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挑戦者をリスクから守り抜く。Makuake「プロジェクト法務局」の知られざる新商品デビュー支援の裏側
ビジョナリー編集部 2026/04/28
企業の成長を左右する「挑戦」と「リスク」のジレンマ
変化の激しい現代のビジネス環境において、企業が持続的な成長を遂げるためには、絶え間ないイノベーションの創出が不可欠とされる。特にものづくり企業にとって、新商品の開発や新市場への参入は、企業価値を高めるための生命線と言えるだろう。しかし、この「新しい挑戦」こそが、時として企業経営に深刻なジレンマをもたらす。
一般的にメーカーが新商品を市場投入する際、想定される事業リスクは「売れない」ことや「技術的に製造できない」といった課題に集約されがちだ。
しかし、経営層が真に回避したい事態は、それ以上に深刻なところにある。製品の品質問題、意図せぬ法令違反、あるいはSNS上での炎上といった、企業の信頼性を根底から揺るがすリスクだ。
革新的な商品であればあるほど、既存のルールや想定を超えた課題をはらむ傾向にある。そのため、多くの企業が 「挑戦しなければ成長はないが、挑戦すれば深刻なリスクを負う」 というパラドックスに直面するという。新商品が世の中にデビューを果たすというのは、極めて難易度の高い挑戦なのだ。
前例のない挑戦には、常に想定外のリスクがつきまとう。コンプライアンス遵守の意識がかつてないほど高まる中で、事業者は萎縮し、挑戦の機会を自ら逃してしまうことも少なくない。
こうしたジレンマを解消すべく、挑戦者の事業成長を支援し、新商品を社会に送り出すプラットフォーム「Makuake」が注力しているのが、「プロジェクト審査」という形でのハードル低減だ。その屋台骨を支えているのが、独自の専門組織「プロジェクト法務局」である。
彼らはどのようにして予期せぬリスクからプロジェクト実行者やサポーターを守っているのか。その実態に迫った。
プロジェクト法務局の役割とは? 単なる「関所」ではない伴走の形
アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」では、一般には流通していない新商品や新サービスを世に出したい「実行者」が、先行販売の場としてプロジェクトを立ち上げる。2026年4月現在、1カ月に平均460件以上のプロジェクトが開始されているが、「プロジェクト法務局」による審査をすべて通過しない限り、プロジェクトは実施できない という厳格なルールが運用されている。
だが、プロジェクト審査の役割は、単に「NGを出す関所」ではない。その真の目的は、プロジェクト(=新商品)が安全かつ円滑に世の中にデビューできるよう伴走し、プラットフォーム全体の健全性を保つこと にあるという。
具体的な審査業務は多岐にわたる。景表法や薬機法といった各種法令に基づくプロジェクトページのリーガルチェックはもとより、プロジェクトを実現するための「製造能力の確認」、既存の知的財産権を侵害していないかの確認など、多角的な視点から安全性を検証する。
さらに、万が一のトラブル発生時の対応フロー整備や、ユーザーが安心して利用できるプラットフォームの維持といった仕組みづくりにも深く携わっている。
ここで特筆すべきは、単に悪質なプロジェクトを排除するだけでなく、「プロジェクト実行者が意図せず法令違反をしてしまうリスク」から未然にプロジェクトを“守る” という視点だ。これは「プロジェクト実行者」と「その挑戦を応援するサポーター」の双方を守るための、防波堤のような体制と言える。
今回、株式会社マクアケ プロジェクト推進本部 プロジェクト法務局の木村衣都氏に、審査業務のやりがいとその向き合い方について話を聞くことができた。
徹底した生活者視点。審査担当者の矜持
前例のないイノベーティブなプロダクトは、既存の法律やルールの枠組みに当てはめることが難しいケースも多い。マクアケのプロジェクト法務局で審査を担当する木村氏が、自らの役割として第一に掲げるのは、 「キュレーター(各プロジェクトに伴走する担当者)の次にプロジェクトを深く理解すること」 だという。
