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なぜ今も「正一位」は授けられるのか 1400年続く日本の位階制度の正体
ビジョナリー編集部 2026/01/01
「正一位」「従五位」――歴史小説や大河ドラマなどで目にするこの言葉。なんとなく「偉い人がもらう称号」だと知ってはいても、具体的にどんな意味を持ち、どんな歴史があるのか、説明できる方は少ないのではないでしょうか。
この位階制度、なんと1400年以上もの歴史を持ち、現代にまで受け継がれている日本独自の栄典システムです。しかも、歴史的な偉人だけでなく、地域で長年貢献した一般の方々にも授与されています。
今回は、位階制度について、歴史的背景から現代の運用まで、わかりやすく解説いたします。
位階とはそもそも何?
「正一位」「従四位下」などの言葉、みなさんも一度はどこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか。例えば、歴史の教科書では豊臣秀吉や徳川家康が最終的に「正一位」を授与されたと紹介されますし、現代では総理経験者や著名な経済人の訃報とともに「従一位」「正二位」などの叙位が報じられます。
一体この「位階」とは何なのでしょうか。
結論から言えば、位階とは国家や社会に対して顕著な功績を残した人に、国がその功績を称えて授与する「序列」のことです。日本独自の栄典の一つで、国が公式に認める“等級”と言えます。
1400年前から続く「序列」の歴史
スタートは飛鳥時代、冠の色でランク分け
日本の位階制度のルーツは、飛鳥時代にまでさかのぼります。西暦603年、聖徳太子によって制定された「冠位十二階」がその始まりです。
当時は貴族の序列を明確にするため、冠の色や形でランクを示し、「徳」「仁」「礼」などの徳目ごとに大・小を加えて12階級が設けられました。誰がどの程度偉いのか一目でわかるシステムだったのです。
大宝律令で「30段階」に拡張
その後、701年の大宝律令で冠位は「位階」と呼ばれるようになり、ランクも一気に30段階へと細分化されます。最高位は「正一位」、その下に「従一位」「正二位」「従二位」…と続き、最下位は「少初位下」でした。
この構造は江戸時代まで続き、武家や貴族の世界はもちろん、官僚制度の根幹として社会に深く根付いていきました。
武家社会の台頭と「官位」の変質
本来、位階は朝廷に仕える公家・貴族のためのものでしたが、鎌倉時代以降、武家政権が誕生すると、武将たちも「官位」を朝廷から受けることで自らの正統性や権威を誇示するようになります。
有名な例では、源頼朝が「従五位」に叙されたことで“貴族”の仲間入りを果たし、その後「征夷大将軍」として幕府を開きました。豊臣秀吉や徳川家康は「従一位」を受け、死後には「正一位」が追贈されています。
近代以降も続いた「名誉」の証し
明治維新後も位階制度は受け継がれ、1896年(明治29年)には「位階令」によって整理されました。戦前・戦中は天皇の大権事項とされていましたが、戦後は憲法の下で内閣が運営し、現在は原則として「故人」に対してのみ叙位される仕組みとなっています。
実際、政財界の著名人だけでなく、長年地域社会に貢献した教員や保護司、消防団員などにも位階が贈られています。年間で約1万人が叙位されていると言われていますが、その多くは新聞や官報で簡単に報じられるのみで、広く知られることは少ないのが現状です。
叙位の目安――「どんな人が」「どれくらい」で受けられる?」
叙位の流れ
- 関係省庁や自治体から推薦
- 内閣で審議・閣議決定
- 天皇の裁可で正式決定
- 「位記」と呼ばれる証書が遺族に授与
目安や基準
- 国家や公共に対して顕著な貢献があった方
- 長年にわたって教員・公務員・保護司・消防団員など公共的な職務に従事し、地域や社会に貢献した方
- 政治家や財界人、学者、芸術家など、各界で広く功績のあった方
例えば、戦後の総理経験者の場合、政権の長さや実績、社会的影響度などを総合的に判断して「従一位」「正二位」などが決まっています。一般の方の場合も、その地域や職域での長年の貢献が重視されます。
叙位・叙勲は「家の名誉」、受章は遺族や地域への誇り
叙位・叙勲は、単なる個人の功績認定にとどまらず、家族や地域、組織の名誉でもあります。特に遺族にとっては、故人の人生を国が認めてくれた証であり、深い慰めや誇りとなることが多いのです。
位記や勲記は再発行が認められておらず、受章後は額装して自宅や会社で大切に飾ることが推奨されています。
なぜ今も続くのか――現代日本と位階制度
「国民主権の現代に、なぜ天皇や政府が個人を序列づけるの?」と疑問に感じる方もいらっしゃるでしょう。
確かに、戦前の天皇主権体制の名残だとして、憲法学者の中には現行制度を疑問視する声もあります。しかし、政府としては「国家や社会に貢献した人を顕彰する伝統的な制度」として継続しています。
現実には、名誉を重んじる日本の社会風土や、故人への感謝・追悼の想いが、今もなおこの制度を支えています。
まとめ:知っておきたい「位階」の現代的意味
1400年以上も続く位階制度は、日本の歴史や文化と深く結びついてきた制度です。かつては社会の序列や出世、家柄とも密接に関わり、時代によってその意味合いも少しずつ変化してきました。しかし現代においては、亡くなった方々の人生や功績に対し、国が敬意を表して贈る名誉となっています。著名な政治家や経済人だけでなく、地域や社会のために長年尽くしてきた一般の人々にも贈られるこの制度は、遺族や地域にとって大きな誇りや慰めとなることでしょう。
歴史を背負いながらも、今なお人々の感謝や敬意を伝える役割を果たしている――それが現代の位階制度です。「正一位」や「従五位」という言葉を目にしたときには、そこに込められた日本独特の伝統と、故人やその家族への温かな思いがあることを、ぜひ心にとめていただけたらと思います。


