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2025

    希少疾患ゴーシェ病モデル動物に電界処置が効果!-ゴーシェ病モデルショウジョウバエの睡眠促進・寿命延伸を確認-

    希少疾患ゴーシェ病モデル動物に電界処置が効果!-ゴーシェ病モデルショウジョウバエの睡眠促進・寿命延伸を確認-

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    株式会社白寿生科学研究所(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長 原浩之)は、公益財団法人国際科学振興財団 時間生物学研究所(茨城県つくば市、所長 石田直理雄)と提携した研究を実施し、『ゴーシェ病モデルショウジョウバエにおける電界で誘導された睡眠促進と寿命延伸』が、学術雑誌「Biochemistry and Biophysics Reports」第41号(2025年1月)に掲載されましたのでお知らせいたします。本研究により、電界処置がゴーシェ病モデルショウジョウバエの睡眠促進・寿命延伸に効果をもたらすことが明らかとなりました。ゴーシェ病の新たな治療選択肢の一つとしての可能性を秘めた電界治療に対する、今後のさらなる研究が期待されます。

    記事内画像 イメージ:ゴーシェ病モデルショウジョウバエを使用した電界処置実験

    Nedachi, T., Kawasaki, H., Inoue, E., Suzuki, T., Nakagawa-Yagi, Y., & Ishida, N. (2025). Electric-field induced sleep promotion and lifespan extension in Gaucher's disease model flies. Biochemistry and Biophysics Reports, 41, 101915. URL: https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2405580825000020

    1 研究背景(*1)

    「ゴーシェ病」は、糖脂質グルコセレブロシドの代謝酵素グルコセレブロシダーゼ(以下、GBA1)遺伝子の変異が原因となって発症する遺伝性疾患です。本来、過剰なグルコセレブロシドは、細胞内のライソゾームでGBA1によってセラミドとグルコースへ分解され、細胞外に排出されます。しかし、GBA1の設計図であるGBA1遺伝子に変異が生じると、GBA1の働きが悪くなり、グルコセレブロシドが分解されずに細胞内に蓄積し、臓器腫大、血液学的異常、成長障害といった全身症状や、骨症状、神経症状を引き起こします。

    ゴーシェ病の病型は、I型(慢性非神経型)、II型(急性神経型)、III型(亜急性神経型)に分類され、なかでもII型は予後不良で、乳児期に発症すると数年以内に死亡するケースも多くあります。日本国内での患者数は150名程度(*2)の希少疾患で、残念ながら完治させる治療法は確立されていません。治療法としては、酵素補充療法や基質合成抑制療法がありますが、中枢神経系への効果はないとされており、病型によっては治療選択肢が限られています。新規治療法として遺伝子治療も研究されていますが、物理療法の研究は十分に進んでいません。そこで、本研究では、ゴーシェ病モデルショウジョウバエに超低周波電界を処置することで、電界治療の効果を検討しました。

    記事内画像

    2 研究内容と成果

    本研究では、神経型ゴーシェ病(以下、nGD)モデルショウジョウバエ※を正常対照群と比較し、それぞれ電界処置群と擬似処置群に割り当てて、実験を行いました。電界処置が、nGDモデルに及ぼす急性および慢性の影響を調べるため、睡眠と寿命を測定しました。また、電界処置の影響に関する分子機構を解明するため、遺伝子発現を解析しました。研究成果は、以下の通りです。

    ※モデル生物の一種であるショウジョウバエは、重要な遺伝子の8割程度がヒトと共通しています。GBA1遺伝子に変異が生じることで、人間の神経型ゴーシェ病の特性を模倣することから、神経型ゴーシェ病モデルのショウジョウバエは、疾患の分子メカニズムを研究する上で有望なモデルとして報告されています(*3-5)。

    記事内画像 【図1】電界処置装置

    1.電界処置によりnGDモデルの総睡眠時間が増加。睡眠エピソード持続時間も延長。

    nGDモデルへの電界処置をしたところ、擬似処置群と比較して、総睡眠時間が有意に増加しました。擬似処置群の460分に対して、電界処置群は511分となりました(図2)。また、電界処置群の方が、1回あたりの睡眠エピソード持続時間が伸びたことから、睡眠の断片化が少なくなったことが示唆されました(図3)。 記事内画像 【図2】nGDモデルの総睡眠時間の比較、【図3】nGDモデルの睡眠エピソード持続時間の比較

