創造的破壊が未来を拓く――ノーベル経済学賞が示し...
SHARE
警察犬ってどんな犬?役割・適性・訓練の舞台裏に迫る
ビジョナリー編集部 2025/12/04
みなさんは「警察犬」と聞いて、どんな姿を思い浮かべますか?
空港でスーツケースを嗅ぎ分ける犬、事件現場で警察官と一緒に歩くシェパード。
ニュースやドラマで目にすることはあっても、実際にどのような犬が、どんな仕事をしているのか、深く知る機会は意外と少ないものです。
この記事では、警察犬の種類や仕事内容、そして彼らがどのようにしてエリート犬へと成長していくのか解説いたします。
警察犬の主要な役割とは
「警察犬」と一口に言っても、その活躍の場はさまざまです。私たちの想像を超えるほど多くの任務が日々与えられているのです。
- 逃走中の犯人の足跡を追跡する
- 行方不明者や災害時の被災者を捜索する
- 現場に残された匂いと容疑者の一致を判定する
- 空港などで麻薬や爆発物を探知する
- 犯罪抑止のため、警察官と共にパトロールする
それぞれの業務には、犬ならではの“感覚”が発揮されています。
1. 「足跡追及」──犯人や被害者の行方を探る
事件現場に残された“わずかな匂い”を手がかりに、逃走した犯人や行方不明者の動線をたどるのが「足跡追及」です。
警察犬がクンクンと地面に鼻を近づけて歩く姿は、映画やドラマでもよく見られます。
持ち物や衣類に付着した個人の匂いを記憶し、それを頼りに数キロ先まで追跡することも可能です。
2. 「臭気選別」──“証拠”を匂いで見抜く
事件現場に残された物と、容疑者の匂いが一致しているか。この確認作業も警察犬の重要な役目です。
人間の嗅覚では到底わからない微細な違いを、犬は瞬時に嗅ぎ分けます。この能力が、裁判における証拠となることも少なくありません。
3. 「警戒活動」──パトロールや護送で治安維持
犯罪抑止のため、警察官と共に街をパトロールしたり、重要な施設や要人の護衛に従事したりするのも警察犬の仕事です。威風堂々とした体格や存在感そのものが、不審者や犯罪者への強い抑止力となります。
4. 「捜索活動」──命を救う現場でも
山岳地や災害現場では、行方不明者や被災者の捜索にも欠かせません。雪や瓦礫の下でも人間の匂いを探し出し、一刻を争う救助活動に大きく貢献しています。
5. 「麻薬・爆発物探知」──安全な社会のために
空港や港湾施設では、麻薬や爆発物を嗅ぎ分ける「探知犬」としても活躍しています。国内への違法薬物の流入を未然に防ぎ、社会の安全を守る最前線に立っています。
警察犬になれる犬種は?
