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「もう少し働きたい」が叶う?2026年からの年収の壁をわかりやすく整理
ビジョナリー編集部 2026/01/07
収入を増やしたいと考えながらも、制度上の制約が判断を難しくしている——そんな声が多く聞かれます。
現在、このいわゆる“年収の壁”が変わろうとしています。2025年の税制改正を皮切りに、働き方・家計・企業経営のすべてに影響する制度見直しが進んでいるのです。
本稿では、「年収の壁」とはそもそも何か、その仕組みや背景、そして最新の動向まで、働く人・企業・家計すべてに関わる“年収の壁”の全貌を解説します。
年収の壁とは何か
「年収の壁」と聞くと、どんなイメージが浮かびますか?
多くの方がまず思い浮かべるのは「103万円」や「130万円」といった数字でしょう。これらは、収入が一定額を超えると税金や社会保険料の負担が増え、手取りが減る可能性のある境界線のことを指します。
そのため、「壁を超えないように働き方を調整する」という“働き控え”が広がってきました。特にパートやアルバイト、子育てや介護と両立しながら働く方にとっては、家計とライフスタイルに直結する切実な問題です。
もともと日本の税制や社会保険制度は、「最低限の生活を保障しつつ、一定以上の収入があれば応分の負担を求める」という理念のもと設計されてきました。しかし、制度が古く、インフレや最低賃金の上昇、共働き世帯の増加など、時代の変化に十分対応しきれていなかったのです。
年収の壁には二つの種類がある——税金の壁と社会保険の壁
税金の壁
税金の壁とは、主に「所得税」と「住民税」が発生し始める年収ラインのことです。
従来、所得税の非課税ラインは「年収103万円」でした。これは、給与所得控除(55万円)+基礎控除(48万円)=103万円という計算式から生まれた数字です。しかし、最低賃金や物価の上昇、家計負担の増大などを受けて、2025年の税制改正ではこの壁が「160万円」まで引き上げられました。そして、このほど発表された令和8年度(2026年度)の税制改正大綱により、さらに2026年からは178万円に引き上げられます。
背景には、現実の生活コストとかけ離れた課税基準を見直し、多くのパート・アルバイト層の就業機会を広げる狙いがあります。これにより、家計の実質的な負担が和らぎ、より「自分らしい働き方」が選択できるようになるのです。
さらに、住民税の非課税ラインも従来の100万円から110万円へと引き上げられています。
社会保険の壁
一方で、注意しないといけないのが、税金とは別に「社会保険」の壁は依然として存在することです。代表的なのは「106万円の壁」と「130万円の壁」です。
「130万円の壁」は、配偶者の扶養に入り続けられるかどうかの基準です。年収130万円未満であれば、健康保険や年金の保険料を自分で負担せずに済みますが、これを超えると自身で社会保険へ加入しなければなりません。
もう一つの「106万円の壁」は、パート・アルバイトでも一定の条件(週20時間以上、従業員51人以上の企業など)を満たすと、年収が106万円を超えた時点で社会保険料の負担が始まります。
ただし、106万円の壁は2026年10月には撤廃され、「週20時間以上働く人は原則として社会保険加入」とする、よりシンプルな制度への移行が予定されています。
2025年度以降、税制改正のインパクト
2025年以降、年収の壁に関して、具体的に何がどう変わるのでしょうか。一番大きな違いは、「所得税の非課税枠が大幅に拡大される」ことです。
- 給与所得控除が55万円から65万円に引き上げ
- 基礎控除が48万円から最大95万円に拡大(所得額に応じて段階的に変動)
この二つを合わせると、最大で年収160万円までは所得税が発生しません。さらに2026年からは178万円まで拡大されることになりました。
2025年の「95万円の基礎控除」は、合計所得金額が132万円以下の場合に限られ、収入が増えると控除額は段階的に減少し、年収が上がるほど税負担は増えていきます。 しかし、令和8年度(2026年度)の税制改正大綱で、給与所得者は収入が665万円以下の場合、一律42万円の控除が受けられるようになり、恩恵を受ける層が大幅に増えました。
一方、社会保険の壁である130万円や106万円は、依然として“手取りを減らしうるライン”として残っているため、非課税枠が広がっている「税金の壁だけを見ればよい」ということではありません。
「壁」をめぐる誤解と現実
「年収の壁を1円でも超えたら大損する」と思っていませんか?