    2.電界処置によりnGDモデルの寿命が延長。

    nGDモデルへの電界処置をしたところ、擬似処置群と比較して、寿命が有意に延長しました。また、生存曲線は寿命前半では変化が見られませんでしたが、処置開始から10日~20日後に寿命延伸効果が表れました。このことから、電界処置がnGDモデルの寿命を延ばす効果を持つことが示唆されました(図4)。また、nGDモデルの生存期間の中央値は、正常対照群の約半分であり、代謝酵素GBA1遺伝子変異が、寿命に強い影響を与えることが示唆されました(図4、5)。

    記事内画像 【図4】nGDモデルの生存率推移の比較、【図5】正常対照の生存率推移の比較

    3.電界処置7日後、nGDモデルのp62PERK遺伝子の発現が有意に上昇。

    羽化後0~2日齢のnGDモデルに対して、7日間の電界処置/擬似処置後、RNAを抽出し、ΔΔCt法により遺伝子発現データの解析を行いました。解析対象遺伝子は、オートファジー関連遺伝子(p62)、小胞体関連遺伝子(BiP、Ire1、PERK、CG14715)、パーキンソン病関連遺伝子(Pink1)、リソソーム関連遺伝子(cathD;カテプシンD)、骨形成タンパク質(BMP)シグナル関連遺伝子(tok)。内部標準遺伝子にはリボソームタンパク質L32(RpL32)を使用しました。

    その結果、nGDモデルでは、オートファジー関連遺伝子(p62)、小胞体関連遺伝子(PERK)の発現が有意に上昇していました(図6、7)。一方で、その他の遺伝子の発現では、電界処置/擬似処置群で有意な差は認められませんでした。

    記事内画像 【図6】nGDモデルのp62 mRNA相対発現量の比較、【図7】nGDモデルのPERK mRNA相対発現量の比較

    3 考察と展望

    本研究では、ゴーシェ病のモデル生物であるショウジョウバエを用い、超低周波電界の処置が、睡眠の質改善や寿命延長といった生理的効果をもたらす可能性があることが示唆されました。さらに、細胞のストレス応答や老廃物処理に関わるp62およびPERKの発現増加が確認されました。

    ■ 細胞ストレスへの防御応答を活性化

    p62の発現増加は、細胞内の不要物処理(オートファジー)と関連し、ミトコンドリアの機能改善や寿命延長につながる可能性が示されています(*4,6,7)。また、PERKは、ストレス応答に加え、睡眠促進に関与する分子として知られています(*8,9)。p62PERKの同時発現増加は、nGDモデルでの小胞体 (ER) ストレスに対する防御応答を示唆する可能性が考えられます。

    ■ 実用性と応用可能性

    市販の電界処置装置は、簡便性と省電力性に優れています。超低周波電界は体表で多くが遮蔽される特性があるため、治療効果がマイルドな可能性があり、他の療法との併用による有効性が期待されます。

    ■ 神経変性疾患への展開も視野に

    ゴーシェ病の原因遺伝子(GBA1)の変異は、パーキンソン病などの神経変性疾患との関連性が指摘されています(*10-14)。電界処置には、異常タンパク質の凝集を防ぐ効果があるとの報告もあり(*15)、もしこの作用が生体内でも再現されれば、ゴーシェ病の症状を緩和できる可能性があります。今後、ショウジョウバエモデルを用いた、ゴーシェ病やパーキンソン病に対するさらなる研究が期待されます。


    論文情報

    雑誌名:Biochemistry and Biophysics Reports
    論文名:Electric-field induced sleep promotion and lifespan extension in Gaucher's disease model flies
    著者:Nedachi, T., Kawasaki, H., Inoue, E., Suzuki, T., Nakagawa-Yagi, Y., & Ishida, N.
    掲載日:2025年1月
    URL:https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2405580825000020
    DOI:101915

