【グッドエイジャー賞2025レポ】逆境さえも輝き...
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「平和への羅針盤」はここにある。ノーベル平和賞受賞者世界サミット副会長・伊東玄聖氏が語る、歴代受賞者と若者が創る「次世代の平和」
ビジョナリー編集部 2025/11/12
歴代ノーベル平和賞受賞者が一堂に会し、世界の平和に向けた提言と次世代育成に力を注ぐ「ノーベル平和賞受賞者世界サミット」。その活動をアジアの中心で支え、次世代のリーダー育成に情熱を注ぐ副会長、伊東玄聖氏。ゴルバチョフ元大統領の着想から始まったこのサミットが、具体的にどのような提言を行い、特に次世代のリーダー育成にどのような情熱を注いでいるのか。伊東氏自身の異色のキャリアと活動の根幹にある哲学を通じて、サミットが目指す「世界平和の実現」に迫ります。
歴代受賞者の叡智を結集し、世界に提言。ゴルバチョフ氏が抱いた「大きなムーブメント」への思い
ノーベル平和賞受賞者世界サミット(WSNPL)は、どのような経緯で設立されたのでしょうか。
ノーベル平和賞受賞者世界サミットは、1990年に平和賞を受賞された故ミハイル・ゴルバチョフ元ロシア大統領が発起人となり、1999年にイタリアのローマで初開催されました。ゴルバチョフ氏は、歴代の受賞者たちとの対話を通じて、彼らが携える人類にとって重要なメッセージや理念、恒久平和実現への情熱と専門知識を結集させれば、「世界が少しでもよくなるのでは」と考えたのです。
サミットは歴代の平和賞受賞者や団体が集い、世界的課題や人権の擁護、暴力のない世界の構築について議論し、解決のための提言を行う国際会議です。私は初回から現在まで、すべてのサミットに参加させていただいており、2019年にはゴルバチョフ氏から副会長に任命されました。
13歳からの海外生活で模索した「日本人としてのアイデンティティ」と比叡山での修行
国際的な活動を続ける伊東さんのキャリアの原点には、どのような経験があるのでしょうか。
13歳の時に国際感覚を学ばせたいという両親の思いで単身スイスに留学し、その後アメリカの大学に進みました。大学で人類学と宗教学を学ぶなかで、多感な時期を海外で過ごした自分は「日本人としてのアイデンティティを見失っているのではないか」と感じるようになったのです。
日本の文化、精神、思想と最短距離でリコネクトできる道を考えたとき、その根源となっている仏教の世界にたどり着きました。そこで大学を1年間休学し、20歳の誕生日に天台宗総本山の比叡山延暦寺にて出家・得度し、「玄聖」という法名をいただきました。比叡山での修行は、私の活動の揺るぎない「バックボーン」となっています。
「人生が変わりました」——目をキラキラと輝かせる若者たちと創る「平和へのアクションプラン」
サミットにおける次世代育成プログラムに非常に力を入れていると伺いました。
はい。サミットでは次世代を担う若者たちの教育に注力しており、サミット期間中には世界中から集まった学生とノーベル平和賞受賞者による「Leading by Example」というワークショップを開催しています。学生たちは受賞者たちと小さなグループにわかれてディスカッションを行い、世界をより良くするためのプロジェクトを検討していきます。
参加した学生からは毎回「人生が変わりました」との声が聞けます。問題意識をもつ若者が、目をキラキラと輝かせて歴史に名を残す受賞者の方々と対話している姿には、何度見ても心を打たれますし、他では得られない幸せ、やりがいを感じる瞬間です。
私たち大人が、戦争や紛争など世界で起こっている問題に対して「見ない、聞かない、知らない」と傍観者になるのではなく、「常にそこを知ろうと思う探究心から出発を」という姿勢を次世代に伝えていきたいのです。
次の世代へ。平和な社会実現のため「平和とは何か」を問い続ける人生を
最後に、今後の活動と若い世代へメッセージをお願いします。
私どもの活動が少しでも多くの皆さまの目に触れ、平和な社会実現の一助となることを願っております。
平和活動とは、不可能と思える仕事を成し遂げた偉大な方々とともに、これからも「平和とは何か」を問い続ける人生を歩むことだと考えています。まずは、世界で起こっている問題を「自分事として落とし込むには改めて考える機会を設けること」が必要です。その探究心から、あなたの平和へのアクションが始まるのです。


