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「富山高山すし空港」誕生。なぜ隣県の地名と「すし」を冠したのか?その背景と賛否を解説
ビジョナリー編集部 2026/07/14
2026年7月、富山県の空港にまつわるニュースが日本中に波紋を広げました。これまで「富山きときと空港」として親しまれてきたこの空港が、新たな愛称「富山高山すし空港」を発表したのです。この新愛称には、地方空港が生き残るための切実な戦略と、訪日外国人観光客を取り込むための大胆なマーケティングの意図が込められていました。
「富山高山すし空港」誕生の舞台裏
2026年7月8日、新田八朗知事が「富山きときと空港」から「富山高山すし空港」への愛称変更を正式に発表しました。「きときと」は“新鮮な”を意味する富山弁で、2013年の空港50周年と県設立130周年を記念し、地元公募により選ばれた言葉です。13年以上にわたって多くの県民に親しまれてきました。それが一転、なぜ「高山」と「すし」が加わったのでしょうか。空港名に自県以外の地名を冠するのは極めて珍しい出来事です。
「高山」と「すし」が入った理由とその裏側
地方空港の存続危機——新幹線時代の現実
なぜここまで思い切ったネーミングが必要だったのでしょうか。背景には、直面する厳しい現実があります。北陸新幹線の延伸により、東京〜富山間の鉄道アクセスが大幅に向上し、羽田〜富山便の利用者は減少傾向。2025年度の富山空港利用者数は37万9306人と、前年度比で5年ぶりの減少。国際定期便も、コロナ禍の影響や運休が続き、回復には至っていません。
こうした中、富山県は2026年4月から「混合型コンセッション方式」(官民連携による運営)を導入し、経営のテコ入れを図っています。民間の創意工夫と行政の信用を組み合わせ、「空港の再生」を目指す取り組みです。その一環として、愛称も刷新し、インバウンドを中心に新たな需要を掘り起こす狙いがありました。
なぜ「すし」なのか——グローバルで通じる言葉の力
「すし」という単語は、英語圏のみならず世界中で通じる日本語です。富山湾の海の幸は日本国内でも評価が高く、「寿司といえば富山」と発信することで、海外の旅行者へ直感的な魅力を伝えたいという思いがありました。食の分野で世界共通語にもなる「SUSHI」のパワーを最大限に活かす戦略です。
「高山」を加える意味——インバウンド観光の導線作り
岐阜県高山市は、世界的にも有名な観光地です。コロナ禍前と比べても、訪日外国人宿泊数は1.5倍となり、2025年には約98万人の外国人が高山市内に泊まりました。実は名古屋からの「南ルート」が一般的で、北陸側の「富山空港」が高山最寄りの空港であることはあまり知られていません。
富山空港から高山までは直線距離で約80km、車で2時間弱です。そこで「高山」ブランドを借り、「高山へ行くなら富山経由が近い」と世界にアピールすることで、インバウンド観光の“空の玄関口”を目指す狙いが込められました。
巻き起こる賛否両論——地元と観光業界のリアルな声
地元・SNSでの疑問と困惑
発表と同時に、富山県内外でさまざまな反応が巻き起こりました。特に、地元住民やSNS利用者からは「なぜ富山の空港に岐阜の地名が?」という違和感や、「高山はそんなに近いのか?」という素朴な疑問が相次ぎました。「きときと」の愛称に愛着を感じていた人も多く、「親しみやすさが失われた」「詰め込みすぎて何の空港か分からない」といった声も目立ちます。
観光業界・首長の期待と肯定的な見方
観光業界や岐阜県側からは歓迎の声が上がっています。岐阜県の江崎知事は「海外旅行客には県境など関係ない。広域観光の促進に意味がある」とコメント。高山側からも「海も空港もない岐阜県にとって、富山空港との連携はありがたい」と連携強化に前向きです。
観光事業者からも「海外の旅行者検索やSNSで目に止まるインパクトが必要」「ここまで振り切ることで、地域の存在感を上げられる」「広域観光の入口として理にかなっている」といった肯定的な意見が寄せられています。
今後の展望と課題——「名前負け」しないために必要なこと
必須課題となる交通インフラの整備
「高山」という名前を冠した以上、実際に空港から高山市内までのアクセス向上は不可欠です。現状では、富山空港から高山に向かう場合、一度富山駅まで移動し、その後特急やバスで1時間半以上かかるのが実情です。現段階では直通の公共交通機関がなく、「高山が近い」と思って来た観光客が戸惑うリスクも指摘されています。
県も「二次交通(空港発着後の移動手段)の充実は避けて通れない」としており、両県の知事も直通バスや新たな周遊ルートの開発に向けて協力を確認しました。今後、交通インフラ整備が進み、「名前負け」しない実態をいかに作るかが成否を分けるポイントとなります。
富山×岐阜の広域観光連携がカギ
もう一つの課題は、「名前の話題性」だけで終わらせず、実際の観光体験やリピーター獲得につなげることです。富山の新鮮な海の幸や寿司、岐阜の伝統工芸や自然体験、山岳リゾート。この両者をセットにした周遊型プログラムの開発や、観光情報の一元化、プロモーションの強化が不可欠です。
岐阜県側でも、インバウンド向けの体験プログラムに今後富山県の観光地も加える方針が示されました。県境を超えた連携で、観光客に「一度に二つの魅力」を届けるシナリオが求められています。
まとめ:新しいサバイバルモデルとなるか
今回の愛称変更は、危機に瀕した地方空港が生き残りをかけて選んだ“挑戦的なマーケティング戦略”です。
世界的な知名度を持つ「すし」という言葉と、高山という観光ブランドを組み合わせ、インバウンド需要を直接呼び込む狙い。自治体が枠を超えて連携し、「広域観光時代」の新しいモデルを模索し始めたともいえるでしょう。
今後この愛称がどこまで実を結び、地方空港再生のロールモデルとなれるか。富山・岐阜両県の本気度と、地元住民・観光客の声をどう未来につなげるかが注目されます。


