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2025

    経営者に必要な「勘」と「感」は若いうちに磨くべし

    #24経営者に必要な「勘」と「感」は若いうちに磨くべし

    原石からダイヤへ

     これまで、自分の経験や歩みについて語ってきたが、今回は僭越ながら、私がこれまで経営やビジネスを通じて培ってきたことを紹介させていただきたい。

     私はこれまで百貨店業界を中心に経営に関わってきたが、特に大切にしてきたのが、「勘」と「感」である。

     まずは「勘」について。例えばBS(貸借対照表)、PL(損益計算書)、キャッシュフローなどの数字を見れば、一見すると各社とも利益といった共通の指標で評価されるかもしれない。財務諸表を通じて企業の現状を把握することはもちろん大切だが、その数字の背景にある意味を汲み取り、どこに資金を投じ、どこでリスクを取るべきかを判断するには、経験に裏打ちされた直感的な洞察が欠かせない。こうした判断の重みこそが、トップに託される大きな責任の一つだと考えている。

     もう一方の「感」とは、感性の「感」である。理性や理屈だけでものごとを捉えるのではなく、そういったものでは計り知れない領域を“感じ取る”ということが、経営判断を左右する場合もある。

     私はこの両方を大切にしてきた。この「勘」と「感」を磨き、発揮していくことは、経営者に与えられた役割そのものである。企業の最終判断は社長に託されており、その判断が組織全体に与える影響は計り知れない。
     私自身の感覚としては、社長と副社長との間にも、意思決定の重みにおいては大きな違いがあるように感じている。その最終判断に必要なのが、勘と感性、そして広い視野で物事を見る力、つまりマーケティング力だと考える。  

     ここで言うマーケティング力とは、単なる顧客マーケティングを指すのではない。世の中のトレンドや異業種の動きを360度の視点で観察しながら、「来年はこうなるのではないか」「次はこう動くのではないか」といった、直感的なひらめきを得る力のことである。
     それが必ずしも正解である必要はなく、柔軟な発想こそが大切である。

     私自身も、そういった感覚を頼りに判断を重ねてきた。そして企業の方向性を定めていくうえでは、何よりもその「決断力」が問われる。

     私は人と同じ判断をすることが必ずしも良いとは思ってこなかった。そのため、役員会でも人と違う意見を述べる人を、特に評価してきた。独自の視点を持つことが、組織に新たな価値をもたらすと信じていたからである。

     もっとも、こうした「勘」や「感性」は後天的に磨くこともできると信じている。

     日本で人事領域において非常に高い評価を受けている人物がいる。かつて外資系企業で人事部長を務めていた方で、その方が人的資本や人材戦略についての提言を行う機会があり、私も含めて6人ほどで委員会を構成し、議論を重ねてきた。
     その中で浮かび上がったのは、経営者をどのタイミングで育成していくべきかという課題である。
     55歳になって常務となり、そこから社長を目指すという道筋では、準備が不十分ではないかという意見が多かった。やはり20代や30代のうちから経営者的な視点や判断力を養う習慣を身につけることが必要なのだ。

     私自身も、28歳のときに業界の外へ出たことで、「自分の周囲をどれだけ広く見渡せるか」といった習慣が自然と身についたと感じている。
     さまざまな人と会い、さまざまな情報に触れる中で、新聞記事の一文に対して「これは将来どうなるのか」と問いを立てるような思考を持ち続けることが大切だと思っている。前述の委員会の議論でも、まさに同様の結論に至った。

     今は情報が自動的に入ってくる時代ではあるが、だからこそ、自らの手で情報を取りに行き、それを自身の思考と結びつける力が求められている。そうした力は一朝一夕で身につくものではなく、やはり感性に依存する部分が大きい。

     こればかりは教科書で学ぶものではなく、人との出会いの中で磨かれていくものではないかと、私は思っている。

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