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「親しさ」と「敵意」が同居する時代へ──Z世代が共感する“フレネミー”の正体と、現代社会が映し出す人間関係の葛藤
ビジョナリー編集部 2026/07/21
近年、特に若い世代の間で「フレネミー」という言葉が使われ始めています。
表向きは友人そのもの、でも時折見せる敵意や嫉妬が垣間見える。この複雑な関係性は、なぜ今、多くの人の心に刺さっているのでしょうか。
「フレネミー」とは何か──友達と敵の境界線が曖昧になる時
もともとは英語圏で生まれた造語で、「フレンド(友達)」と「エネミー(敵)」を組み合わせたものです。“嫌いな人”や“ライバル”とは少し違い、心の距離が近い友人に対して、好意と敵意の両方が入り混じる、複雑な関係性を指します。特にZ世代(1990年代後半から2010年代初頭生まれ)では、日常会話やSNS上で「フレネミー」が頻繁に登場します。
恋愛相談や学生生活の愚痴の場面でも、「あの子は親身に話を聞いてくれるけど、ちょっと私の不幸を楽しんでいる気がする」といったニュアンスで用いられます。
フレネミーの特徴──褒め言葉に潜む“トゲ”
具体的な特徴としては、褒めているようで実は裏に批判が隠れている「受動的攻撃」や、他人の失敗には妙に優しく、成功には素直に祝福できないといった態度が挙げられます。
たとえば、「最近キレイになったね、前はちょっと地味だったのに」といった“裏褒め”や、みんなの前ではあなたを下げるような発言をして二人きりの時だけ親切にする、という行動です。
SNS上でも、「自分だけ盛れている写真を友人の承諾なく投稿する」「ストーリーの公開範囲を限定し、見せたい人だけにリア充アピールをする」など、巧妙な“距離感”の演出が行われています。
なぜこの言葉が刺さるのか──Z世代の心理と“ラベリング”の効用
現代の若者は、友人関係において「みんな一緒」でいることを強く求められる一方、「他者より一歩先に進みたい」という競争心も内包しています。この二つの気持ちの間で揺れることで、心の中に説明しきれないモヤモヤが生まれやすいのです。
しかし、あからさまに「嫌い」と言うのは罪悪感が伴うものです。そこで便利なのが、「あの人はフレネミーだから」という“ラベリング”です。この言葉を使うことで、自分の複雑な感情を客観的に整理し、無理に相手を批判したり自分を責めたりせずに済むのです。
また、人間関係においても「タイパ(タイムパフォーマンス)」が重視される傾向が強くなっています。誰が本当の味方で、誰が自分を消耗させる存在なのかを早めに見極め、エネルギーを節約したいという発想です。
“つながり過剰”社会が生み出すSNSと人間関係の疲弊
まず、SNSの発達によって、友人の生活や交友関係、日々の出来事がいつでも可視化されるようになりました。Instagramや動画投稿アプリの普及により、「誰とどこで何をしているか」「どんな友達がいるか」が手に取るように分かる環境が、常に比較と競争を生み出しています。
その結果、他人のキラキラした日常や成功体験を目にするたびに、「自分だけが取り残されているのでは」「なんであの人はあんなに充実しているのか」といった焦りや劣等感が湧き上がりやすくなります。微妙な嫉妬や優越感が入り混じる感情は、まさにこの土壌から育まれています。
さらに、現代社会では知り合いを一気に増やせる一方で、本音をぶつけて関係を切ることには強い抵抗感があります。「ブロックしたら気まずい」「グループから外れると自分だけ浮いてしまう」という心理から、表面上は仲良く見せかけて内心はモヤモヤを抱えたまま、関係を続ける人が増えています。こうした“偽りの調和”が、複雑な関係性を量産しているのです。
社会的な不安定さも影響しています。景気や将来への見通しが不透明な時代、自分の安心や安定を守るために、時に他人を蹴落とすような競争意識が芽生えやすい環境になっています。こうした心理が、身近な友人関係にも無意識のうちに投影されてしまうのです。
これからの人間関係はどう変わる──“厳選”と“距離感”の再定義
フレネミーという言葉が流行する背景には、現代社会の人間関係への“倦怠感”や“疲れ”が色濃く映し出されています。この現象を経て、若者たちの友情観やコミュニティの在り方はどう変化していくのでしょうか。
まず、人間関係の“厳選”が加速すると考えられます。広く浅い交友よりも、本当に信頼できる少数の仲間を大切にする流れが、今後より顕著になるでしょう。SNSでも“鍵アカ”や“親しい友達だけに公開”といったクローズドな使い方が増えてきています。
また、友達だからといって、すべてをさらけ出す必要はない、という“バウンダリー(境界線)”の意識が強まっています。「ここまではOK、でもこれ以上は踏み込ませない」といった適度な距離感を自分で設定し、無理に合わせすぎないスキルが求められる時代です。この“距離感の再定義”こそ、これからの人間関係で生き抜くための新たな武器となるでしょう。
一方で、このような関係性を上手く言語化し、笑い話やネタとして消化できる若者も増えています。冗談交じりに指摘することで、深刻化せずに関係をリセットできる柔軟さも、現代ならではの特徴です。
現代人の“生存戦略”──複雑な社会で傷つかず生きる知恵
誰しもが嫉妬や不安、承認欲求を抱えるのは自然なこと。大事なのは、その感情を否定するのではなく、適切に言語化し、距離を調整しながら人と付き合うスキルを身につけることです。
「なんとなくこの関係、疲れるな」と感じたら、まず自分の感情を整理してみましょう。必要なら、会う頻度を減らしたり、SNSの公開範囲を見直したりすることも悪いことではありません。無理に関係を続けるより、“自分が心地よくいられる距離”を見つけることこそ、これからの時代の人間関係の新常識です。
“友達だけど敵かもしれない”という不安に振り回されるのではなく、自分自身の感情や価値観を大切にしながら、人とのつながりを見直す勇気を持ちましょう。「フレネミー」という言葉は、現代社会の矛盾や息苦しさを映す鏡であると同時に、私たちがより柔軟で賢く生きるためのヒントをくれているのかもしれません。