単に法的な妥当性を確認するだけではなく、生活者の視点に立ち「この説明で購入を決断するだろうか?」と感じた不明点 もキュレーターにフィードバックする。前職でのWeb広告審査の経験から、「生活者は少しでも迷いがあれば購入ボタンを押さない」という知見を持っているからだ。
審査上のNG事項を指摘することは重要だが、それだけではなく代替表現の提案などを通じて購入者の懸念を払拭することで、プロジェクトの売上向上、ひいては間接的に実行者の事業支援にも貢献したい というのが木村氏の一貫したスタンスである。
制約と熱量の狭間で。実行者の「覚悟」に伴走する「攻めの審査」
新規事業において、「実行者が言いたい表現」と「法的にできる表現」のすり合わせは困難を極める。
とりわけ、健康食品などの分野は広告表現の制約が極めて厳格だ。木村氏が担当したある健康食品のプロジェクトでも、当初の原稿には多くの指摘事項が含まれていたという。
しかし、実行者やキュレーターの『新しい挑戦をしたい』『挑戦を最大限応援したい』という想い を受け止めた木村氏は諦めなかった。審査ノウハウを学習させたAIを活用し、審査チーム内でも検討を重ね、マクアケの審査ガイドラインに照らしつつ、実行者のチャレンジを最大限に魅力的に見せる表現を提案したのだ。実行者側からは「ここまで丁寧にやりとりしてもらえるのはありがたい」と、深い感謝の言葉が寄せられたという。
「一見『守り』と思われる審査の仕事でもチャレンジできないわけではありません 。実行者様もキュレーターも前例のないことに挑戦していたので、その熱に押されて自分も一緒に新しいことにチャレンジしてみようと思いました。実行者様にもその気持ちが伝わったんだな、と嬉しかったです」と木村氏は振り返る。
マクアケが行動指針の一つに掲げるのは 「挑戦を応援しよう」 という姿勢だ。
広告表現において、明確な白黒がつかないグレーゾーンは決して珍しくない。だからこそ、丁寧なすり合わせと最新事例のインプットが不可欠となる。木村氏の所属する審査チームでは毎日ミーティングを行い、判断に迷う表現を複数人で検討し、知見を共有しているという。判断基準が曖昧だからこそ、個人の感覚や視野に偏らないよう「チームで考える」 ことを徹底しているのだ。

安易に「不可」とするのではなく、 「本当に他の方法はないのか」 を全員で考え抜く。実行者の挑戦に対する覚悟を尊重し、共に伴走する姿勢こそが、マクアケの審査の真髄といえる。
実行者・キュレーター・審査が「ワンチーム」で向き合う価値
新商品の開発や新市場への参入に際し、実行者が自ら気づきにくい法的・業界的な知見(ナレッジ)。それを、膨大な実績に裏打ちされた審査プロセスを通じて提供することは、プロジェクトの成功だけでなく、その後の一般販売における事業者の貴重な資産となる。
こうした「Makuake」の審査体制は、プラットフォームの枠を超えた社会的価値も生み出しつつある。外部の検査機関からも、「新規参入者が知らない業界団体のガイドラインや機能性試験の規格等について、『Makuake』が啓発の一助になっている」と高く評価されているという。
「時々、プロジェクトページに『Makuake』への感謝を綴ってくださる実行者様がいるんです」
木村氏は、審査の過程でそうした記述を目にするたびに、深い感銘を受けるという。プロジェクトに伴走し、実行者・キュレーターと共に正解を探し続ける姿勢 が、実行者との間に強固な信頼関係を築いている証左と言える。
安心して「挑戦」できる環境の提供
「Makuake」のプロジェクト法務局による厳格かつ柔軟な審査体制があるからこそ、事業者はコンプライアンスリスクを過度に恐れることなく、未知の領域へと一歩踏み出すことができる。
プロジェクト実行者をリスクから守り抜き、安心して「挑戦」できる環境を提供する。 これこそが、イノベーションを加速させ、事業成長を支えるマクアケの知られざる伴走支援の正体なのだ。


