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色も、香りも、栄養も逃さない。食の常識をアップデートするシャープ「高品位減圧乾燥」の衝撃
ビジョナリー編集部 2026/03/18
ヘルシオの知見を「乾燥」へ。シャープが挑む、食の価値を最大化する「高品位減圧乾燥技術」の衝撃
食品を長期保存するために、古くから用いられてきた「乾燥」という手法。しかし、現場では「乾燥させると味や色、栄養価が落ちてしまう」というジレンマが常に付きまとっていた。
そんな中、家電大手のシャープが「乾燥は条件設計次第で、素材の魅力を引き出す工程になり得る」という新たなパラダイムシフトを掲げ、研究開発を進めているのが「高品位減圧乾燥技術」だ。単なる保存性の向上にとどまらず、色や香り、食感、そして栄養までを高いレベルで守り抜く。この技術が、食の現場に新しい風を吹き込もうとしている。

なぜ今、「乾燥」をアップデートする必要があるのか?
食品を乾燥させる目的は、大きく分けて3つあるという。
①長く安心して使えるようにするため
水分を適切に減らすことで傷みにくくなり、常温保管が可能になる。保管スペースの効率化も大きなメリットだ。
②扱いやすく、ムダを減らすため
軽量・小型化による輸送コストの削減。さらに、規格外の果物や余剰食材をドライ素材へと変えることで、高付加価値化する「アップサイクル」の側面も持つ。
③素材のよさを活かして、新しいおいしさをつくるため
乾燥によって旨味や香りが凝縮され、特有のサクッとした食感も生まれる。見た目をきれいに保持できれば、商品開発の幅は劇的に広がるはずだ。
シャープの「高品位減圧乾燥技術」とは何か
現在、シャープが注力している「高品位減圧乾燥技術」は、食品を真空(減圧)状態に置きながら、マイクロ波で内部から加熱し、水分を効率よく取り除くというものだ。
最大の特徴は、低温での乾燥が可能な点にある。これにより、色・香り・栄養・食感を損なわず、同時に乾燥時間の短縮も実現するという。また、表面からではなく内部から加熱するため、乾燥ムラや縮みが起こりにくく、仕上がりが均一になるのも大きな利点だ。
この技術の背景には、同社が家庭用電子レンジで培ってきた「マイクロ波制御」と、ウォーターオーブン「ヘルシオ」で磨き上げた「庫内の気密・熱・蒸気コントロール」の知見がある。これらを結集させ、家電サイズのコンパクトなコンセプトモデルを開発した。
将来は食品分野にとどまらず、医療や化粧品といった精密な品質管理が求められる分野への応用も視野に入れているという。
▲ コンセプトモデル
家電サイズ相当のコンパクト設計で、真空×マイクロ波の構成要素を1台に集約
「低温・短時間」が品質を守り抜く2つの理由
なぜ、この技術は素材のクオリティを維持できるのか。そこには2つの明確な根拠がある。
理由1:減圧で水分の沸点が下がる
真空に近い状態では、低温でも水分が蒸発しやすくなる。そのため、熱に弱い色素や香気、栄養素の分解を最小限に抑え、素材本来の個性を残せるのだ。

▲減圧により水分の沸点が低下し、室温付近でも蒸発が進むため、熱ダメージを抑えた条件設計が可能
理由2:内部加熱により、ムラ・縮み・硬化を抑えやすい
外部からじわじわ熱を通すのではなく、内部の水分へ直接エネルギーを与えるため、乾燥ムラが抑えられる。熱風乾燥で起こりがちな「縮み」や「表面の硬化」を防ぎ、元の形や食感を保ちやすくなるという。

