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第2ボタンの文化──時代を超えて受け継がれる青春のシンボル
ビジョナリー編集部 2026/03/17
卒業シーズン、制服の第2ボタンが話題に上ることが多いのではないでしょうか。「好きな人から第2ボタンを貰った」「気になっている人からくださいと言われた」──そんな思い出を持つ方もいらっしゃるかもしれません。
実は、その起源をひも解くと、深い歴史と、時代を超えて受け継がれる“想い”が隠されています。
ルーツは戦時中の切ない物語
第2ボタンを特別視するようになった背景には、戦時中の出来事が関係しているという説があります。太平洋戦争のさなか、出征を控えた若者たちは、家族や大切な人に自身の“分身”ともいえる形見を託すことがありました。物資が乏しく、思いを形にする手段が限られていた中、学生服のボタンは“心”を託す象徴的なアイテムとして選ばれたのです。
なぜ“第2ボタン”だったのか──そこにはいくつかの理由が語り継がれています。まず、制服の胸元、ちょうど心臓の位置に近いということが挙げられます。つまり、「心に一番近い」場所のボタンを渡すことで、自分の命や想いを大切な人に託す、そんな意味合いが込められていました。また、第一ボタンは制服を正すための象徴であり、学校生活の誇りでもありました。あえてそれを外さず、でも“自分の一部”として最も大切な想いを託すのが第2ボタンだったのです。
このエピソードは、戦後しばらく広く語られることはありませんでしたが、ある教育者が生徒たちに伝えたことをきっかけに、徐々に全国の学校へと広がっていきました。1960年代には映画や小説、漫画など、さまざまなメディアでも描かれるようになり、次第に“卒業式の定番”として根付いていったのです。
昭和から令和へ──受け継がれる「青春の記憶」
この文化は、昭和の時代に一大ブームを迎えました。少女漫画やドラマ、アイドルソングなどで取り上げられたことで、全国の中高生たちにとって“憧れのイベント”となっていったのです。80年代には、卒業式のたびに校門前でボタンをもらいに行く光景が日常的に見られました。
ただ、その背景には社会的な変化もありました。1970年代、高校生や大学生の間で制服の自由化運動が起こり、制服文化そのものが揺らいだ時期もありました。そうした流れの中で、この風習も一時的に目立たなくなったとされています。しかし昭和後期になると再び注目され、青春の1ページとして語り継がれるようになりました。
データが語る「今どきの卒業式」
では、令和の時代を生きる若者たちにとって、第2ボタンの交換は“昔の話”なのでしょうか。興味深い調査結果があります。大手学生服メーカーが2026年に行った卒業式に関するアンケート調査によると、中高生の8割以上がこの文化を「知っている」と回答しています。実際にボタンのやりとりをしたことがあると答えた人は約27%で、特に中学生では3割を超える割合となっています。
この数字は、親世代と実は大きく変わっていません。誤解されがちですが、「昔はみんなやっていたが、今はやらなくなった」というわけではなく、もともと経験者は全体の3割程度だったという調査も存在します。
近年ではSNSやデジタル文化の発展により、“思い出をカタチに残す”方法も多様化しています。制服のボタンやネクタイだけでなく、手紙やメッセージカード、写真や動画、花束、バルーンブーケなどが贈りものとして選ばれるケースが増えています。実際、手紙がプレゼントの第1位となっているデータもあり、デジタル全盛の今だからこそ「手書き」に温もりや特別感を感じる若者が増えているのかもしれません。
Z世代・α世代が「再編集」する伝統
興味深いのは、今の中高生たちが“古い文化=ダサい”とは捉えていない点です。むしろ、親世代やそれ以前の世代が大切にしてきた伝統や文化を、自分たちなりにアレンジして楽しむ傾向が強まっています。例えば、ブレザータイプの制服が主流になった学校では、ネクタイやリボン、校章など“自分だけのシンボル”を贈り合うスタイルも定着しつつあります。
また、SNSで写真や動画をシェアしたり、現像した写真をアルバムにまとめたりと、「思い出を形に残す」ことにこだわる若者も少なくありません。一方で、制服のリサイクルやサステナビリティの観点から、ボタンを外すことを推奨しない学校も現れ始めています。リサイクル制服を扱う店舗によれば、制服のボタンが欠けているケースはほとんどないという声もあり、時代の変化とともにそれぞれの選択も多様化していることがうかがえます。
“カタチ”は変わっても、受け継がれる“想い”
かつては詰襟(つめえり)の学生服が当たり前だった時代も、今はブレザーやセーラー服が主流となり、制服そのもののスタイルが多様化しています。その中で、第2ボタンという“モノ”にこだわらず、大切な人と“特別な記念”を共有する方法は時代に合わせて変化を続けています。
しかし、「大切な誰かに想いを伝えたい」「一緒に過ごした日々を胸に刻みたい」という願いは、どの時代の若者も変わりません。形あるものに託すことで、言葉にできない気持ちや、これからの新しい一歩へのエールを送り合う──そんな文化の本質は、今もなお、卒業式という特別な日に息づいているのです。
未来へ──“想い”をつなぐために
憧れの人から第2ボタンを貰う文化は、混沌とした時代を生き抜いた先人たちの想いと、今を生きる若者たちの感性が重なり合いながら、今も受け継がれています。
これから先、制服や卒業式のあり方がさらに変わっていく中でも、「大切な人と過ごした証を形に残したい」という気持ちはきっと消えることはないでしょう。
人生の節目を迎えたとき、あなたは誰に、どんな“証”を託したいと思いますか。その一瞬一瞬を、ぜひ大切にしてみてください。


