「唯一のミドルマン」として描く未来——共創が生み...
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#19「媚びない」お客様第一主義——購買代理人としての立ち位置と独立自尊の精神
岩田 彰一郎 2026/10/19
アスクルの事業を立ち上げた当初、最大の議論となったのが「他社製品(ライバルメーカーの商品)を取り扱うべきか否か」という問題でした。
もともとアスクルは、親会社である事務用品メーカー・プラスのオフィス用品を拡販するためのプロジェクトとしてスタートしています。しかし、事業を開始してお客様である中小企業を何社も直接訪問し、現場の声をヒアリングする中で、私は決定的な事実にぶつかりました。
オフィスに伺うと、書棚一面に、ライバルであるキングジムの青いファイルがズラリと並んでいます。そこで私たちが「プラスのグレーやピンクのファイルは安くて高品質ですよ」とお勧めしたところで、お客様は「色の統一感がなくなる」「上司から指定されているからキングジムのファイルじゃなきゃ困る」とおっしゃるのです。他社製品が買えなければ、アスクルのカタログから注文すること自体を諦めてしまう。
「お客様の立場に立てば、プラス製品だけを売る(プロダクトアウト)なんて到底成り立たない。欲しいものが一括で手に入らなければ意味がないのだ」
そう確信した私は、ライバル企業の商品もカタログに掲載することを決めました。当然、親会社であるプラスの社内からは凄まじい猛反対が巻き起こりました。「我が社の資金で始めた事業で、なぜライバルの商品を売るのか」「メーカーの営業として失格だ」と、激しく詰問されたのです。
私は社内に対して、しつこく、粘り強く自らの立ち位置を説き続けました。
「アスクルとは、プラスの製品を売るための『メーカーの営業代行』なのか。それとも、お客様が必要とするものを代わりに調達して明日届ける『お客様の購買代理人』なのか——」
この立ち位置(ポジション)の定義こそが、すべての分岐点でした。アスクルはメーカーの押し売りなどではなく、お客様の購買代理人という『新しい流通のカタチ』なのだと宣言したのです。
ここで私が強調しておきたいのは、私の考える「お客様第一主義」とは、決して古臭い「滅私奉公(めっしぼうこう)」や「顧客への媚びへつらい」ではないということです。
お客様の言うことを何でも鵜呑みにし、自分を殺してへりくだるような商売を、私は社員にさせたくありませんでした。無理難題に対して媚びたり、つくろったりするのではなく、お客様のお役に立つ『優れた仕組み』を作り磨き上げること。それによって対等な立場で喜んでいただく『独立自尊』の関係こそが、私の目指した姿なのです。
現在社会問題となっている「カスタマーハラスメント」のように、理不尽な要求に屈して自分を卑下するような関係は、本当のお客様第一ではありません。
エージェントさんとも、社内の仲間たちとも、そしてお客様とも、上下関係のないフラットで対等な関係を築く。その上で、約束した「明日届く」という利便性を守るために全力でベストを尽くし、社会に貢献する。
「お客様の購買代理人」としてのポジションを確立し、互いをリスペクトし合える対等な信頼関係を愚直に積み重ねていくこと。このブレない立ち位置と独立自尊の精神があったからこそ、アスクルはメーカーの枠組みを超え、すべての企業から愛されるインフラへと進化を遂げることができたのです。