    株式会社白寿生科学研究所について

    株式会社白寿生科学研究所は、「健康を通して人類の幸福を実現する」を企業理念として、大正14年に創業した健康総合企業です。創業以来、すべての人に白寿(99歳)まで健康で過ごしほしいとの願いから、身体を自然な状態に保つことで健康維持を目指す「白寿健康哲学」の普及を使命としてまいりました。1963年に厚生省(現・厚生労働省)より承認を受けた世界初※の家庭用・医療用電位治療器「ヘルストロン」は、累計100万台以上のロングセラーとして、約5000か所の医療機関・福祉施設に設置されています。また、当社の健康哲学の一つである「バランスのとれた食事」、「ゆとりある精神」を実現するため、健康食品・サプリメントの製造・販売や、リクライニング・シートを導入した世界初のクラシックホール「Hakuju Hall」を運営し、人々の健康のトータルコーディネートを目指しています。全国450店舗で運営している健康ステーション「ハクジュプラザ」では、ヘルストロンや健康食品・サプリメントの販売を行うとともに、地域に根ざした健康情報発信拠点を目指し、地方自治体との連携を強化しています。

    ※近代的な法制度のもとで、正式に承認・販売された電位治療器としては世界初(当社調べ)

    電界の生体への作用に着目した基礎・臨床研究について

    株式会社白寿生科学研究所では、生命の本来持つ生体機能の研究に注力しており、近年は超低周波(ELF)電界の生体への作用に注目しています。基礎・臨床データを収集・検証し、新しい技術を生み出すための基盤研究を着実に進めていくことは、電位治療器メーカーとしての使命と考えており、当社は、こうした取り組みを1940年代から今日まで継続しています。これまでに公開された論文数は、延べ40本以上に上ります。現在も、さまざまな研究機関と提携しながら、生殖系・免疫系・内分泌系・神経系における電界の作用点の探索と機能解析、効果の最適化のための電界デザインに取り組み、超低周波(ELF)電界研究の最前線を進んでいます。

    【会社概要】

    会社名:株式会社 白寿生科学研究所
    代表:代表取締役社長 原 浩之
    本社:東京都渋谷区富ヶ谷1-37-5
    電話:03-5478-8910(代表)
    創業:1925年(大正14年)
    設立:1964年(昭和39年)
    資本金:1億円
    従業員数:232名(グループ従業員 約700名)
    事業内容:家庭用・医療用ヘルスケア機器及び健康食品などの開発ならびに製造販売

    公益財団法人国際科学振興財団 時間生物学研究所について

    私たちの体には約24時間のリズムで動いている体内時計がすべての細胞に備わっており、その時計が睡眠と覚醒のリズムを地球の自転に伴う24時間周期に同調させて、日常生活を送っています。しかし、体内時計リズムが自転周期にうまく同調しなくなると、脳ばかりかあらゆる末梢組織に障害が出現してきます。時間生物学とは体内時計機構を遺伝子レベルで解明し社会に応用する学問です。体内時計遺伝子の発見とその分子機構の解明に2017年のノーベル生理・医学賞が贈られたのはご存じの方も多いと思いますが、我々はこの機構が睡眠や認知症に関わることを見出し現在研究しています。この分子機構の大筋はショウジョウバエをモデル動物として発展してきました。国立研究開発法人産業技術総合研究所で上席研究員を務めた石田直理雄が2016年に時間生物学研究所を国際科学振興財団(つくば市春日)の中に立ち上げました。

