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2025

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    メタバースが拓くマーケティングの新時代──バーチャルマーケットで加速する“共創”の現場

    メタバースが拓くマーケティングの新時代──バーチャルマーケットで加速する“共創”の現場

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    2025年7月、メタバース空間における販売市場「バーチャルマーケット(通称:Vket/ブイケット)」は、通算14回目の開催を迎えた。その始まりは、2018年の夏。まだ「メタバース」という言葉が広く知られていなかった時代、わずか数人の有志によって立ち上がったこのVRイベントは、今や累計来場者数130万人超を誇る世界最大級のメタバースイベントへと成長を遂げている。

    その来場者数の拡大は、目覚ましいものがある。2020年には100万人を突破し、2021年には“バーチャルリアリティマーケットイベントにおける最多ブース数”として、ギネス世界記録™にも認定され、その後も記録を更新し続けている。

    なぜ、このイベントはこれほどまでに人々を惹きつけるのか?編集部が取材を進める中で浮かび上がったのは、Vketが単なる展示会ではなく、誰かにとっての“新たなきっかけ”を生み出す「共創の場」であるという点だ。

    バーチャルマーケット(Vket)とは何か

    バーチャルマーケットとは、メタバース上の会場で、アバター用3Dアイテムからリアルな洋服・飲食物まで売買できる、世界最大級のメタバースイベントである。

    ここでできることは、単に商品の購入にとどまらない。乗り物体験や音楽ライブなど、メタバースならではの没入体験も用意されているのだ。さらに、アバター同士で音声コミュニケーションをとることもでき、来場者からは「現実の街を友だちと歩いているみたい」といった声も寄せられている。

    ※バーチャルリアリティマーケットイベントにおけるブースの最多数としてギネス世界記録™に認定
    バーチャルマーケット紹介動画

    拡大するメタバース市場と日本の立ち位置

    世界のメタバース市場規模は2024年に744億ドル、2030年には5,078億ドルに達する見通しだ。国内でも2025年時点で約9,100億円、2030年には2兆円規模まで成長すると予測されている※。

    特に、世界最大級のVRSNS「VRChat」は、2024年10月に月間アクティブユーザー数が1,000万人に到達。そのうち約25%、250万人が日本人で占める。

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    Vketはこの「VRChat」上で展開されているが、もともとは、3Dクリエイター同士が作品を売買する場としてスタートした。しかし近年では、企業・団体の参入が急速に進み、イマーシブ(=没入感ある)な体験を通じてブランド認知やファン獲得を目指す新たな企業マーケティングの場として、注目度を高めている。

    ※参考:安心・安全なメタバースの実現に関する研究会報告書2025 骨子(案)

    “誰かのはじまり”を生む共創の連鎖

    Vketの原点は、個人クリエイターとファンが仮想空間上で出会い、作品を通じてつながる場にあった。来場者がアバターで会場を巡り、作品を見て語り合い、購入体験をSNSで発信する。その熱量の連鎖が、独自のカルチャーを築いてきた。

    この文化は企業ブースにも波及している。商品展示にとどまらず、ブランド世界観を感じさせる空間設計や、スタッフによる双方向のアバター接客など、「記憶に残る体験」の提供に各社が工夫を凝らす。

    2025年の夏は、「パラリアル東京」「パラリアルハワイ」の2会場にて開催予定だ。

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    メタバースが「広告」に代わる理由──体験が生む“共感”の力

    テレビCMやバナー広告の効果が薄れるなかで、広告そのものにネガティブな印象を抱く消費者も少なくない。いま求められているのは「届ける情報」ではなく、「感じる体験」だという。

    Vketはまさに“体験できる場”である。来場者自身が企業ブースを巡り、商品に触れ、ミニゲームに興じ、アバター接客を受けながらブランドの世界観に没入する。こうした体験から生まれた共感や驚きが、SNSなどを通じて自然に広がる様子が見て取れる。

    ▼ 来場者アンケートより

    • 企業ブースに10分以上滞在した来場者:約6割
    • 商品に興味・購入意欲を持った来場者:約7割

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    出展企業が語るメタバースでの“熱量”と“効果”

    花王カスタマーマーケティング株式会社

    記事内画像 ▲Vket2024 Winterにて展開したブース外観

    「SNSでの反響の多さに驚きました」と語るのは、花王の担当者。特に、「花王が“はっちゃけた”ことを称えるコメントが多く、メタバースでの発信に大きな可能性を感じました」と、Vketが来場者と花王の新たな出会いの場となった実感があるという。

    マツダ株式会社

    記事内画像 ▲Vket2024 Winterにて展開したブース外観

    「バーチャルマーケット初出展を通じて、ユーザーとの新たな出会いや絆を深めていきたい」と、マツダの担当者は語る。さまざまな価値観やコミュニティの輪をより広げていく場として、Vketへの期待を示した。

    株式会社大丸松坂屋百貨店

    記事内画像 ▲メタバース上で働くバーチャル接客スタッフ

    「“食品を仮想空間で購入する”というまったく新しい体験を提供した」と、大丸松坂屋百貨店の担当者。実店舗で人気のスイーツや惣菜を精巧な3Dモデルで再現し、細部まで確認できる仕組みを導入。リアル食品の購入だけでなく、食品の3Dモデル自体を“推しアイテム”として販売することで、百貨店の魅力を新しい角度から発信できた、と振り返る。また、メタバース上でのアルバイト採用やアバターによる接客といった試みも注目を集めた。

    静岡県焼津市

    記事内画像 ▲世界初となったバーチャル上での「マグロ解体ショー体験」

    「オンライン上でも“出会い”と“体験”が広がっている実感がある」と語るのは、静岡県焼津市の担当者。累計のべ70万人以上がブースに来場したという。世界初となったバーチャル上での「マグロ解体ショー体験」は大きな話題を呼び、地域活性化に向けたメタバース活用の可能性が広がった。今後もHIKKYとの包括連携協定を軸に、さらなる地域振興を狙う構えだ。

    これから──企業と社会にとってのVketの可能性

    これからの企業や社会にとって、Vketには次のような可能性が期待されているといえるだろう。

    • Z世代・α世代との新たな接点:広告より“体験”を重視する層に、自然な形でブランドを届ける手段

    • “居場所”としての社会的役割:孤独感の緩和や心理的セーフティネットとしての機能

    • 企業の“実験場”としての活用:ファンづくりやブランド体験の試行錯誤ができる柔軟なフィールド

    今、企業に求められるのは「伝える」から「感じてもらう」への転換だ。Vketはその第一歩となりうる。

    あなたのブランドも、誰かの“はじまり”になるかもしれない

    2025年7月12日(土)〜27日(日)(計16日間)、「バーチャルマーケット2025 Summer」が開催される。ぜひ一度、Vketの世界を体感してみてほしい。これからのマーケティングに、新たな“はじまり”を見つける企業が増えていくだろう。

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