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「ビッグカツ」の新たなブームーー駄菓子がゲン担ぎアイテムとして再ブレイクする理由
ビジョナリー編集部 2026/04/03
幼いころ、駄菓子屋で見かけた記憶がある人も多い「ビッグカツ」。この商品が、いま再び脚光を浴びていることをご存じでしょうか。
駄菓子として長年親しまれてきたこの一品は、いまや単なるおやつにとどまらず、“ゲン担ぎ”のアイテムとして新たなブームを巻き起こしています。
いか天危機が生んだ誕生秘話
「ビッグカツ」は、白身魚のすり身を主原料とし、揚げた衣に特製のソースを絡めた駄菓子です。開発のきっかけは、今から50年ほど前、広島県呉市の食品会社であるスグル食品が直面した原料調達の危機でした。
1970年代、いかの仕入れが困難になり、主力の「いか天」や「のしいか」すら生産できなくなりました。会社の存続すら危ぶまれるなか、創業者が目をつけたのが、魚肉のすり身をシート状に成型した「プッチン」でした。
この素材を活かし、さきいかの代わりとなる商品を次々開発。その延長線上に、「天ぷらができるなら、カツもできるはず」との発想が生まれます。
低価格でボリューム感があり、子どもたちのお腹も心も満たせる“新しいカツ”を作るという熱意が形となり、試行錯誤の末に誕生したのがこの商品でした。
発売当初は苦戦、波に乗った駄菓子の逆転劇
新商品が世間に受け入れられるまでの道のりは平坦ではありませんでした。最初は駄菓子屋で串に刺して販売されましたが、まったく売れません。社内でも「こんなもの売れるはずがない」というマイナスな空気が広がっていたと言います。
しかし、創業者自ら全国を飛び回り、地道な営業活動を重ねます。やがて、駄菓子屋からスーパー、そしてコンビニエンスストアへと販路は広がり、昭和から平成、令和にかけてのロングセラー商品となりました。
特徴的なのは、そのボリュームと食感、そして甘辛い独自の味付けです。子どものおやつとしてだけでなく、おつまみやご飯のおかずとしても親しまれるようになりました。また、登山食やアレンジ料理としても紹介されるなど、幅広い世代に愛されています。
名前の力――「大きく勝つ」が生むゲン担ぎ文化
最近、「ビッグカツ」にはおやつとしてだけではない、新たなブームが訪れています。
「ビッグカツ=大きく勝つ」と読めることから、ライブやイベントのチケット抽選、受験やスポーツなど、“勝ちたい”場面で願掛けアイテムとして使う人が急増しているのです。
特にSNSでは「持参するとライブの良席が当たる」という噂が広まり、コンサート会場周辺のコンビニから商品が消える現象も起きました。
この現象は、販売元のスグル食品にも追い風となっています。あるスーパーでは売り上げが前年比1.5倍に急増し、製造元の社長も「この名前にして本当によかった」と語っています。
日本人と験担ぎ――言霊が生みだす縁起物
日本文化には、「験(ゲン)を担ぐ」習慣が根強くあります。良い結果を呼び込むために縁起の良い食べ物や行動を選び、受験生が「カツ丼(勝つ)」や「タコウィンナー(オクトパス=合格パス)」を食べるのもその一例です。
これは“言霊”の考え方とも結びついています。口にした言葉や行為が、実際に運気を左右するという信仰です。「滑る」「落ちる」といった不吉なワードを避け、「勝つ」「受かる」と語呂合わせされた食べ物を好む傾向が、世代を超えて受け継がれてきました。
ビッグカツもまた、その流れの中で新たな験担ぎアイテムとして注目されています。
海外での評価
興味深いのは、この商品が海外でも評価されている点です。あるテレビ番組の企画でフランス人に日本のお菓子の人気投票を行ったところ、魚のフライ「ポワソンパネ」に似ているという理由から、ビッグカツが1位に選ばれました。
魚肉でありながら肉のカツを思わせる味わいと、手軽な価格、満足感のあるボリューム。こうした特徴が国境を越えて支持を集めています。
ロングセラーの理由――愛着と進化を続ける工夫
ビッグカツは長年にわたり愛され続け、発売当初から味や食感の工夫を繰り返し、時代の変化に合わせたパッケージや販売形態も進化してきました。
串付きから個包装への転換、スーパーやコンビニへの進出、そして地域限定のアレンジ商品など、消費者との距離を縮める試みが随所に見られます。
また、広島カープをモチーフにした「カープかつ」のように、地元愛やプロ野球ファンへの訴求も功を奏しました。こうした柔軟な姿勢が、世代や地域を超えた支持につながっています。
まとめ
「ビッグカツ」は、原料危機を乗り越えた企業の挑戦から生まれ、時代ごとに形を変えながら愛され続けてきました。そしていま、日本人の験担ぎ文化と結びつくことで、新たな価値を持つ存在へと進化しています。
幼いころの記憶を思い出しながら、久しぶりに手に取ってみるのもよいかもしれません。