たとえば、超過分1万円に対して課される所得税は約500円程度。つまり、壁を1万円超えたからといって、1万円以上手取りが減るわけではありません。
また、社会保険料も確かに毎月の手取りを減らしますが、その分、将来の年金額が増えたり、傷病手当金や出産手当金など各種保障が受けられる「リターン」も存在します。
配偶者控除・扶養控除…家族の税制も大きく変わる
2025年の税制改正では、配偶者控除や配偶者特別控除、扶養控除など、家族をめぐる税制も大きく見直されました。
配偶者控除の「123万円の壁」、配偶者特別控除の「160万円の壁」
従来、配偶者控除を満額受けられるのは配偶者の年収が103万円以下でした。これが123万円に引き上げられ、より多く働いても控除を維持しやすくなります。
また、配偶者特別控除の満額(38万円)を受けられる年収上限も、150万円から160万円へと拡大。160万円を超えると控除額は段階的に減少し、201万円を超えると控除自体が適用されなくなります(201万円の壁)。家族全体の収入最適化という観点でも、今回の改正は大きな意味を持ちます。
学生アルバイトや大学生の「150万円の壁」と特定親族特別控除
たとえば大学生の子どもを扶養している場合、親が特定扶養控除(控除額63万円)を受けるには、従来は子の年収が103万円以下である必要がありました。
これが150万円まで引き上げられ、さらに年収が150万円を超えても188万円までは段階的に控除が残る「特定親族特別控除」も新設されました。
社会保険のハードルをどう考えるべきか
税制上の壁が引き上げられても、依然として重いのが「社会保険の壁」です。
「130万円の壁」は、配偶者の扶養から外れて自分で健康保険・厚生年金に加入するかどうかの分岐点です。これを超えると、社会保険料が給与から天引きされるため、手取りが減る“逆転現象”が起こる可能性があります。
ただし、社会保険に加入するメリットも見逃せません。
たとえば、将来受け取れる年金額が増えたり、傷病手当金や出産手当金といった給付金の対象になる、企業によっては福利厚生が手厚くなるなど、“将来の安心”が手に入ります。
実際に、「壁を気にせず思い切って働いた結果、家計全体の収入が増えただけでなく、将来の年金や保障も手厚くなった」という事例も少なくありません。
交通費・残業手当・賞与の扱い
「自分はまだ130万円に達していない」と思っていても、実は交通費や残業手当、賞与が合算されて壁を超えてしまうケースもあります。
たとえば、社会保険の130万円の壁を判断する際は「交通費」も年収に含まれます。一方、106万円の壁については交通費は含まれません。
賞与や残業手当も計算に入りますので、思いがけず壁を超えてしまうことがあるのです。
また、繁忙期で一時的に収入が増えた場合、「事業主の証明」があれば引き続き扶養に入れる特例もありますが、これはあくまで一時的な措置で、毎年繰り返し認定されるものではありません。
人手不足と制度対応の両立
「年収の壁」は働く人だけの問題ではありません。企業側にとっても深刻な人手不足や、複雑化する年末調整・給与計算など、実務面の影響が大きくなっています。
たとえば、飲食業や小売業を中心に、「壁を気にして希望シフトを減らす従業員が増えた」「急な制度改正への対応で現場が混乱した」といった声も聞かれます。
今回の税制改正を受けて、企業は従業員への情報提供やシステムの見直し、適切な年末調整の実施など、より丁寧な対応が求められます。
“壁”を正しく理解し、あなたに合った働き方・家計設計を
「年収の壁」は、私たちの働き方や家計、そして人生設計まで大きく左右する重要なテーマです。
2026年以降は、所得税の壁が178万円まで大きく引き上げられ、これまでよりも働き方の自由度が広がります。しかし、社会保険の壁や各種控除の仕組みなど、“複雑な壁”は依然として存在します。
正しい知識を持ち、計画的に働き方や家計設計を見直していくことが、これからの時代には欠かせません。
「働き方を変えたい」「家計を見直したい」と考えているなら、ぜひ今こそ“年収の壁”の本質を知り、自分のライフスタイルに合った最適解を探してみてください。
情報を味方につければ、あなたの新しい一歩を後押ししてくれる“きっかけ”になるはずです。
※ 記事内の情報は2026年1月時点のものです。


