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どうして笑っちゃうの?──900万部の「だるまさん」シリーズが赤ちゃんを夢中にする理由
ビジョナリー編集部 2025/11/28
累計発行部数900万部を突破した「だるまさんシリーズ」は、いまや“ファーストブックの定番”として全国の親子に選ばれ続けています。数ある絵本の中で、なぜここまで圧倒的な人気を誇り、多くの家庭の”最初の1冊”となり得たのでしょうか?
今回は、作者・かがくいひろし氏の創作背景を紐解きながら、シリーズに込められた“子どもを笑顔にする共感のデザイン”の本質を探ります。
「だるまさん」シリーズとは?
- 『だるまさんが』(2007年刊)
- 『だるまさんの』(2008年刊)
- 『だるまさんと』(2008年刊)
この3冊が「だるまさんシリーズ」です。どの巻も“だるまさん”という赤くて丸いキャラクターを中心に、ページをめくるたびユーモラスな展開が待ち受けています。
人気の理由①:赤ちゃんの“発達”に寄り添うデザイン
赤と丸は赤ちゃんを惹きつける?
赤ちゃんが最初に認識しやすい色は「赤」、そして形は「丸」と言われています。
「だるまさん」はこの“目を引く赤い丸”で構成されているため、生まれて間もない赤ちゃんでも自然と視線が集まります。
言葉がわからなくても楽しめる“リズム”と“繰り返し”
「だ・る・ま・さ・ん・が……」
この独特のフレーズ。
まだおしゃべりができない赤ちゃんでも、音の響きだけで心地よく感じるように作られており、繰り返しのリズムに体を揺らしたり、ページをめくる前から期待の表情を浮かべたりします。
実際に、6カ月頃になると「だるまさんが…」の掛け声に合わせて体をゆらゆらと動かす子、1歳を過ぎるとだるまさんの動きを真似する子も少なくありません。
人気の理由②:親子の“コミュニケーション”を自然に引き出す
体を動かして一緒に遊べる
「だるまさんが…どてっ!」
転ぶだるまさんに合わせて、お子さんが“どてっ”と一緒に転ぶ。
「だるまさんの…め」
目を強調するだるまさんを、親子で真似してみる。
この“まねっこ遊び”は、親子のふれあいを自然に生み出し、信頼と安心を育む瞬間となります。
テレビや動画と違い、絵本の読み聞かせはその場の空気や読む人の声色が変化します。だからこそ、同じ本でも毎回新鮮な体験になり、親子のコミュニケーションが育まれるのです。
物語性より“予測と驚き”が主役
「いないいないばあ」に子どもが夢中になるのと同じように、「だるまさんが…」という予測→ページをめくることで現れる“結果”のサプライズ。
この“期待→発見”のリズムが、子どもの好奇心を何度も刺激します。
人気の理由③:作者・かがくいひろし氏の“子ども観”と創作哲学
教師としての28年、特別支援教育現場での経験
かがくいひろし氏は、50歳で絵本作家としてデビューするまで、特別支援学校の先生として28年間を過ごしました。
そこで彼が徹底して追いかけたのが、「どうしたら子どもたちが心から笑ってくれるか?」という問いでした。
- 擬音語・擬態語を使った“音”と“動き”の演劇
- 身近なものを“見立て”て遊ぶ人形劇
- 子ども一人ひとりの表情を描いた似顔絵の贈呈
あらゆる手法で「共感の場」を作ってきたこれらの経験が、「だるまさん」のリズムと動き、シンプルだけど奥深い表現力へとつながっています。
絵本は“人と人とをつなぐもの”
かがくい氏はインタビューでこう語っていました。
「絵本の読み聞かせは、親子が“つながる”ための特別な経験。子どもたちが笑顔になり、親も一緒に楽しんでほしい。しんどい時代だからこそ、笑顔になれる絵本をつくり続けたい」
彼の作る絵本は“笑い”だけでなく、読み終えた後に心がふっと温まる感覚を残してくれます。それが、大人にも長く愛されている理由のひとつです。
それぞれの巻の魅力をひもとく
『だるまさんが』—想像を超える動きで大爆笑
本作は、だるまさんが転んだり、ぺしゃんこになったり、びよーんと伸びたり…
“かたい”イメージがあるだるまが、驚くほど自由に動き回る姿が最大の魅力です。
子どもたちは予想外の展開に大喜び。「だるまさんが…」の後を親子で考えながら読むことで、想像力も広がります。
『だるまさんの』—体の部位を楽しく覚える
「だるまさんの…め」「だるまさんの…て」など、だるまさんが体のパーツを強調したポーズを披露します。
子どもは「め」や「て」を真似しながら、一緒に体の部位を覚えていける構成です。「楽しく知育ができる」と親御さんからも好評です。
『だるまさんと』—“ともだち”とふれあう喜び
第3巻では、だるまさんの他にいちごさん、バナナさん、メロンさんなどかわいい仲間が登場。
「だるまさんと…」の後に展開されるコミカルな掛け合いは、親子だけでなく“友達とのふれあい”もテーマになっています。
果物の名前を覚えたり、他者と関わる楽しさを自然に体験できる点が特徴です。
まとめ
「だるまさん」シリーズの人気の秘密は、赤ちゃんの発達に寄り添う“デザイン”、親子のコミュニケーションを自然に生み出す“仕掛け”、そして作者の経験と情熱が込められた“愛情”にあります。
難しいことは一切ない。でも、何度読んでも飽きない。この絶妙なバランスが、世代を超えて支持される所以です。デジタルが主流の時代において、“紙のページを通じて笑い合う”という原点に戻ること。それが、だるまさんシリーズの最大の価値なのかもしれません。
もしまだ読んだことがない方は、ぜひ一度「だるまさんシリーズ」を手に取ってみてください。きっとページをめくるたび、親子で笑顔になれる“特別な時間”がそこにあるはずです。