    参考文献

    1. 日本先天代謝異常学会編. ゴーシェ病診療ガイドライン2021. 東京: 診断と治療社; 2021.
    2. ゴーシェ病 診断・治療ハンドブック編集委員会. ゴーシェ病 診断・治療ハンドブック 第2版. イーエヌメディックス. p5. 2016.
    3. H. Kawasaki, T. Suzuki, K. Ito, T. Takahara, N. Goto-Inoue, M. Setou, K. Sakata, N. Ishida, Minos-insertion mutant of the Drosophila GBA gene homologue showed abnormal phenotypes of climbing ability, sleep and life span with accumulation of hydroxy-glucocerebroside, Gene 614 (2017) 49-55, https://doi.org/10.1016/j.gene.2017.03.004.
    4. K.J. Kinghorn, S. Gronke, J.I. Castillo-Quan, N.S. Woodling, L. Li, E. Sirka, M. Gegg, K. Mills, J. Hardy, I. Bjedov, L. Partridge, A Drosophila Model of Neuronopathic Gaucher Disease Demonstrates Lysosomal-Autophagic Defects and Altered mTOR Signalling and Is Functionally Rescued by Rapamycin, J. Neurosci. 36 (2016) 11654-11670, https://doi.org/10.1523/JNEUROSCI.4527-15.2016.
    5. T. Suzuki, M. Shimoda, K. Ito, S. Hanai, H. Aizawa, T. Kato, K. Kawasaki, T. Yamaguchi, H.D. Ryoo, N. Goto-Inoue, M. Setou, S. Tsuji, N. Ishida, Expression of human Gaucher disease gene GBA generates neurodevelopmental defects and ER stress in Drosophila eye, PLoS One 8 (2013) e69147, https://doi.org/10.1371/journal.pone.0069147 .Erratum in: PLoS One 10, e0135619.
    6. R. Aparicio, A. Rana, D.W. Walker, Upregulation of the Autophagy Adaptor p62/SQSTM1 Prolongs Health and Lifespan in Middle-Aged Drosophila, Cell Rep. 28 (2019) 1029-1040.e5, https://doi.org/10.1016/j.celrep.2019.06.070.
    7. M.L. Atilano, A. Hull, C.A. Romila, M.L. Adams, J. Wildfire, E. Ureña, M. Dyson, J. Ivan-Castillo-Quan, L. Partridge, K.J. Kinghorn, Autophagic dysfunction and gut microbiota dysbiosis cause chronic immune activation in a Drosophila model of Gaucher disease, PLoS Genet. 19 (2023) e1011063, https://doi.org/10.1371/journal.pgen.1011063.
    8. D.H. Lee, J.S. Park, Y.S. Lee, S.H. Bae, PERK prevents hepatic lipotoxicity by activating the p62-ULK1 axis-mediated noncanonical KEAP1-Nrf2 pathway, Redox Biol. 50 (2022) 102235, https://doi.org/10.1016/j.redox.2022.102235.
    9. S. Ly, D.A. Lee, E. Strus, D.A. Prober, N. Naidoo, Evolutionarily Conserved Regulation of Sleep by the Protein Translational Regulator PERK, Curr. Biol. 30 (2020) 1639-1648.e3, https://doi.org/10.1016/j.cub.2020.02.030.
    10. E. Aflaki, W. Westbroek, E. Sidransky, The Complicated Relationship between Gaucher Disease and Parkinsonism: Insights from a Rare Disease, Neuron 93 (2017) 737-746, https://doi.org/10.1016/j.neuron.2017.01.018.
    11. M.Y. Davis, K. Trinh, R.E. Thomas, S. Yu, A.A. Germanos, B.N. Whitley, S.P. Sardi, T.J. Montine, L.J. Pallanck, Glucocerebrosidase Deficiency in Drosophila Results in alpha-Synuclein-Independent Protein Aggregation and Neurodegeneration, PLoS Genet. 12 (2016) e1005944, https://doi.org/10.1371/journal.pgen.1005944.
    12. J. Do, C. McKinney, P. Sharma, E. Sidransky, Glucocerebrosidase and its relevance to Parkinson disease, Mol. Neurodegener. 14 (2019) 36, https://doi.org/10.1186/s13024-019-0336-2.
    13. G. Maor, O. Cabasso, O. Krivoruk, J. Rodriguez, H. Steller, D. Segal, M. Horowitz, The contribution of mutant GBA to the development of Parkinson disease in Drosophila, Hum. Mol. Genet. 25 (2016) 2712-2727, https://doi.org/10.1093/hmg/ddw129.
    14. S.R.L. Vieira, A.H.V. Schapira, Glucocerebrosidase mutations and Parkinson disease, J. Neural. Transm. (Vienna) 129 (2022) 1105-1117, https://doi.org/10.1007/s00702-022-02531-3.
    15. G. Pandey, S. Morla, H.B. Nemade, S. Kumar, V. Ramakrishnan, Modulation of aggregation with an electric field; scientific roadmap for a potential non-invasive therapy against tauopathies, RSC Adv. 9 (2019) 4744-4750,https://doi.org/10.1039/C8RA09993F.

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