警察犬には大きく分けて2つのタイプがあります。
直轄警察犬──警察が直接育成・管理
警察が自ら飼育・訓練を行う“直轄警察犬”には、以下の7犬種が指定されています。
- ジャーマン・シェパード・ドッグ
- ゴールデン・レトリーバー
- ラブラドール・レトリーバー
- ドーベルマン
- エアデール・テリア
- ボクサー
- コリー
これらの犬種は、体格や知能、作業意欲、服従性などが高く、過酷な任務にも耐えうる素質が備わっています。
嘱託警察犬──民間で訓練・管理される“多様な犬種”
一方、一般の家庭や民間の訓練施設で育てられ、警察の依頼時に出動する“嘱託警察犬”も存在します。
こちらは犬種の制限がなく、近年ではチワワやトイプードル、ミニチュア・シュナウザー、柴犬など、小型〜中型犬の活躍も増えています。
実例:小型犬が事件解決に貢献
嘱託警察犬となったトイプードルが、狭い場所での捜索活動に大きく貢献した事例も報告されています。大型犬が入りにくい現場や、目立たず人混みに溶け込む必要がある場合、小回りの利く小型犬の特性が活かされているのです。
警察犬の特徴と適性
ジャーマン・シェパード・ドッグ
軍用犬としてのルーツを持ち、優れた知能と服従性、勇敢さが特徴です。
体高約60cm前後、体重30kg以上の堂々たる体格。パトロールや追跡、威嚇など「万能型」といえる存在です。
ゴールデン・レトリーバー
穏やかな性格と高い協調性を持ち、しつけやすさが抜群。
人に優しく、介助犬や盲導犬としても有名ですが、その資質は警察犬としても発揮されます。
ラブラドール・レトリーバー
学習能力と嗅覚に優れ、麻薬探知や捜索活動で大活躍。
ソフトマウス(獲物を噛みつぶさずにくわえる能力)を持ち、繊細な作業も得意です。
ドーベルマン
精悍な外見と冷静さを兼ね備え、服従性や作業意欲も高レベル。
警戒心が強く、護送や威嚇を伴う任務にも向いています。
エアデール・テリア
イギリス原産の中型犬。学習意欲が高く、勇敢で粘り強い性格。
はじめてイギリスで警察犬として採用された犬種という歴史も持っています。
ボクサー
もともと狩猟犬や闘犬として活躍した大型犬。
知能が高く、体力も十分で、厳しい訓練にも耐え抜くことができます。
コリー
羊の群れをまとめる牧羊犬としての歴史が長く、知能と忍耐力が光ります。
細やかな観察力や吸収力の高さも、警察犬としての適性に直結しています。
警察犬が一人前になるまで
適性チェックから始まる“選抜”
まずは血統や素質を見極め、将来有望な候補犬が選ばれます。訓練所に入所後、担当者と信頼関係を築きながら、3ヶ月ほどのテスト期間で「警察犬に向いているかどうか」を見極めます。
服従訓練──“指示通りに動けるか”がカギ
「待て」「座れ」「伏せ」など、基本動作をしっかりマスターすることが第一歩です。ここで集中力や主従関係の理解力が養われます。
臭気選別・足跡追及訓練──“犬ならでは”の能力を伸ばす
服従訓練を終えると、いよいよ警察犬ならではの訓練へ。
数ヶ月かけて、微細な匂いの違いを嗅ぎ分ける「臭気選別」や、足跡をたどる「追及」など、現場で求められる高度なスキルを身につけます。
応用訓練──一頭一頭の個性を活かす
犬にも個性や得意分野があり、それぞれの適性に合わせた訓練が実施されます。
たとえば、狭い場所が得意な犬は災害救助、嗅覚が特に鋭い犬は証拠探し、体格や威圧感がある犬はパトロールに重点を置くなど、まさに“適材適所”です。
検定試験──合格して初めて「現場デビュー」
訓練の総仕上げが“検定試験”です。
服従・追跡・臭気選別・警戒など多岐にわたる課題をクリアし、はじめて本物の警察犬として認定されます。
現場デビューまでにかかる期間は、平均して1年半ほど。
その後も日々の訓練は怠らず、常に高いパフォーマンスを維持しています。
引退後の警察犬
約10年ほどの現役生活を終えると、警察犬も“引退”を迎えます。
引退後は、訓練士や家族が引き取って穏やかな余生を送るほか、施設で過ごすケースもあります。
長年社会のために尽くしてきた彼らには、愛情と安心に包まれた余生が用意されているのです。
まとめ
警察犬は、厳しい訓練と選抜を経て現場に立つ“社会の守り手”です。
- 多様な役割:追跡、証拠探し、パトロール、麻薬探知、救助までカバー
- 多様な犬種:大型犬から小型犬まで、それぞれの特性を活かして活躍
- 厳格な訓練と検定:エリートだけが現場に立つ
彼らの存在が、私たちの“安心”を支えているのです。


