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注目を集めるオリンピックのユニフォーム──ミラノ・コルティナ2026冬季五輪のファッションと技術の最前線
ビジョナリー編集部 2026/02/18
「オリンピックの楽しみは競技だけではない」
近年、オリンピックのユニフォームは単なる公式ウェアを超え、国家のブランディング戦略やサステナビリティへの姿勢を示す“外交ツール”へと進化しています。そこには、選手の誇りや国の個性に加え、最先端の素材技術やファッション産業の競争力が凝縮されています。
2026年2月、イタリア北部で開催されているミラノ・コルティナ冬季オリンピックは、その象徴的な舞台です。開会式や表彰式はもちろん、選手村や記者会見、移動のシーンに至るまで、各国代表のユニフォームは継続的に世界の視線を集めています。五輪の舞台は純粋な“競技の場”であると同時に、“国家の物語”をまとうプレゼンテーションの場へと変貌しています。
開催国イタリア──アルマーニが体現する“スポーティエレガンス”
開催国イタリアのユニフォームは、やはり特別な存在感を放っています。イタリア代表の公式ウェアは、世界的に知られるブランド「エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)」のスポーツライン「EA7」が担当します。
ミルキーホワイトを基調とし、背面に「Italia」の文字を大きく配置。グリーン、ホワイト、レッドというイタリア国旗の色をトリミングやアクセサリーに巧みに取り入れ、さりげなくも強いアイデンティティを感じさせます。さらに、手袋や帽子、バッグ、防水登山靴までトータルでコーディネートされているのが特徴です。
アルマーニは、開会式の衣装だけでなく、大会期間中にミラノ市内でポップアップストアの展開や、ホテルでの特別メニュー提供なども行い、まさに“都市全体でオリンピックを祝う”という空気をつくり出しています。
日本代表──アシックスが挑む「パフォーマンスとサステナビリティの両立」
日本代表のユニフォームは、近年継続してASICSが担当しています。2026年大会でも同社がデザインを手がけ、独自の哲学と最新技術を詰め込んだウェアを発表しています。
最大の特徴は、コンセプトに「パフォーマンスとサステナビリティの両立」を掲げている点です。選手の最高のパフォーマンスを引き出すだけでなく、グローバルなサステナブル志向に日本としてどう応えるか、という強い意志が込められています。
今回のメインカラーは、「TEAM JAPAN RED」と「サンライズレッド」のグラデーション。これに、日本の伝統文様である流水を現代的にアレンジした「RYUSUI」グラフィックを組み合わせています。絶えず流れる水のように、選手のしなやかさと芯の強さを表現しています。
また、冬季大会ならではの厳しい気候対応のため、アウトドア用とインドア用の2バージョンが用意されているのも特徴です。アウトドアジャケットは防水・透湿素材を用い、アシックス独自のボディサーモマッピングに基づいて開発されたバッフル構造で保温性を高めつつ、動きやすさも追求しています。一方、インドアジャケットは通気性を重視し、アルプス山脈東部の民族衣装にインスパイアされたテープを採用するなど、開催地とのつながりも意識しています。
さらに、リサイクルダウンやPFASフリーの撥水剤、廃材由来のファスナーパーツを用いるなど、徹底した環境配慮がなされています。製品ごとにカーボンフットプリント(温室効果ガス排出量)が表示され、数値で可視化されている点も、現代的なサステナビリティ意識の表れと言えるでしょう。
アメリカ代表──ラルフ ローレンが描くアメリカン・トラッドの進化
アメリカ代表のユニフォームは、2008年大会以降パートナーを務める「ラルフ ローレン(Ralph Lauren)」が手がけています。同ブランドは、これで10大会連続の公式サプライヤー。まさに“アメリカ代表の顔”とも言える存在です。
開会式ユニフォームは、ウィンターホワイトのウールコートに、星条旗デザインのタートルネックセーター、テーラードパンツという、クラシックかつエレガントなアメリカン・トラッドスタイル。閉会式では、ヴィンテージスキーウェアから着想を得たジャケットや、アメリカ国旗のカラーを反映したタートルネックセーター、ユーティリティパンツ(ワークウェア由来の機能的なパンツ)を組み合わせて、スポーティかつ洗練されたルックを完成させています。
