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急成長する中国IoT家電市場のリアル:なぜ92%がスマート家電を使うのか
ビジョナリー編集部 2025/12/17
私たちの暮らしに欠かせないエアコンや冷蔵庫、掃除ロボット、スマートスピーカー。近年、これらの家電がインターネットとつながり、生活の“当たり前”を大きく塗り替えつつあります。
特にいま世界が注目されているのが中国のIoT家電市場の急成長です。都市部ではすでに9割以上の家庭がスマート家電を所有し、その普及率や生活への浸透度は日本や欧米を大きく上回っています。
なぜ中国では、これほどまでにIoT家電が生活の中心になったのでしょうか。
本稿では、普及の背景から消費者の満足度、産業構造の変化、そして日本の家電市場や私たちの生活に与える影響まで、急拡大する中国IoT家電の“現在地”と“これから”を読み解いていきます。
世界最先端を走る中国のIoT家電普及率
Mordor Intelligenceによると、世界のスマート家電市場は2024年時点で約350億ドル、2029年には536億ドルへと年率9%近い成長が見込まれています。その中でも中国は、世界一のスマート家電普及国。例えばリビングテック協会などの調査では、中国都市部のスマート家電所有率は実に92%に達し、欧米や日本を大きくリードしています。
進化と多様化
大型家電のスマート化が標準装備
エアコンや冷蔵庫、洗濯機、テレビ
これらはすでに「スマホで遠隔操作」「AIによる自動運転」「省エネ最適化」が当たり前に。
例えばHaier(ハイアール)、Midea(美的)、Hisense(海信)といった大手メーカーが、庫内のカメラやセンサーで食材を認識し、在庫や消費期限を管理したり、食材に基づき、最適なレシピを提案する等の機能が付いたAI搭載の冷蔵庫や、食材に応じて加熱時間を自動調整するオーブンなどを展開し、生活効率全体を底上げしています。
日常の“面倒”を消すロボット&IoTデバイス
- 掃除ロボットや窓拭きロボット
ECOVACSの「WINBOT MINI」は、窓ガラスに吸着して自動でピカピカに掃除。高所や外側の窓も人手いらずです。 - 食器洗い機・スマート給餌器
Xiaomiの「スマート給餌器2」は、ペットの食事量・食事時間をアプリで管理し、外出先からの遠隔給餌も可能。仕事や旅行中でもペットの健康を見守ることができます。 - スマートドアロック・カーテン・空気清浄機・加湿器
これらもネットワーク経由で制御でき、家族の帰宅時や季節に応じて最適化。まさに“生活の自動化”が進んでいます。
「中国らしさ」と革新の融合
中国メーカーは、国民的な生活課題や食文化に根差した独自のIoT家電を生み出しています。
- 自動調理器
中華料理の“炒め物”もAIで最適な火力・油量を自動調整。料理の負担を大きく減らし、誰でも本格的な味を再現できるとのこと。 - 健康管理家電
スマート体重計は、体脂肪率やBMIなどをスマホで一元管理。「健康志向」の高まりに合わせて支持を集めています。
驚きの満足度と“生活の質”の変化
実際に中国の消費者は、スマート家電をどのように評価しているのでしょうか。
調査によると、「掃除ロボット」や「スマートロック」「食器洗い機」などは、所有率以上に満足度が高く、多くの人が「生活の質が大きく向上した」と実感しています。その理由として特に多く挙げられるのが、「負担の軽減」「時間の節約」「心配事の解消」というキーワードです。
なぜ中国でここまでIoT家電が普及したのか?
“世界の工場”から“技術大国”への変貌
中国は1980年代から世界中のメーカーの生産拠点となり、海外技術やノウハウを積極的に吸収してきました。90年代以降は、自国ブランドの強化と技術人材の育成が進み、今では世界の家電売上トップ3を中国メーカーが占めています。
デジタルネイティブな消費者層の台頭
スマホやインターネットが生活インフラとして根付いた世代が、中国の消費の中心を担っています。新技術への受容性が非常に高く、「新しいもの=良いもの」という価値観が広がっています。
競争と同質化、そして差別化への挑戦
中国では、部品メーカーから最終製品まで無数の企業が競い合い、ヒット商品は瞬く間にコピーされます。そのため、各メーカーは独自性やブランド力を磨き、AIやIoTを駆使した付加価値の高い家電で差別化を図っています。
グローバル戦略とローカライズ
Haier(ハイアール)などは、海外規格を取得し、現地法人や現地人材の登用などグローバル展開も加速。割安路線から高級志向へのシフトも進み、ハイエンド家電の売上が急増しています。
進化し続けるIoT家電、その先にあるもの
今後も中国のIoT家電市場は拡大し続けるとみられます。実際、消費者の「次に欲しいスマート家電」としては、プロジェクターやカーテン、空気清浄機、そしてすでに高満足度を誇る掃除ロボット・食器洗い機など、多岐にわたる製品への関心が高まっています。
また、IoT家電は単なる「便利な道具」から、家族の健康や安心、時間の使い方、そして心の余裕までをも左右する“生活基盤”へと進化しつつあります。たとえば、ペットの健康管理や高齢者の見守り、遠隔地からの家事支援など、社会課題解決の新たな切り札になる可能性も広がっています。
日本企業・日本の生活はどう変わる?
中国メーカーは、かつての「安かろう悪かろう」というイメージを脱し、高品質・高機能の製品を次々と世界市場に送り出しています。日本でも、中国製家電が存在感を増しているのはご存知の通りです。
さらに、オンライン販売やグローバル展開のノウハウを持つ中国メーカーは、今後も日本市場でのシェア拡大を狙っています。逆に、日本のメーカーやスタートアップにとっても、「中国発のIoT家電」から学び、自社の強みと組み合わせることで、新たな成長機会をつかむチャンスが広がっていると言えるでしょう。
まとめ
中国のIoT家電市場がここまで成長した背景には、生活の質を高めたいという消費者ニーズと、それに素早く応える産業構造、そして熾烈な競争環境があります。スマートロックや掃除ロボットに象徴されるように、IoT家電は単なる“便利な道具”ではなく、家事の負担軽減や時間の創出、安心の確保といった、生活の基盤そのものを支える存在へと進化しました。
そして中国発の家電は、こうした生活価値の変化を的確に捉え、世界中の“当たり前”を塗り替えつつあります。日本でもスマート化の波は着実に広がり、暮らし方や家電選びの基準がこれから大きく変化していくでしょう。
IoT家電が示す未来は、「より快適で、より効率的で、より安心できる生活」。その可能性は、私たちの日常を一段上のレベルへ引き上げる力を秘めています。新しい家電を取り入れることは、ただの買い物ではなく、未来の暮らしを先取りする選択なのかもしれません。


