
気候変動でビールが飲めなくなる?サッポロビールが...
8/29(金)
2025年
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ビジョナリー編集部 2025/08/29
ウェルビーイングブランド「Cycle.me」を手がけるドットミーと、腸内フローラ検査サービス「Flora Scan(R)」を提供するプリメディカ。食品と検査という異なる領域の2社が、タッグを組んだ。 きっかけは、Cycle.meのSNSキャンペーンにプリメディカの検査サービスを活用したことだという。異色のコラボレーションは、いかにして生まれ、何を目指すのか。株式会社ドットミー代表取締役社長の知念孝祥ジョナサン氏と、株式会社プリメディカ代表取締役社長兼CEOの富永朋氏が、現代人における健康習慣の新しいカタチを語った。
株式会社ドットミー 代表取締役社長。上智大学 経済学部卒。新卒で三井物産株式会社に入社し、ICT事業本部でベンチャー投資、パートナーとの合弁会社を設立。その後、三井情報株式会社で流通営業本部でAIを活用したSNS解析ツールの開発や販売、メーカー向け商品開発を支援。2021年より株式会社ドットミーの代表取締役社長に就任。
株式会社プリメディカ 代表取締役社長兼CEO 京都大学 経済学部卒。新卒でIBMビジネスコンサルティングサービス株式会社(現:日本IBM株式会社)に入社し業務変革のコンサルティングに従事した後、戦略コンサルティングファームの株式会社ローランド・ベルガーに転じ、数多くの企業再生、全社戦略立案、新規事業創出、M&A支援等のプロジェクトに従事。2012年、株式会社プリメディカの予防医療事業の立ち上げをゼロから主導。2014年より代表取締役社長に就任。
予防医療領域で10年以上の実績を持つプリメディカの富永氏。経営コンサルティングファームを経て、13年前に現在の事業を立ち上げたという。
富永氏:「現在は全国4,300の医療機関を通してサービスを展開しておりますが、これからは検査した後の生活習慣の改善までサポートすることで、国民の健康寿命の延伸に資することを目指しております。知念さんとは、共通の友人がきっかけで知り合い、今回のコラボレーションに至りました」 一方、知念氏がドットミーを立ち上げたのは2021年。“とらなきゃに、しあわせを。”というコンセプトには、従来の健康食品が持つイメージを覆したいという強い想いが込められている。
知念氏:「『健康食品って美味しくない』『なんだか自分には関係なさそう』というイメージを変えたいと思いスタートさせました。ウェルビーイングや予防医療が注目される中で、毎日の生活に無理なく取り入れられて、しかも美味しくて見た目もおしゃれな食品を届けたいと思い、Cycle.meというブランドを広げています。お客様の体感や変化を大事にしたい気持ちから、私が腸内フローラ検査に興味を持って、富永さんの会社と出会ったのが約1年前の夏ですよね!」
業界もバックグラウンドも異なる両社だが、その出会いは「必然だった」と双方は語る。
富永氏:「知念さんの会社の素晴らしい取り組みはニュースで拝見しており、いつかご一緒できたらと思っていました。健康のためのプロダクトを、無理なく日常に取り入れられる仕組みが本当に魅力的だと感じていたんです。私たちの検査レポートでは、食事・運動・睡眠の改善を提案していますが、なかでも食生活は“選択の積み重ね”であり、もっとも変えやすい。特に腸内フローラは食事と密接ですから、腸内環境を可視化し、食生活を整えることで健康的なサイクルをつくれる。ただ、私たち自身は食品というソリューションを持っていなかったので、知念さんの会社との出会いは、まさに探し求めていたものでした」
知念氏:「プリメディカさんが、日本人特有のエンテロタイプ分類を行い、データを誰にでも理解しやすいかたちで伝える研究をされている点に、とても魅力を感じました。そうした知見と私たちの商品を組み合わせることで、お客様にしっかり価値を届けられる。そして、その先にある行動の変化まで一緒に見ていけるのではと考えました。私たちの商品は、医療や介護の現場でも使われてきた高品質なグアーガム食物繊維を採用しています。『美味しいからこそ続けられる』『続けることで体感できる』――そのうえで、お客様がどう体感し、検査結果にどう反映されるのかを見てみたいと思っていました」
腸内フローラの特徴を表す指標である「エンテロタイプ」は、先行する欧米での研究成果により、大きく4つのタイプに分類できるとされています。しかし、これらは⾷⽣活などの生活習慣に影響されると考えられているため、欧米の食生活とは異なる日本人に対し、欧米で定義された指標を用いて、腸内フローラを特徴付けることの妥当性に関しては様々な意見がありました。
本検査では、⽇本⼈の腸内細菌叢を特徴付ける最適なエンテロタイプ数の解析に着⼿した研究成果 ※1 を実装し、日本人の腸内細菌叢を特徴付けるエンテロタイプを5つのタイプ※2 に再定義し、評価しています。
※1 Flora Scan(R) に関連する研究成果は学術雑誌『Microorganisms』に2022年3月20日付で掲載されています。
(https://www.mdpi.com/2076-2607/10/3/664/html)
※2 特許第7193810号「疾患リスク評価のための腸内細菌叢のタイプ分類方法」:TIN model (https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000020.000072604.html)
Cycle.meのフォロワーに腸内フローラ検査「Flora Scan(R)」の受検を呼びかけたところ、800名を超える応募が集まったという。予想以上の反響から見えてきたのは、消費者の切実なニーズだった。
