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倍率2,000倍超!宇宙飛行士になるには?試験・資質・仕事のすべて
ビジョナリー編集部 2025/12/17
「宇宙飛行士になってみたい」と思ったことはありませんか?
青い地球を見下ろし、無重力空間を舞う。そんな非日常の世界は、子どもも大人も心を揺さぶる憧れの的です。しかし現実には、宇宙飛行士になるには狭き門を突破する必要があり、直近の選抜試験では倍率2,000倍以上という難関ぶりが話題を呼びました。
今回は、宇宙飛行士への道のりや選抜試験、求められる資質、そして宇宙飛行士の仕事とやりがいまで解説します。
※ 記事内の情報は2025年12月時点のものです。
宇宙飛行士になるための入口
宇宙飛行士選抜試験の現実
宇宙飛行士になるための第一歩は、JAXA(宇宙航空研究開発機構)が不定期で実施する「宇宙飛行士候補者選抜試験」の突破です。試験は毎年あるわけではなく、10年以上の空白期間も珍しくありません。最後に行われた2021年の募集は、13年ぶりの開催となり、応募者は4,000人を超えました。
合格者はたった2名。選抜倍率は2,000倍以上であり、とてつもない難関であるというのが実態です。
必要な応募条件
2021年のJAXAの宇宙飛行士選抜では、応募条件が大きく緩和されました。
2021年選抜の主な応募条件
- 日本国籍を持つこと
- 3年以上の実務経験(分野不問。修士号取得者は1年、博士号取得者は3年分としてカウント)
- 身長149.5cm~190.5cm、矯正視力1.0以上、色覚・聴力の正常
- 年齢制限なし、学歴不問
「水泳ができること」や「普通自動車免許」など過去にあった条件も、訓練中に取得すれば良いという形に変更されました。より多様な人材を集めるための門戸開放が進んでいるのは、まさに時代の変化を象徴しています。
どんな試験が待ち受けているのか?
書類選考から始まる「長い選抜の道」
選抜試験は、書類審査から始まり、段階的にふるいにかけられます。
主な選抜フロー
- 書類選抜(健康診断データ・履歴書・志望動機など)
- 第0次選抜(英語・一般教養・STEM分野・小論文・適性検査)
- 第一次選抜(医学検査・プレゼン・資質特性・運用技能試験)
- 第二次選抜(医学・面接・英語・資質検査)
- 第三次選抜(長期適応能力検査・総合面接など)
この間、1年以上かかることも珍しくありません。とくに後半は、海外でのグループワークや極限環境下での行動観察など、宇宙飛行士ならではの過酷なテストが続きます。
宇宙飛行士に求められる「資質」とは
JAXAが掲げているのは、知識やスキルだけでなく「人間力」です。宇宙は多国籍メンバーとの共同作業も多く、次のような資質が求められます。
- 国際的なチームで協調し、リーダーシップを発揮できること
- 予測不能な環境で、柔軟かつ冷静な判断ができること
- 極限状態でも自律し、精神的なタフさを持つこと
- 得た経験を社会や次世代に発信できる表現力
これらは、ビジネスの現場や社会生活でも活きる力です。実際、前職が医師、エンジニア、研究者、国際開発専門家など多種多様であるというのも、近年の宇宙飛行士の特徴です。
合格しても、すぐ宇宙に行けるわけではない
候補者から「宇宙飛行士」までの道のり
選抜試験に合格しても、まずは「宇宙飛行士候補者」となり、約2年間の基礎訓練が待っています。
基礎訓練の内容(一例)
- 航空宇宙工学、宇宙開発史、ISSのシステムなどの座学
- ロボットアーム操作や宇宙服着用などの実習
- サバイバル訓練、健康管理、体力トレーニング
- 英語・ロシア語などの語学訓練(全体の1/4近くを占める)
この訓練を修了し、正式な宇宙飛行士として認定されてはじめて、任務への待機に入ります。
