「4つの試練が私を強くした」不動産流通業界のパイ...
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アメックスのDNA──信頼・サービス・挑戦が生む『世界最高の顧客体験』(後編)
ビジョナリー編集部 2025/11/22
督促部門からキャリアをスタートさせ、シドニーオフィスでの勤務、ファイナンス、マーケティング、そして未経験の営業部門責任者などを経て、トップへと就任したアメリカン・エキスプレス日本の須藤靖洋社長。後編では、社長就任後に注力してきた法人向け戦略や、他社の追随を許さない高品質な顧客サービスの仕組み、そして「クレジットカード会社」という枠を超えた独自のブランド戦略と、未来を見据えた組織変革への想いを語っていただいた。
法人顧客との絆を深める独自のBtoB戦略
近年になって、法人事業への営業を推進されていますね。
私が個人・法人の両部門を統括するようになったのは2022年からですが、それ以前からアメリカン・エキスプレスでは法人事業、特にBtoB決済の領域拡大には継続して力を入れており、今では個人事業と肩を並べるほどのビジネス規模に成長しています。クレジットカードのBtoB決済と聞いてもわかりづらいかもしれませんので、その具体例の一つとして歯科医院向けの取り組みを紹介します。個人経営の事業者が多い歯科医院において、歯科材料などを仕入れる際の支払いを、従来の銀行振込から法人向けビジネス・カード決済へ切り替えていただく。これによりその歯科医院では、経費管理を効率的に行うことが可能になるうえ、仕入れ決済で貯めたポイントも有効活用していただくことができます。このモデルは、アメリカン・エキスプレスのビジネス・カードをお持ちの顧客層のニーズとも合致しており、成長が続く事業の柱となっています。
また、この成功モデルは、他の業界にも広がっています。例えば、農家の方々にカードをお持ちいただき、農業資材やビニールハウス、トラクターのような農機具、飼料や肥料の購入に利用していただく。その他、建設資材、美容院の商材、医療機器、さらには獣医師やレストランオーナーの酒類仕入れなど、様々な事業領域で同様の取り組みを進めています。
BtoB事業が広がった秘訣はどこにあるのでしょうか。
部門間の強力な連携にあります。お客様がビジネス・カードを使いたくても、支払い先が対応していなければ意味がありません。そこで、アメリカン・エキスプレスでは、ビジネス・カードの商品開発を担うカード発行部門と、カード利用先の開拓を担う加盟店事業部が一体となり、従来の銀行振込だった取引先でもビジネス・カードが使える環境を整える取り組みを協働で推進しています。 また私たちが法人のお客様に対して心がけているのが、能動的なアプローチです。一般的なコールセンターのように電話を受けるだけでなく、私たちからお客様に電話をかけご要望を伺ったり(アウトコール)、『このような場所でカードが使えるようになりました』といった新しい情報をご案内したりする専門チームを持っています。このような部門を超えた連携やサポート体制は、アメリカン・エキスプレスのビジネス・カードをお持ちいただいている皆さんにご満足いただけるポイントの1つではないでしょうか。
私たちはカード会社ではない。「ライフスタイル・サービスブランド」だ
“世界最高の顧客体験”を掲げる貴社が、サービスの未来に描くビジョンとはどういったものなのでしょうか。
私たちは自社を単なるクレジットカード会社ではなく、ペイメントやテクノロジーに裏打ちされた「ライフスタイル・サービスブランド」であると定義しています。だからこそ「日々、世界最高の顧客体験を提供する」というビジョンのもと、社内においては最前線でサービスを担うスタッフへのリスペクトが組織に根付いています。またその思想は、会員の皆様にお届けする特典にも表れています。例えばグローバルで提携しているF1™では、専用観覧席をご用意しています。また「ファイン・ホテル・アンド・リゾート」というカード会員向けのアメリカン・エキスプレス独自のホテルプログラムでは、私たちが厳選した世界の1,600を超えるホテルやリゾート施設で、16:00までのレイトチェックアウトの確約や朝食無料などの特別サービスが受けられます。
カード券面に描かれたセンチュリオン(古代ローマの百人隊長)は全世界共通です。つまりこのカードを1枚持っていれば、ロンドンでもパリでもニューヨークでも、「アメリカン・エキスプレスのお客様」として認識され、質の高いサービスを受けられます。このグローバルな安心感と信頼感は、アメリカン・エキスプレスだけがお届けできる価値だと自負しています。
クレジットカードは、あくまでお客様との接点です。私たちは「メンバーシップ」という考え方を大切にしており、サービスを通じてお客様一人ひとりの人生があらゆるシーンで輝くよう、価値の提供に全力を注いでいます。
世界で通用する「顔」と、未来に向けた挑戦
最後に、貴社の未来へ向けての展望をお聞かせください。
私が社長に着任して以来、社員には「新しいことにどんどん挑戦していきましょう」と言い続けてきました。そして、「失敗を恐れないカルチャーを作ろう」というメッセージを2年間発信し続け、ようやくその文化が根付き始めています。今年はその想いを「レッツ・トライ」というメッセージに込めて、現状に甘んじることなく新しい挑戦を奨励しています。その一環として、日本でのビジネスのさらなる成長にむけて社内で新規事業アイデアを募る「トライボックス」というビジネスピッチコンテストも実施しました。予想をはるかに上回る応募があり、先日事業化に向けた本格検討を約束するアイデアが決定したところです。本格事業展開に向けては、いくつか超えていかなければならないステップはありますが、今はそのアイデアをどう事業化していくか、考えるだけでワクワクします。
私たちは未来に向けて大きく変わろうとしています。驚かれるかもしれませんが、アメリカでは、アメリカン・エキスプレスのプラチナ・カードの新規顧客の6割以上がZ世代とミレニアル世代です。感度の高い若い世代に選ばれるブランドであり続けるために、私たち自身が常に自己変革に貪欲でなければなりません。伝統を守りながらも、決して挑戦を止めない。これからもアメリカン・エキスプレスは、お客様の期待を超える価値を提供し続けていきます。


