが、「真珠湾攻撃」です。しかし、この作戦の1時間前には、イギリス領のマレー半島への奇襲も始まっていました。その中で「真珠湾攻撃」が特に有名なのは、非戦を貫いていたアメリカが戦争を決断する決定打となり、世界中へ衝撃を与えたからです。また、航空母艦を主力とした大規模な奇襲も、その名を広める要因となりました。

    当時の日本海軍では、日露戦争での日本海海戦の勝利から、『巨砲を持つ戦艦こそが、艦隊決戦の主役である』という思想が根強く存在していました。しかし、連合艦隊司令長官・山本五十六は、アメリカでの駐在経験や、第一次世界大戦の戦訓から「これからは航空機を使った戦いが主流になる」と考えていました。特にアメリカの巨大な工業力と、そこから生み出される莫大な航空機や航空母艦の能力を冷静に分析し、従来の戦艦による漸減作戦では、圧倒的な国力差をもつアメリカには勝てない、と考えていたのです。

    山本は航空母艦を多数集中運用し、戦艦が停泊している真珠湾を奇襲攻撃することで、短期決戦に持ち込み、アメリカの戦争継続能力を一時的にでも奪うという、常識を覆す大胆な戦略を立てました。彼はアメリカとの戦争を反対していた軍人の筆頭ではありますが、いざ戦争となってからは、真剣に日本の存亡をかけた戦いに挑み、その独創性を発揮していったのです。

    これは、いかに困難な状況においても決してあきらめないリーダーとしての姿を思わせます。私たちはこの勇気と知恵を、戦争とは異なるさまざまな場面で活かすことができるはずです。ビジネスシーンに置き換えたときに、勝負に勝つのは、会社のネームバリューによるものでしょうか。それとも資本力でしょうか。また、そうした企業としての力は、勝手に会得していったものなのでしょうか。決してそうではありません。企業が大きな力をつける背景には、必ず会社や事業を大きくさせようとする先人たちの努力があり、その途上で苦難が立ちはだかった歴史があるのです。だからこそ、今日を生きる私たちも、いかなる困難にも勇気と知恵をもち、前向きに立ち向かっていくことが重要です。

    また、いかに素晴らしい戦略や戦術を立てたとしても、それを真剣に遂行する人がいなければ、真珠湾攻撃が成功することはなかったでしょう。私たちは物事の成功や失敗ばかりに目を奪われがちですが、物事には必ず背景があります。真珠湾攻撃の裏側にも、決行する人たちの「絶対に成功させる」という強い信念、そして徹底した準備がありました。

    真珠湾攻撃では、航空魚雷を使用したのですが、当時真珠湾ではこれは使用不可能と考えられていました。航空魚雷は、投下された後深く水の中に潜ってしまう性質をもっており、水深の浅い真珠湾では、艦船に届く前に水底に突き刺さってしまうと考えられていたからです。しかし、研究と改良を重ね、水深が浅い地形でも敵艦を狙える「九一式航空魚雷改二」が造られました。この成功の鍵を握ったのは、兵器を操るパイロットたちの技量でした。そのため連日、真珠湾に地形や水深が似ている鹿児島の錦江湾で、魚雷を投下する訓練が行われました。パイロットたちは市街地の屋根をかすめるほどの超低空飛行を繰り返し、何度も何度も練習を重ねたといいます。また、総合演習では攻撃部隊と各部隊との連携を強化するため、発艦、編隊飛行、攻撃、帰艦といった一連の流れを反復練習しました。訓練は約1年間にも及び、その中で「絶対に作戦を成功させる」という兵士たちの強い使命感のもと、徹底した準備を経て、真珠湾攻撃を迎えたのです。これは、決して秀でた誰か一人の兵士が成功させたのではありません。一人ひとりが使命をもち成し遂げた、チームワークの結晶といえるものでした。

    本著は、決して真珠湾攻撃を正当化するものではありません。しかし、この稀代の作戦決行から伺える、前例のないチャレンジ、徹底した準備、各人が抱く使命感は、現代のビジネスシーンにとっても、成功のために不可欠な要素といえるのではないでしょうか。組織とは、これらの要素がすべて揃ってはじめて、真の成功が得られるものであり、また後世に遺るものを生み出すことができるのです。

    私たちは平和という貴重な資産を守り続けながら、未来への道を切り拓いていく必要があります。過去の歴史から学び、それを現代に生かし、さらには未来へと繋げていく。その過程で、困難に立ち向かう勇気と知恵、そして共に歩む仲間の大切さを再認識するのです。

    写真提供:米国海軍歴史センター

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