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なぜ岩国のシロヘビは過去最多281匹も命を落としたのか?守るべき「神の使い」の現状と未来
ビジョナリー編集部 2026/08/21
山口県岩国市で長年大切に保護され、国の天然記念物にも指定されている「岩国のシロヘビ」。その霊を慰める供養祭が8月16日に執り行われました。供養の対象は過去最多の281匹に上り、地域や関係者に衝撃を与えています。
本記事では、岩国のシロヘビが持つ歴史的・学術的な価値を振り返るとともに、過去最多の死亡数となった背景と今後の保護に向けた課題を分かりやすく解説します。
過去最多281匹の供養祭
今年の供養祭では、悼まれたシロヘビの数が過去最多となる281匹に達しました。長年、地域一丸となって保護活動を続けてきた関係者や市民にとって、この数字は非常にショッキングなものでした。地域で大切に育てられてきた生き物に、今まさに深刻な異変が起きていることが浮き彫りとなりました。
世界的にも稀有な歴史と価値
岩国のシロヘビは、学術的にも歴史的にも世界で類を見ない貴重な存在です。
生態としては、アオダイショウが遺伝子の突然変異によって白化した「アルビノ」にあたります。野生のアルビノは目立つために天敵に襲われやすく、一代限りで途絶えることがほとんどです。しかし岩国では、白化個体同士が自然交配を重ね、群集として定着するという世界的に非常に珍しい現象が起きました。
その背景には、江戸時代からの人々の暮らしが関わっています。岩国藩の米蔵にすみ着いたシロヘビは、害獣であるネズミを捕食する貴重な存在として大切にされてきました。やがて財運や家運隆盛をもたらす「弁財天の使い」として信仰の対象となり、地域全体で守る風習が根付いていったのです。
こうした歴史的・学術的な価値が認められ、1924(大正13)年には国の天然記念物に指定されました。1972(昭和47)年には生息地を含めた「岩国のシロヘビ」として地域指定を受け、シンボルとして今日まで愛され続けています。
なぜ過去最多の死亡数に?明確になった2つの要因
これほど大切に守られてきたシロヘビが、なぜ過去最多となる281匹も命を落とす事態になってしまったのでしょうか。保存会や関係機関の調査・報告によると、最大の要因として「近年の地球温暖化による猛暑」と「寄生虫の影響」の2点が挙げられています。
第一の要因は、近年の酷暑による過度なストレスです。変温動物であるヘビは、外部の気温に体調が大きく左右されます。連日にわたる記録的な高温は、飼育下や生息地にある施設内においても適切な体温調整を難しくさせ、個体の体力や免疫力を低下させました。
第二の要因は、体力が低下した個体への寄生虫の発生や感染症の影響です。猛暑によって免疫が落ちたシロヘビたちが感染症や寄生虫の被害を受けやすくなり、越冬期などを乗り越えられずに死亡するケースが増加したと考えられています。また、限られた群集内で繁殖を維持してきたことによる遺伝的脆弱性や、個体群全体の高齢化も重なり、被害が拡大する原因となりました。
未来へつなぐために――突きつけられた保護の課題
281匹という数字は、これまでの保護体制を見直し、新たなステップへ進むための警鐘と言えます。現在は以下のような具体的な課題解決が求められています。
- 飼育環境の再整備
記録的な酷暑にも対応できるよう、施設内の空調設備や湿度管理システムの強化が急務となっています。 - 獣医療・感染症対策の専門化
大学や動物園などの専門機関とさらに連携を深め、寄生虫対策や定期的な健康診断体制の強化が進められています。 - 遺伝的多様性の維持と計画的繁殖
近親交配のリスクを低減させつつ、健全な血統を次世代へ引き継ぐための科学的な繁殖プログラムの検討が必要です。
地域の宝を次世代へ
地域の人々が数百年にわたり大切に育んできた「岩国のシロヘビ」は、人と自然の共生の歴史そのものです。
今回失われた命を無駄にすることなく、環境改善と専門的な保護体制の再構築を進めることが、シロヘビたちの未来を守る道となるでしょう。地域の宝であり、日本の貴重な文化・自然遺産が再び健やかに生きられるよう、私たち一人ひとりがこの現状に関心を持ち続けることが求められています。