さらに、レッド・ホワイト・ブルーのニット帽やミトン、ブラウンのスエードブーツまで、アクセサリーにもこだわりが詰まっています。最新のトレンドを押さえつつ、どこか懐かしさも感じさせるデザインは、アメリカの“変わらない価値観”と“進化”を同時に体現しています。
カナダ代表──ルルレモンが生み出す機能美とカナディアンネイチャー・アイデンティティ
カナダ代表の公式ウェアは、アスレチックブランド「ルルレモン(lululemon)」が手掛けています。近年、急成長を遂げている同ブランドは、カナダらしい自然観や冬の厳しさをモチーフに、機能性とデザイン性を両立させたユニフォームを発表しました。
開会式では、メープルリーフをキルティングであしらったベストや、カスタマイズ可能なトップスが特徴的です。閉会式にはグリーンやブルーを基調としたダウンジャケット、表彰式ではカナダの地形図をプリントしたジャケットが用意され、自然との一体感を強調しています。
また、リサイクル素材やアルパカウールなどを積極的に取り入れることで、サステナビリティへの配慮も怠りません。カナダ代表の“多様性”と“包容力”を、ウェアを通じて世界に発信しています。
イギリス代表──伝統と革新が交差するベン・シャーマンの提案
イギリス代表の公式ユニフォームは、「ベン シャーマン(BEN SHERMAN)」が担当。チェック柄裏地のトップコートや、イギリス国旗をモチーフにしたセーターなど、伝統的な英国スタイルを現代的に再解釈したデザインが目を引きます。
開会式では、クラシックな千鳥格子柄のロングコートに、浮き彫り(立体的に編み込まれたデザイン)のストライプと国旗のモチーフを使用したセーターを重ね着。閉会式では、ジグザグ模様や英国らしいライン装飾を取り入れた厚手のニットジャケットを取り入れるなど、細部へのこだわりが光ります。
競技ウェアはアディダスが担当し、ネイビー、レッド、ホワイトというイギリス国旗のカラーを基調にしたバリエーション豊かなアイテムを展開しています。
フランス代表──100年ぶりの“雄鶏”に込めた決意
フランス代表の公式ウェアは、「ルコックスポルティフ(le coq sportif)」が製作しています。今大会で特に注目を集めているのは、約100年ぶりに取り入れた正面向きの雄鶏のエンブレムです。これは対戦相手に真っ向から挑むアスリートの“闘志”と“自信”を象徴しているそうです。
カラーはブルー、ホワイト、レッドのトリコロールで統一され、「団結」と「多様性」というフランスの価値観を表現しています。公式ウェアだけでなく、競技ウェアやトレーニングウェア、リラックスウェアまで全てを同ブランドが手掛けている点も特徴的です。
北欧諸国──伝統と最新技術のハイブリッド
北欧諸国のユニフォームもまた、独自の哲学と技術が詰まっています。
スウェーデンは「ユニクロ(UNIQLO)」が4大会連続でデザインを担当し、防水透湿素材「ダーミザクス」を採用したジャケットやパンツ、LifeWearコレクションを展開。フィンランドは「ルフタ(Luhta)」がラップランドの自然や静寂、“青の瞬間”をコンセプトにしたブルー系グラデーションのウェアを製作しています。
ノルウェー代表の公式ウェアはCraft Sportswearが提供。一方で、伝統的なセーターは1879年創業の老舗ブランドDale of Norwayが手がけています。機能性と伝統的なニット文化が共存する点が、ノルウェー代表の特徴です。
まとめ──“ファッション”がつなぐスポーツと世界
世界各国のユニフォームを見ていくと、それらが単なる衣服ではなく、各国の文化やテクノロジー、社会が今どこを目指しているのかを如実に物語っていることに気づかされます。機能性や快適性はもちろん、デザインやサステナビリティへの配慮、伝統の継承と革新のバランス、そして“個”と“チーム”の調和という、現代社会の価値観が鮮やかに表現されているのです。ミラノ・コルティナ2026冬季五輪は、氷上の熱戦であると同時に、まさに“ファッションと技術の祭典”とも言えるでしょう。
ぜひ選手たちの勇姿とともに、そのユニフォームにも注目してみてください。そこには、言葉を超えたメッセージや、国を超えて人々をつなぐ力が、確かに息づいているはずです。