宇宙へのフライトは数年待つことも
宇宙飛行士として認定された後も、実際に宇宙へ行くまで数年から10年以上待機することもあります。たとえば、山崎直子さんの場合は、候補者に選ばれてから宇宙へ行くまでに11年かかりました。
任務決定から宇宙へ
- 任務が決まると、さらに1~2年かけて専門訓練(アサインド訓練)
- 具体的なミッション(ISS滞在、実験、船外活動など)に向けた準備
「宇宙飛行士になっても、宇宙に行ける保証はない」
これが現実ですが、あきらめずに準備を重ねる姿勢がプロフェッショナルの証です。
宇宙飛行士の仕事
宇宙滞在中の主な仕事
宇宙飛行士が宇宙で行う仕事は多岐にわたります。
- 国際宇宙ステーション(ISS)での長期滞在(最長6カ月程度)
- 微小重力環境を活用した医学・生物・物理実験
- 日本実験棟「きぼう」の運用・保守
- ロボットアーム操作、船外活動(EVA)
- 将来的には月面着陸や活動も視野
ISS滞在中は、1日に複数の実験や装置操作が組み込まれ、地上とのコミュニケーションも重要な業務です。
地上での業務
宇宙飛行士の仕事は宇宙だけにとどまりません。地上にいる期間のほうが圧倒的に長く、以下のような業務が中心となります。
- 次の任務に向けたトレーニング
- 実験装置や運用計画の立案・技術業務
- 講演や広報活動(アウトリーチ業務)
- 宇宙開発プロジェクトへの参加
“宇宙飛行士=華やかなヒーロー”というイメージだけでなく、地道な準備や伝える活動も社会的な使命の一つです。
宇宙飛行士のやりがいとは
青い地球を見下ろす“唯一無二”の体験
宇宙飛行士として宇宙に行くことは、世界中でも限られた人だけが得られる特権です。地上400kmの高さから見る地球や、無重力での日常は、一生忘れられない感動を与えてくれます。
人類の未来に「貢献できる」誇り
最先端の科学実験・技術開発に関わり、人類の発展に直接寄与できることは、宇宙飛行士ならではのやりがいです。また、自分の経験を社会や次世代に還元することで、宇宙開発の意義を広げていく――この使命感も、多くの宇宙飛行士が語る“やりがい”の一つです。
宇宙飛行士になるために「今できること」
専門知識+コミュニケーション力が武器になる
現在、応募条件は大幅に緩和されていますが、実際の選抜では理系の専門知識や実務経験、語学力、国際経験が大きな強みになります。
- 理系大学・大学院への進学や、企業・研究機関での実務経験
- 英語力+多国籍チームでの活動経験
- 医師、エンジニア、パイロット、研究者など、特定分野のプロフェッショナルも歓迎
「精神的なタフさ」を養う
宇宙飛行士は、ストレスフルな環境下でも冷静さと協調性を失わず、粘り強く課題に取り組むことが求められます。日常の中で、困難な状況での判断力やリーダーシップを意識的に鍛えていくことが大切です。
まとめ
宇宙飛行士になる道は、確かに険しく、選ばれるのはごく一握りです。しかし、応募条件の緩和や多様な人材の受け入れが進む今、かつてよりも多くの人にチャンスが開かれています。
- 倍率2,000倍以上の超難関だが、挑戦する価値は計り知れない
- 専門知識や経験、語学力だけでなく、「協調性」「リーダーシップ」「発信力」が重視される
- 宇宙での業務だけでなく、地上でのトレーニングや啓発活動も重要なミッション
- 挑戦を通じて、社会や次世代に貢献できる
宇宙開発の現場は、今や多国籍・多文化、多様な専門性の融合が不可欠です。「理系のエリート」だけでなく、社会人経験や異分野の知見を持つ人材も必要とされています。
たとえば、2021年に候補者となった米田あゆさんは外科医、諏訪理さんは国際開発の専門家というバックグラウンドです。
“宇宙への憧れ”を「現実の挑戦」へ。宇宙に挑戦する入り口は、着実に広がっています。さあ、次にその扉を開くのは、あなたかもしれません。