知念氏:「これだけ多くの方にご参加いただけたことで、日々の健康への取り組みが『自分の体にどんな影響を与えているのか』を、実際のデータで確認したいというニーズが非常に高いことを改めて実感しました。『楽しかった』『やってよかった』という声が多く、自分の食生活やライフスタイル全体を見直すきっかけになったようです」
富永氏:「まさに知念さんのおっしゃる通りです。今回は食物繊維入りのゼリーを間食として食べていただきましたが、それをきっかけに食生活全体が変わった方が非常に多かった。『ゼリーを見ると“食物繊維を摂らなきゃ”と思い出すようになった』『自分で何を食べたらよいか調べるようになった』といった声もあり、全体的な食習慣の改善につながったのは、本当に素晴らしい成果だと感じています」
参加者へのインタビューでは、興味深い反応がいくつも見られたという。
富永氏:「検査側から見ると、やはり食物繊維に関連する菌が変化したケースが多く見られました。水溶性だけでなく不溶性食物繊維に関連する菌も変化しており、同じ食品を摂取しても腸内フローラの状態によって変化が異なるのは印象的でした。お腹の調子はもちろんですが、『寝つきがよくなった』『からだが軽くなった』、さらには『肌の印象が明るくなったように感じた』という声もありました。実は別の取り組みでも同様の傾向があり、腸内環境と肌の状態についての示唆が得られたことは、今後の新たな研究テーマとしての可能性を感じています」
プリメディカの研究成果では、日本人の腸内フローラは5つのタイプに定義されている。食習慣と密接に関わっており、健康な人に多いタイプや、タンパク質・脂質が多い食生活を送る人のタイプなどがあるという。
富永氏:「今回の取り組みでは、健康な人に多いとされるタイプB(バランス食タイプ)の方が多く見られましたが、その中でも1名がさらにヘルシーなタイプE(ヘルシー食タイプ)に変化するケースがありました。同じタイプBでも菌の構成割合に変化が見られたのが印象的で、わずか2週間という短期間でも、しっかりと変化が見られたことは非常に注目すべき結果ですね。さらに、おやつ(間食)を対象とした点も新しい試みでした。サプリではなく、ゼリーを1本カバンに入れておくだけで手軽に食物繊維が摂れる。これは大きなメリットだと感じています」
なぜ、Cycle.meは「間食」で食物繊維を摂ることに着目したのか。その背景には、現代人の食生活の大きな変化があると知念氏は語る。
知念氏:「調査・分析を進める中で、食習慣が大きく変化していると実感しています。“朝・昼・夜の3食”というスタイルから、今では1日平均3.5食とも言われ、間食をうまく活用する人が増えてきました。特に若い世代や多忙な方にとって、間食で栄養を補う価値は今後ますます高まっていくと思っています。エネルギー補給やリラックスのために間食をとるついでに栄養もとれたら、というニーズは確実に広がっています。 その上で“おやつとして美味しいこと”は絶対条件でした。私たちの商品は、お腹を満たす“美味しいゼリー”として楽しんでいただき、結果的に“健康にもいい”という順番で選ばれている。美味しさにとことんこだわった結果だと思っています。
もう一つが“手に取りやすさ”です。ちょうどよい量で小腹を満たせ、携帯しやすいスティックタイプだからこそ、無理なく取り入れてもらえる。実際、美容部員の方から『接客中にお腹が鳴らないように、手軽に栄養補給できるこのゼリーがぴったり』という声もいただきました。 また、健康食品っぽくないスタイリッシュなデザインも大事にしているポイントです。『美味しくて、見た目もおしゃれ。気づけば健康にもつながっていた』――そんなバランスの取れたプロダクトが、人々の健康意識を自然と引き上げていくきっかけになればと思っています」
今回の取り組みを足がかりに、両社はさらなる展開を見据えている。
富永氏:「私は、企業が従業員の健康に投資する流れをもっと加速させたい。社員食堂を持つ企業と連携し、昼食を通じて健康に貢献できるようなメニューを一緒に考えていけたらと思っています。1日のうち1食を変えるだけでも腸内環境に変化が見られたデータもあり、特に自由に変えやすい“昼食”を起点に提案を進めたいですね」
知念氏:「リアルな場所での取り組みもすごく重要だと感じています。エームサービスとの健康経営の提案や、小売店の売り場で深い情報を伝えていく取り組みのほか、@cosmeのような美容チャネル、フィットネス領域ではTipnessで展開を進めています。外見だけでなく体の内側から健康を考える“本質的なウェルネス”が広まる中で、私たちの考えに共感してくれるパートナーが増えていると感じます。運動や美容に興味がある場所で、自分の体の状態を知るきっかけを提供できるのは、とても良いスタートになるはずです」
富永氏によると、プリメディカでは現在、Jリーグチームの選手のコンディショニングサポートに「Flora Scan(R)」を活用し、アスリートのパフォーマンスと腸内環境の関連性を研究しているという。この知見は、一般の運動習慣がある人々にも応用できる可能性を秘めているようだ。
知念氏:「私たちが目指すのは、“健康的な寿命を伸ばす”という社会課題への貢献です。そのためには単独の商品だけでは全てを解決できません。だからこそ、セブン-イレブンさんやエームサービスさんなど、様々なパートナーと手を組み、入り口を広げています。そして、エビデンスを蓄積しているパートナーさんと協力しながら、きっかけ作りと深掘りを進めていきたいですね」
「おいしさ」と「データ」。この両輪で、人々の健康習慣を根本から変えようとする2社の挑戦は、まだ始まったばかりだ。