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票数で勝っても負ける?知っておくべき「ゲリマンダー」とトランプ政権の思惑
ビジョナリー編集部 2026/08/19
ゲリマンダーとは、特定の政党や候補者に有利になるよう、不自然な形で選挙区の境界線を割り直す政治的手法を指します。本記事では、その仕組みや歴史的背景、そしてトランプ大統領率いる共和党が推し進める最新の区割り戦略までを解説します。
なぜ「境界線の引き方」で勝敗が決まるのか
その本質は、「自分たちの支持者が多いエリアを繋ぎ合わせ、相手の支持者を無効化する」ことにあります。主に以下の2つの手法を組み合わせて行われます。
- パッキング(詰め込み):相手政党の支持者が多い地域を1つの選挙区に強引に集中させます。相手側はその区で圧勝しますが、余剰となった大量の票が「死に票」となり、他の選挙区へ影響を与えられなくなります。
- クラッキング(切り崩し):相手政党の支持者が多い地域を複数の選挙区に細かく分割して組み入れます。これにより、どの選挙区でも相手政党が僅差で過半数を取れない状態を作り出します。
データ分析技術やAIが発達した現代では、過去の投票行動をもとに1ブロック単位で精密に計算された区割りが可能になっており、民主主義の根幹である「一票の平等」を揺るがす問題となっています。
名前と歴史の由来:200年前に誕生した「伝説の怪物」
この歪んだ手法の起源は、1812年のアメリカ・マサチューセッツ州に遡ります。当時のエルブリッジ・ゲリー(Gerry)知事が、自党に圧倒的有利となるよう不自然な形をした選挙区を設定しました。
その区割りの形が、伝説上のトカゲの怪物「サラマンダー(Salamander)」に酷似していたことから、知事の名と合わせて「ゲリマンダー(Gerrymander)」と皮肉を込めて呼ばれるようになったのが始まりです。
歴史的にアメリカでは、人種的マイノリティの投票権を実質的に無効化する目的や、州議会の多数派を維持する手段として長年悪用されてきた経緯があります。
【最新動向】トランプ氏と共和党が仕掛ける「異例の区割り改定」
通常、アメリカの選挙区改定は10年に1度の国勢調査に合わせて行われます。しかし、トランプ陣営および共和党は、10年周期を待たずに州議会主導で自党有利な新マップを強行採決する「異例の期中改定」を全米で展開しています。
背景にあるのは、中間選挙での下院多数派の獲得および維持です。テキサス州やフロリダ州、ノースカロライナ州などの共和党主導の州では、共和党議席を確実に引き増すための新たな区割り案が次々と可決されています。これに対して民主党側もカリフォルニア州などで対抗策(カウンター・ゲリマンダー)を打っており、全米を巻き込んだ「区割り戦争」が繰り広げられています。
連邦最高裁判所が党派的ゲリマンダーへの介入を制限する姿勢を見せていることもあり、法的な訴訟合戦を含めて共和党に有利な展開が続いています。この動きは、今後のアメリカ政治の勢力図を大きく左右する要因として世界中から注目されています。
日本の選挙や政治への影響
アメリカのような露骨な選挙区割りの操作が日本で行われるケースは稀ですが、「一票の格差」を是正するための「10増10減」など、境界線をどこに引くかという議論は絶えません。
どのようなルールで選挙区が画定されるかによって、一票の重みや選出される議員の顔ぶれは大きく変わります。いわゆるゲリマンダーの仕組みを知ることは、選挙結果の数字の裏側にある、政治制度の公平性を見極める大切な視点となります。
終わりに
選挙結果という目に見える数字に一喜一憂するだけでなく、その前提となる制度や境界線が公平に決められているかを見極める視点こそが、健全な民主主義を守るために不可欠ではないでしょうか。


