日本の経営者と私の違い――4つの外資系企業で培っ...
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#06「運と縁とえこひいき」――私が独立しなかった理由
浅見 隆 2025/11/06
私はサラリーマンではありましたが、その意識は少し違っていたかもしれません。「ここで成功するぞ」「いい給料をもらうぞ」「いい職責を取るぞ」という意識は、普通の人よりかなり強かったと自負しています。
海外ビジネスに長く携わり、アメリカでの駐在と海外出張も250回ほど経験する中で、多くの刺激を受けました。ですから、35歳をめどに独立し、イタリアの小物などを輸入する商社を立ち上げたいという気持ちも持っていました。
では、なぜそうしなかったのか。運が良かったのか悪かったのか分かりませんが、キャリアがトントン拍子に進んでしまったからです。
能力がある人でも、会社を辞めて何かを興すには、何かのきっかけが必要です。「今の会社に希望がない」「上司についていけない」「優秀なのに評価されない」といった反骨精神が、独立のエネルギーになります。しかし私の場合、世渡りがうまかったのか、わりと順調に来てしまいました。先にも述べましたが、スポルディングでは次長から部長、本部長、取締役と進み、急に社長に推挙されました。スポルディングが買収されるというタイミングでジョンソン・エンド・ジョンソンからオファーがあり、ジョンソン・エンド・ジョンソンにいる間にまたレブロンから声がかかる。
結局、独立するきっかけを失ってしまったのです。自分の性格を考えると、本来は独立して自分の会社を持った方が合っていたタイプかもしれませんが、そんな理由で実現には至りませんでした。
ただ、この順調なキャリアは、単に運が良かっただけではないとも思っています。ある人が「人生は“運”と“縁”と“えこひいき”だ」と言っていましたが、まさにその通りだと感じています。
「運」は変えられませんが、「縁」は自分でつないでいくことができます。上司との縁、同僚との縁。例えば、私がレブロンの面接でニューヨーク本社へ行ったときのことです。なんと、本社の社長が、前職ジョンソン・エンド・ジョンソンの米国本社の子会社の社長だったのです。「久しぶりだな」と声をかけられ、まだ契約もしていないのに「この資料を読んどけよ」と渡されました。これも一つの「縁」です。
最後の「えこひいき」は言葉が悪いですが、つまり「誰かに好かれる」ということです。いくら優秀でも、「あいつは能力はあるが嫌われキャラだ」となると、チャンスは巡ってきません。気に入られるために何かをするわけではありませんが、組織人として、あるいは経営者として、人に好かれるキャラクターは必要です。
私自身、あまり人を憎んだり恨んだりせず、差別もしないタイプです。そうした部分が、良い縁をつないでくれたのかもしれません。
また、私は遊ぶ時は徹底的に遊びました。バブル絶頂期には、お酒は1杯飲めるかどうかという体質にもかかわらず、神田から六本木、青山、赤坂まで、全部で12本のボトルキープをしていたこともあります。当時は食事の後に2軒目、3軒目へ行くのが当たり前。毎日のようにタクシーチケットで深夜に帰宅する生活でした。
その一方で、自己研鑽も怠りませんでした。仕事で使う英語は、英検1級やTOEIC900点程度では本当のビジネスには通用しません。だからこそ、会社に早めに行って「ジャパンタイムズ」を読むなど、勉強は続けていました。
よく遊び、よく学ぶ。そうしたバランス感覚が、結果的に「運」や「縁」を引き寄せることにもつながったのかもしれません。今では夜9時半に寝る生活になりましたが、あの熱気ある時代に培った経験が、私の哲学の基礎となっています。