▲真空で沸点を下げ、マイクロ波で内部から加熱 蒸発した水分を効率的に排出し、低温・短時間で均一乾燥を実現
- フルーツ

▲フルーツの仕上がり比較 上段:減圧乾燥、下段:熱風乾燥

▲含水率の経時変化 減圧乾燥は室温域でも効率的に水分を除去し、乾燥時間を短縮

▲乾燥イチゴのビタミンC残存量比較(株式会社総合水研究所、分析番号:FB250052) 減圧乾燥サンプルで栄養保持の優位性が示唆されました
実装のしやすさがアイデアを加速させる
この技術のもう一つの強みは、運用のしやすさだ。加熱と乾燥を同時に行えるため工程がシンプルになり、精密な温度コントロールによって乾燥度合いの調整も容易だという。
特筆すべきは、そのサイズ感だ。コンセプトモデルはオーブンレンジ相当の大きさで、100V電源に対応。大がかりな工事は不要で、店舗内や研究室ですぐに試作や小ロット検証を始められる設計を目指している。この「スピード感」こそが、商品開発の仮説検証を加速させる鍵となるだろう。
▲内部から温めることで、断面方向の均一乾燥をサポート

▲家電サイズ相当の外観

▲チョコレート板の上に果物を載せ、形を保ったまま一体で乾燥した応用例
他の乾燥技術との違いをどう捉えるか
もちろん、乾燥方式にはそれぞれ適性がある。シャープの技術は、フリーズドライ(凍結乾燥)と熱風乾燥の中間領域をカバーしつつ、「低温・短時間・見た目と栄養の保持」を高い次元で両立させるアプローチと言える。

※各方式には適性があります。本比較は代表的な条件でのイメージです。
広がる活用シーン:フードロスからペットフードまで
この技術が社会実装されれば、活用の幅は多岐にわたる。
- フードロス削減: 規格外や旬のピークを迎えた素材を、鮮やかなドライ素材へ転換。
- 機能性/ウェルネス: ビタミンやポリフェノールを保持した、高付加価値なスナック原料の開発。
- ペットフード: 栄養と嗜好性を両立させた、無添加志向の低温乾燥フード。

▲熱風乾燥と比較した際の所要時間の大幅な短縮も、生産効率の面で大きな魅力だ。

展示会「FOOD STYLE JAPAN 2026 〈関西〉」での熱狂

▲FOOD STYLE JAPAN 2026 〈関西〉シャープブース
2026年1月28日、29日に開催された「FOOD STYLE JAPAN 2026 〈関西〉」では、このコンセプトモデルが初披露された。会場では、熱風乾燥との比較サンプルや、いちごの香りの比較体験が提供され、来場者からは驚きの声が相次いだ。

▲減圧乾燥と熱風乾燥のサンプルの比較およびチョコ板載せフルーツの丸ごと乾燥サンプル展示

▲減圧乾燥と熱風乾燥のいちごにおける香り比較体験の様子
「見た目がきれいに保持できるのに驚いた」「フレッシュな香りが生きている」といった品質への評価はもちろん、「フリーズドライ機器よりも手軽に導入できそうだ」といった実用面での期待も寄せられていたという。
■開発の最前線から
開発を担当したシャープの白市氏は、技術への想いをこう語っている。

開発担当者の白市氏:
「食品乾燥は、保存時の省エネ性や軽量化といったメリットがあり、将来の食糧・エネルギー課題や3Dフードプリンタの原料など、FoodTechの観点でも期待の大きい分野です。今回の展示で多くの方から感動の声をいただき、さらなる品質向上と社会実装への手応えを感じました。今後も皆様の声を反映しながら、新たな食の可能性を実現していきたいと考えています」
共に未来を創るパートナーを募集
シャープは現在、この「高品位減圧乾燥技術」を共に社会へ広げていく共同研究パートナーを募集している。
- 自社の食品を減圧乾燥させたら、どんな変化が起きるのか?
- この技術を調理工程に組み込むことはできるか?
- 新たな加工食材の可能性を探りたい
こうした現場の疑問に対し、小ロットからの仮説検証を共に行っていく構えだ。革新的な乾燥技術が、あなたのビジネスにどんな化学反応を起こすのか。興味のある方は、ぜひコンタクトを取ってみてはいかがだろうか。
問い合わせ先
シャープ株式会社 Smart Appliances & Solutions事業本部 要素技術開発部 genatsu@mail.sharp


