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2026

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    「備蓄マグロ」で守る食の未来——寿司で世界を繋ぎ、平和の輪を広げる

    #11「備蓄マグロ」で守る食の未来——寿司で世界を繋ぎ、平和の輪を広げる

    原石からダイヤへ

     2001(平成13)年に「すしざんまい本店」を開業した当時、日本の水産物輸出額はわずか200億円規模に過ぎず、海外の日本食レストランも世界で二千数百店舗ほどでした。しかし現在、日本の水産物輸出額は2兆円規模へと跳ね上がり、世界中の日本食・寿司店は25万店舗を数えるまでに急成長を遂げました。

     「すしざんまい」において、売り上げの約3割を占める看板商品が本マグロ(クロマグロ)です。しかし、本マグロは年間5千キロから1万キロ以上も泳ぎ回る回遊魚であり、日本国内(大間など)で極上のマグロが獲れるのは冬場の限られた季節しかありません。一年中いつでもお客様においしい本マグロを食べていただくため、私は20代の頃から旬のマグロを追って世界中を駆け巡り、極上の本マグロを追い求めてきました。

     例えばスリランカでは、マグロの供給拠点をつくって欲しいと頼まれ、現地法人を立ち上げました。それまで釣ったマグロは、常温保存でカレーにして食べていた現地の食文化に対し、船上での急速冷蔵や迅速な加工技術を指導して年間何千トンもの高品質なマグロを日本へ届ける体制を作りました。また、オーストラリア南部で主流だった「巻き網漁」では、網の中でマグロ同士が衝突して外傷がついたり、暴れて体温が上がり身がスカスカになる「焼け」や「身割れ」が起きるため、一本釣りや一匹ずつ丁寧に扱う大切さも現地で教えてきたのです。

     和食や寿司の魅力が世界へ広がる一方で、深刻な課題として持ち上がったのが「本マグロ(クロマグロ)の過剰な乱獲と絶滅の危機」でした。

     かつて、食文化の違いから海外で本マグロはそれほど注目されていませんでしたが、世界的な和食ブームに伴い過剰な乱獲が激化。年間の漁獲量は急激に増大し、国際自然保護連合(IUCN)がレッドリストに分類する事態にまで発展したのです。本マグロは部位のすべてが絶品であり、いただいた命に感謝して余すことなく食す日本の大切な食文化です。この貴重な資源と食文化の未来を何としても守らなければならない——。そう決意した私は、画期的なイノベーションに挑みました。それが「備蓄マグロ」の仕組みです。

     海上の沖合に自然に近い大型の生簀(いけす)を設置し、天然の本マグロを一定期間保護・育成しながら、必要な時に必要な分だけ出荷する。

     しかし挑戦を始めた当初、世界の漁業関係者やマグロの専門家からは「時速100キロ以上で泳ぎ続けなければ死んでしまうマグロを生簀で飼育するなど絶対に無理だ」「そんな場所に閉じ込めれば全滅するし、餌も絶対に食べない」と猛反対を受けました。専門家でさえ「不可能だ」と決めつけて誰も挑戦したことがなかったのです。

     「やってみなければ分からない。誰も成功していないなら、私が証明しよう」

     自衛隊時代に学んだ「勇猛果敢」の精神と固定観念にとらわれない挑戦心で、私は5,000万円の私財を投じて実験に踏み切りました。まずオーストラリアの沖合に大型生簀を設置し、20~50kgくらいの小さめの太平洋マグロを入れ、ときには私自身も生簀に飛び込んでマグロの生態を細かく観察するなどして研究を進めたところ、工夫をすればエサを食べるようになり1年間、生簀の中で生きていることがわかりました。

     そこで今度は地中海で200kg近い大型の本マグロを50mの生簀で試してみました。すると、本マグロでも、さまざまな工夫をすれば無事に回遊しながら生存させることに成功したのです。

     さらにこの「備蓄」には、資源保護の観点から絶大な効果がありました。外敵のいない安全な生簀の中で集団の「お見合い」をさせ、自然産卵を行わせることで、稚魚が生存して無事に成長する確率が10倍から20倍へ飛躍的に跳ね上がったのです。乱獲を防止しつつ自然界のマグロ資源を飛躍的に増やし、必要な分だけを取り上げて全国の店舗へ届ける持続可能なサプライチェーンを世界で初めて確立しました。

     30年以上前から店頭で行ってきたマグロの解体ショーも、単においしい魚を提供するだけでなく、命への感謝と「見せるエンターテインメント」としてお客様を喜ばせる工夫の一環でした。今年(2026年)7月3日にはアメリカ大使館での独立記念日イベントに招待され、1,000人もの要人を前に解体ショーを披露するなど、日本食文化の象徴として大きな盛り上がりを見せました。

     寿司には、言葉や国境を越えて人々の心を和ませ、平和を広げる不思議な力があります。各国の重要人物や大使館関係者の方々が「すしざんまい」に足を運んでくださり、同じテーブルで極上のマグロと美味しい寿司に舌鼓を打つ——。「美味しい寿司を囲んでいる時に戦争なんて起こらない」、私は本気でそう信じています。

     1度の人生、上手くいかない苦難や壁に突き当たるのは当たり前です。大切なのは、そこで立ち止まるのではなく「次に何をやるか」を考え続け、新しい価値を生み出していくこと。これからも寿司という日本の誇りを通じて、世界中の人々に笑顔と平和を届けてまいります。

    #木村清#すしざんまい#喜代村#創業者#マグロ大王#フロンティアスピリッツ
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