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    国際バカロレアとは何か?――“知識の詰め込み”を超える世界基準の学び

    国際バカロレアとは何か?――“知識の詰め込み”を超える世界基準の学び

    スイス・ジュネーブに本部を置く教育財団が設計した一つのプログラムが、いま各国の教育現場で広がりを見せています。それが、国際バカロレアです。

    「英語ができるようになる」「海外大学への進学に有利」といった印象を持たれる方も多いかもしれません。しかし、その本質は、知識の暗記にとどまりません。このプログラムが問いかけているのは、「何を知っているか」ではなく、「どのように学ぶか」という学びのあり方そのものです。いま、国内外で注目が高まるこの教育プログラム。その全体像や特徴を紐解きます。

    世界の「共通言語」になる教育

    1968年、スイス・ジュネーブ。多様な国の子どもたちが集まるインターナショナルスクールで「どの国でも通じる教育を」という想いが国際バカロレア誕生のきっかけとなりました。国際機関の多いスイスでは、親の転勤で母国を離れた子どもたちが、どこにいても安心して学べ、さらに世界中の大学へ進学できる“共通の学び”が必要とされていたのです。

    その背景には、欧州が長い歴史の中で直面してきた「いかに平和な世界を築くか」という大きな課題もありました。だからこそ、目指すのは“大学進学のための勉強”にとどまらず、「違いを理解し、共により良い社会を創る力を身につける人」を育てることにあります。

    「探究心」「思いやり」「知識」――描く“学習者像”とは

    世界基準の教育プログラムを語るときに欠かせないのが、「学習者像」の考え方です。理想とするのは、単に成績が良いだけの“優等生”ではありません。問いを自分で立て、知識を探し、他者と対話し、考え、振り返る――そんな「学び続ける力」を持つ人材です。

    公式に掲げられている目指す人物像は、「探究する人」「知識のある人」「考える人」「コミュニケーションができる人」「心を開く人」「思いやりのある人」など、グローバル社会で必要とされる資質そのものです。

    例えば、クラスでは「なぜ?」と問いかけることが歓迎されます。たとえば歴史の授業で「第一次世界大戦はなぜ起きたのか」「その背景にはどんな社会構造や価値観があったのか」を自分なりに調べ、議論し、理解を深めていきます。

    4つのプログラムで“学び方”を段階的に育成

    国際バカロレアの教育は、子どもの成長段階に合わせて4つのプログラムに分かれています。

    まず3歳から12歳を対象とする「プライマリー・イヤーズ・プログラム(PYP)」では、探究心の芽を育て、心身両面のバランスを重視します。その後、11歳から16歳の「ミドル・イヤーズ・プログラム(MYP)」へ。ここでは、知識と社会とのつながりを考える学びが中心となります。

    16歳から19歳の「ディプロマ・プログラム(DP)」は、“真骨頂”ともいえるプログラムです。2年間にわたり、所定のカリキュラムと世界共通の最終試験を経て、国際的な大学入学資格(IBディプロマ)を得ることができます。

    さらに、職業教育やキャリア形成に重きを置いた「キャリア関連プログラム(CP)」も用意されています。いずれも“型にはまらない学び”を徹底し、「なぜ?」「どうやって?」を探し続ける姿勢を育てます。

    ディプロマ・プログラム(DP)――知の理論が未来を変える

    高校生向けのディプロマ・プログラムは、一般的な“受験対策”とはまったく異なるカリキュラムが構築されています。生徒は言語や文学、社会科、理科、数学、芸術など6つの教科グループから1科目ずつを選択し、さらに「課題論文(EE)」「知の理論(TOK)」「創造性・活動・奉仕(CAS)」という3つの“コア”を履修します。

    たとえば「知の理論」では、「知識とは何か」「真実とは何か」といった問いについて徹底的に考えます。数学や理科の知識をただ覚えるのではなく、「なぜそう考えるのか」「他分野とどうつながるのか」と自分自身で答えを探します。この“正解のない問い”に向き合う力こそ、AI時代を生き抜くための武器となるのです。

    また、「課題論文」では約4,000語(日本語なら8,000字)の学術的な論文を自ら執筆し、「創造性・活動・奉仕」では社会活動やボランティアにも積極的に参加します。こうした学びを2年間積み重ねることで、知識の詰め込みだけでは到達できない“本質的な成長”が促されます。

