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「使い捨て」から「使い継ぐ」へ。令和の古着ブームが映し出す、新・消費スタイルの正体
ビジョナリー編集部 2026/04/20
いま、古着ブームが改めて熱を帯びています。 かつては一部の熱心なファッション好きだけの世界だったこのカテゴリーも、今やコンビニで新商品をチェックするのと同じくらい、誰にとっても身近な選択肢になりました。
下北沢や高円寺の街を歩けば、10代の若者がスマホを片手に、ワゴンの中からお気に入りの一着を真剣に掘り起こす姿を当たり前のように見かけます。
この盛り上がりは、ただの「流行」として片付けられるものではありません。そこには、私たち消費者の意識の変化と、それを見逃さない企業の新しい戦略が隠れています。なぜ今、古着がここまで私たちの日常に溶け込んでいるのか。その裏側を紐解きます。
「宝探し」から「自分らしさ」のインフラへ
90年代後半、アメリカンカジュアルやヴィンテージジーンズの人気とともに、大きなブームが到来しました。当時は掘り出し物を「宝探し」のように求める楽しさが主流で、東京・下北沢や高円寺といった街が“聖地”と呼ばれました。
しかし近年のブームの再燃は、当時とは異なる広がりを見せています。リユースショップやフリマアプリの普及により、古着は誰にとっても身近な存在、いわばインフラとなりました。高校生や大学生が「古着屋巡り」に夢中になり、親世代が着ていた服をクローゼットから引っ張り出し、最新のトレンドとして着こなすことも珍しくなくなっています。
店内の雰囲気も昔とは様変わりしました。以前は閉鎖的なイメージが強かった店舗も、今では明るく清潔感のある場所が増え、女性やファミリーでも気軽に立ち寄れるよう配慮されています。
巨大資本の参入――「新品」の定義が変わる
ブームのもうひとつの特徴は、大手企業の積極的な参入です。2024年から始まったユニクロの古着販売はその象徴といえるでしょう。店舗にはクリーニングされた数百点のアイテムが並び、「新品と変わらない清潔さ」「手ごろな価格」という声が聞かれます。
販売されているのは、定番のジーンズやフリース、シャツなど。価格も790円~1,290円と手頃で、初めて古着にトライする人にも安心です。さらに、1990年代のモデルや機能性の高いアイテムなど、今では手に入らない“過去の名品”も並びます。
無印良品やセレクトショップのSHIPSでも、独自のリユース事業が拡大。SHIPSでは自社の過去商品を回収し、厳選・洗浄の上で“認定古着”として販売しています。新品時の価格や状態も明記され、価格は半額程度に抑えられています。こうした取り組みは、新しい顧客層の開拓にもつながり、従来の固定観念を一新しています。
3兆円市場を支える、デジタルとリアルの融合
市場の熱量は数字にも表れています。2024年のリユース市場規模は3兆2,600億円を突破。そのなかで衣料・服飾分野は1兆円を超える巨大な柱へと成長しました。
この成長を支えるのは、テクノロジーとの掛け合わせです。コロナ禍で台頭した無人販売店は、店員との接触を避けつつ、自分のペースで選びたいという若者のニーズを捉えました。SNSで拡散されるコーディネートがリアルタイムで店頭の品揃えに反映されるなど、デジタルとリアルがかつてないスピードで循環しています。
「脱・ファスト」で見つけた、自分だけの物語
なぜこれほどまでに古着が選ばれるのか。最大の理由は、大量生産・大量消費というこれまでの仕組みに対する、新しい選択肢としての側面です。
「誰かと被りたくない」「自分だけのスタイルを確立したい」という渇望に対して、一点物である古着は最適解となりました。近年のオーバーサイズ流行も追い風となり、古い服のシルエットが、今の世代には新鮮な「抜け感」として映っています。
同時に、持続可能な社会への意識も欠かせません。供給される衣服の約7割が廃棄されているという現実に対し、古着を選ぶことは、洗練された「環境への意思表示」としても評価されています。
価値を使い継ぐ、新しい付き合い方
古着を賢く楽しむためには、いくつかのポイントがあります。まず、価格だけに惑わされず、商品の状態や素材をしっかり確認すること。タグ表記だけでなく、実寸を測って自分の体型に合うかを見極めることが、失敗しないための近道です。
また、購入後のケアも重要です。適切な洗浄や保管を心がけることで、服の寿命を延ばし、より長く楽しむことができます。
売る側にも、信頼性や品揃えの一貫性が求められています。個人売買であれ店舗販売であれ、商品の真贋や状態説明を丁寧に行うことが、今後の生き残りを左右するでしょう。
まとめ
古着は安さや希少性だけでなく、“自分らしさ”や“環境への配慮”といった価値観の表現として、多くの人々に選ばれています。
今後は、ヴィンテージのコレクション性を楽しむ人も、普段着として手軽に活用する人も、それぞれのニーズに合った形で付き合う時代になるでしょう。そして企業による公式リセールや、リメイク・アップサイクル(古着を素材として新たな商品に生まれ変わらせる動き)など、さらに新しい潮流も生まれています。
古着の世界は、宝探しのようなワクワクと、時代を超えたつながりをきっと感じさせてくれるはずです。


