2026年クロマグロ新ルール:海を守るために、釣...
SHARE
結婚前に「ふたりの未来図」を描く。今、日本でも婚前契約(プレナップ)が選ばれる理由
ビジョナリー編集部 2026/05/28
「婚前契約(プレナップ)」と聞いて、「海外のセレブがするもの」というイメージを持つ人も少なくないかもしれません。
しかし今、日本でも「お互いをより深く知り、安心して一生を共にするための前向きな約束」として注目するカップルが増えています。
別れのためじゃない。円満な結婚生活を長続きさせる「ルールブック」
婚前契約(プレナップ)とは、結婚をする前にふたりでこれからの生活や将来のリスクを話し合い、財産や生活ルールを文書にして約束する仕組みです。ただし、「離婚の準備をするためのもの」ではありません。本来の意味は、円満な結婚生活を送るための“ルールブック”をふたりで作ることにあります。
海外、特に欧米では一般的な存在ですが、日本ではまだあまり馴染みがないかもしれません。しかし結婚生活は、思いがけない出来事や価値観の違いに直面するものです。その時に、事前に考えを共有し合うツールとして、お互いを守り、思いやりを形にする婚前契約への認識が徐々に広がっています。
多様なライフスタイルにこそ必要なワケ
注目されている背景には、社会や家族のあり方が大きく変化していることが挙げられます。晩婚化や共働き世帯の増加、事実婚や再婚の増加。こうした多様なライフスタイルの中で、「ふたりだけの答え」を見つけておきたいというニーズが高まっているのです。
特に、自立したキャリアを持つカップル、どちらかにまとまった資産や親の相続予定がある場合、またビジネスや経営に携わる人にとっては、「もしも」のときに家族や事業を守るための重要な手段となります。また、再婚家庭で前の配偶者との間に子どもがいるケースでも、将来の相続や養育費の取り決めをクリアにし、家族全体の安心を守る仕組みを作ることができます。
知っておきたい日本のルール。法的効力と「ふたりの約束」のバランス
日本の民法では「夫婦財産契約」という仕組みがあり、これが法的根拠となっています。
結婚前に財産の管理や分与についてルールを決め、その内容を登記することで第三者にも効力を主張できる仕組みです。基本的には入籍前に契約を締結し、必要であれば登記も行います。
民法上の「夫婦財産契約」として登記まで行った場合、結婚後に内容を変更することは原則としてできません。一方で、登記をしない一般的な婚前契約書の場合、将来の変化に応じてふたりで合意の上、内容を更新していく運用ルール(見直し条項)を設けるケースもあります。
また、契約内容の証拠力や信頼性を高めるためには、公正証書にしておくことが推奨されます。公正証書とは、公証役場で公証人が作成する公式な文書のことです。裁判での証拠力が高く、契約違反があった場合も迅速な対応が可能になります。
ただし、生活上のこまかな約束、例えば「週に一度は一緒に食事をする」といった内容は、法的強制力を持たせることが難しいため、現実的には“ふたりの約束”として位置づけることになります。
契約に盛り込めること・NGなこと
実際にどんな内容を盛り込むことができるのでしょうか。まず財産に関する取り決めが代表例です。結婚前に持っていた預金や不動産、株式などについて「これは各自の特有財産とする」「結婚後に増えた分はどちらのものにする」といった内容を明示します。
また、生活費の分担や家計管理の方法、家事や育児の役割分担、転勤やキャリアの方向性を考える際の話し合いルールなど、結婚後の生活設計についても盛り込むことができます。「どちらかが転勤になったら一緒に引っ越すか」「育児休業を取る場合の分担はどうするか」といった細やかな配慮も可能です。
さらに、不貞行為や浮気が判明した場合の慰謝料や、離婚時の財産分与・条件についても事前に定めておくことで、トラブルを未然に防ぐケースが増えています。「離婚時には財産をどう分けるか」「養育費の負担はどうするか」といった点について考えておくと、いざという時に冷静な対応がしやすくなります。
一方で、“何を書いても自由”というわけではありません。「絶対に離婚しない」といった約束や、「離婚時の親権者をあらかじめ指定しておく」といった内容は、個人の基本的な権利や公序良俗、あるいは「子の福祉」の観点から無効と判断される可能性が極めて高いため認められません。また、過度に高額な違約金や、一方的に相手を不利にする取り決めも無効とされます。
「信頼されていない?」という誤解を防ぐために。メリットと乗り越えたい壁
最大のメリットは、結婚前にふたりの価値観やお金の考え方、将来設計についてしっかり話し合うことができる点です。「こうしたい」「これは譲れない」といったポイントを明確にすることで、結婚後の不安やすれ違いを減らすことができます。
また、財産やキャリアに関する不安を事前に解消し、安心して新しい生活をスタートできるのも大きな魅力です。万が一の時にも、泥沼化した争いを防ぎ、冷静に協議が進められます。
具体的なエピソードとして、ある事業主が入籍前に自社株の扱いを明確に書面にし、離婚時にも会社経営にダメージを残さずに済んだ事例があります。また、共働き夫婦が家計管理や生活費分担を契約に盛り込むことで、結婚後もお互いに納得しやすい環境を築けたという話もあります。
一方で、デメリットも存在します。日本独特の感覚として、パートナーに婚前契約を切り出すことで関係がぎくしゃくしたり、「信頼されていないのではないか」と誤解されたりするリスクがある点です。さらに、契約の作成には専門家のサポートや公正証書の手続きが必要になり、一定の費用と時間がかかる点も無視できません。
また、将来の変化まで完璧に想定することは難しいため、転職や家族構成の変化によってルールを見直したいと感じた際、契約内容が現実に合わなくなるリスクも考慮し、慎重に内容を検討する必要があります。
押し付けはNG。5年ごとに見直す「優しい約束」がふたりを救う
導入する時の注意点は、一方的に内容を押し付けることは絶対に避けるべきだということです。ふたりで納得し合い、対等な関係で合意することが不可欠です。
また、状況が変化した場合に備え、契約の中に「定期的な見直しルール」を設けておくと柔軟に対応しやすくなります。たとえば、「5年ごとに内容を確認し合う」「家族構成や働き方に変化があれば再協議する」といった仕組みをあらかじめ決めておくことで、現実に即した安心感が生まれやすくなります。
最後に、婚前契約は「ふたりのための未来設計図」です。お互いの幸せを守るための“優しい約束”として、これからの日本でも自然な選択肢になっていくことでしょう。


