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止められないチャンスメーカー「伊東純也」。イナズマが切り拓く日本サッカーの新たな景色【FIFAワールドカップ2026】
サッカーW杯2026特集 | 受け継がれる歓喜、世界最高峰の戦いビジョナリー編集部 2026/06/29
快速で駆け抜け、チャンスを量産する伊東純也。その圧倒的なスピードから「イナズマ純也」の異名を持ち、2026年W杯でも日本を牽引するエースのひとりだ。
圧倒的な存在感を放つサイドの主軸──伊東純也の現在地点
1993年生まれ、現在33歳。所属はベルギー1部のKRCヘンク。今大会では、初戦のオランダ戦で途中出場し、続くチュニジア戦ではスタメンとしてピッチを駆け抜けた。後半24分、鋭く裏へ抜け出し、冷静にゴールネットを揺らしたその一撃は、自身にとって待望のワールドカップ初得点となった。しかも、33歳103日での得点は、日本代表史上最年長記録であった。
伊東の活躍は、ただ「速い」だけではない。チームの攻撃を活性化し、決定機の数を一気に増やす存在感で、今や日本代表に欠かせない主軸となっている。ワールドカップの大舞台で、その名を世界に知らしめることになった。
夢破れた少年から世界へ──「雑草魂」でつかみ取った異色のキャリア
今でこそ「日本のエース」としてスポットライトを浴びる伊東だが、彼の歩みは決して平坦ではなかった。小学生時代、横浜F・マリノスの下部組織入団テストに落選。中学・高校でも、全国的な注目を集めることはなかった。神奈川県立逗葉高校のサッカー部では目立つ成績を残せず、世代別代表とも無縁だった。
そんな彼が進んだのは、2部リーグに所属する神奈川大学。華やかなユース育成システムで名を馳せる選手たちと比べれば、まさに「無名の存在」だった。だが、「勝ちたい」「這い上がりたい」という強い思いが、彼を突き動かした。
大学3年時、関東大学2部リーグで17得点を挙げて得点王に輝き、一気に注目を集める。甲府や山形からオファーが届き、2015年にヴァンフォーレ甲府でプロデビュー。ここから、柏レイソル、そしてベルギー・ヘンクへと、階段を駆け上がる。エリートではないからこそ、誰よりも成長を渇望し、努力を惜しまなかった。その「雑草魂」が、ついに世界の舞台で花開いた。
「イナズマ」の真価──ピッチを制圧する3つの力
彼の凄みは、ピッチで発揮される三つの特別な力に集約される。
まず第一は、圧倒的な瞬発力とドリブルの緩急。直線的な速さだけでなく、相手DFを一瞬で置き去りにする鋭い切り返しが持ち味だ。チュニジア戦のゴールも、絶妙なタイミングで裏へ抜け出し、相手の意表を突いた。スプリントの伸びやかなフォームと、細やかなタッチのバランスが絶妙で、「追いつけそうで追いつけない」独特のリズムを生む。
次に挙げたいのが、クロスの精度の高さ。ヘンク時代にはベルギーリーグのアシスト王に輝くなど、ゴール前の味方にピタリと合わせて決定機を演出する力が際立つ。動きを読み、最適なタイミングでボールを供給するセンスは、ヨーロッパでも高く評価されてきた。ゴール前での冷静さと視野の広さが、攻撃陣のバリエーションを豊かにしている。
そして三つ目は、年齢を重ねても全く衰えないスタミナと守備への献身性。33歳となった今も、ピッチを縦横無尽に駆け回り、自陣深くまで全力で戻って守備に参加する姿は、アタッカーの枠を超えている。ピンチの場面では全力疾走で戻り、相手のカウンターを未然に防ぐ。縦のスプリントと横のカバーリング、その両方を兼ね備えた数少ない選手だ。
フランスから古巣へ──30代でも進化を続ける理由
キャリアの中盤、フランス1部のスタッド・ランスでのチャレンジは、伊東にとって新たな刺激だった。2022年に移籍した当初は、言語やプレースタイルの違いで苦労したが、持ち前の適応力でレギュラーの座を獲得。2024-25シーズンには、チームのチャンス創出の33.9%を一人で担い、5大リーグでも屈指のクリエイターとして名を上げた。83回というリーグ最多のチャンスクリエイトは、数字が雄弁に物語る証だ。
しかし、チームの2部降格という厳しい現実を受け、2025年夏、KRCヘンクへの復帰を決断する。スピードを「絶対的な武器」と過信せず、技術や駆け引きの部分にこだわり続けてきた。だからこそ、30歳を過ぎてもプレースタイルの幅が広がり、年齢を重ねてもパフォーマンスは衰えない。若い頃にはなかった落ち着きや、周囲を活かす知恵も身につけた。進化を止めないその姿勢が、ベテランとなった今もなお、チームの中心であり続ける理由だろう。
サイドの「仕掛け人」に注目──W杯がもっと面白くなるポイント
「イナズマ」の異名にふさわしい爆発力と、逆境を跳ね返すタフさを兼ね備えている伊東。彼の真骨頂は、サイドから仕掛けるその一瞬にある。例えば、相手DFがラインを上げた隙を見逃さず、一気に裏を取る。あるいは、ゴール前で相手が密集していても、緩急をつけたドリブルで一人、二人と振り切ってしまう。クロスのタイミングやコース取りも抜群で、味方のストライカーがゴールを決めやすいボールを供給する。
守備意識の高さと、カウンターの起点としての力も見逃せない。彼がピッチにいるだけで、攻撃パターンが無限に広がる。次の試合で彼の動きを追いかけてみてほしい。ゴールやアシストだけでなく、ボールを持つ前から始まる駆け引きや、オフザボールの動きにも目を奪われるはずだ。
まだまだ続くワールドカップでの激闘。イナズマが再びコートを切り裂いて、日本を勝利に導く姿を期待せずにはいられない。