    成果で示す教育――「何を、どこまでできるか」が基準になる

    この取り組みの評価方法は、日本の一般的な「点数主義」とは大きく異なります。まず、学習の初めに「どこまでできればA、どこまでならB」といった到達目標を明確に設定し、生徒自身が理解したうえで学びを進めます。そのため、「何を目指せばいいのか分からない」という不安は生まれません。

    単元ごとに論文やプレゼンテーション、テストなど多様な形で評価を行い、その成果を客観的に示します。努力の方向性がクリアになっているため、クラス全体の底上げにもつながりやすいのが特徴です。教師からも「なぜこの評価なのか」を説明できる仕組みが整っており、生徒・保護者双方にとって納得感のある学びが実現しています。

    世界基準の教育課程が育てる「英語力」と言語の壁

    「英語ができないと無理じゃないか?」という声もよく耳にします。確かに高校生対象のプログラムでは、英語・フランス語・スペイン語のいずれかで授業や試験が行われることが多く、一定の言語力が求められます。しかし、中学生以下のプログラム(PYPやMYP)は、実施言語を各学校が選択できるため、日本語で学べるケースも多いのです。

    また、最近では日本国内の一部の認定校で、主要科目のうち4科目を日本語で履修できる「デュアルランゲージディプロマ」も導入されつつあります。生徒の英語力や希望進路に合わせて柔軟な選択肢が増えているのも、国際バカロレアが“世界基準”であり続ける理由です。

    日本で広がる認定校の現状と課題

    日本国内における認定校は、2013年頃から急増し、国の積極的な支援もあって2025年時点で191校、候補校も含めると260校に迫る勢いです。公立・私立・インターナショナルスクールと形態もさまざまで、地域によっては選択肢が豊富になりつつあります。

    一方で、「日本の学習指導要領」と「国際バカロレア独自のカリキュラム」の二重履修が課題となることもあり、両方の単位を取得するために生徒の負担が大きくなりがちです。このため、最近では一部科目を日本のカリキュラム単位として認めるなど、負担軽減の工夫が進められています。

    また、探究型学習や論文指導に必要な教員の確保・育成も、現場の大きなチャレンジとなっています。1クラスあたりの少人数制や、膨大なレポート・プレゼン指導など、従来の教育とは異なるスキルが求められるため、学校側の体制整備が今後の普及拡大のカギとなります。

    得られる“本当の価値”――「学び方」を学ぶということ

    「国際バカロレアに入れば英語ができて、海外大学に進学できる」――そんなイメージが先行しますが、最大の魅力はそこではありません。むしろ「正解のない問いに向き合い、自分なりの答えを導き出す」「他者と協働し、社会に貢献する」という“学び方そのもの”を身につけられることにあります。

    AIや自動化が進むこれからの時代、自分で考え、動き、変化を楽しめる人材が求められています。この教育プログラムは、まさにその資質を磨くための“最高の訓練場”といえるでしょう。

    万能ではない――慎重な選択のすすめ

    もちろんこの取り組みにも課題はあります。探究的な学びや多様な課題に取り組むには、相応の知的体力と時間が必要であり、全員が教育方針に合うとは限りません。たとえば「自分で考えて行動したい」「世界で活躍したい」という強い意志がある子どもには大きな成長の場になりますが、「指示されたことを確実にこなしたい」タイプの子どもには負担が大きくなりがちです。

    また、海外の大学進学を考える場合は高額な費用がかかることも忘れてはなりません。保護者の方は、このプログラムの理念や特徴をしっかり理解し、お子様の個性や将来の目標と照らし合わせて慎重に検討することが重要です。

    まとめ――「世界を変える学び」が、すぐそばに

    国際バカロレアとは何か。それは、単なる“英語教育”や“海外進学”の枠を超え、子どもたち一人ひとりの「問い」と「探究心」を育てる、“世界標準”の学びです。今この瞬間も、全国各地の教室で、子どもたちが「なぜ?」と問い、仲間と語り合い、自分自身の“答え”を探し続けています。

    「今の教育に何か物足りなさを感じている」「もっと本質的な学びを求めている」なら、こうした教育のかたちを選択肢の一つとして考えてみてはいかがでしょうか。新しい時代の扉を開く学びが、あなたのすぐそばに広がっているかもしれません。

    #国際バカロレア#IB教育#IBディプロマ#IBプログラム#探究学習#グローバル教育#海外進学#英語教育#探究型学習#アクティブラーニング

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