
真のリーダーに求められることとは
4/28(月)
2025年
大西 洋 2025/04/25
これからの日本社会において必要なのは、自らの考えを持ち、言葉にして発信できる人材である。
しかし現実には、そうした個性を社会が無意識のうちに抑え込み、いわば「丸くする」傾向が、社会全体として年々強くなっているように思う。それには一定の意義もあるだろうが、過度に均質化が進めば、本来の個性が失われてしまいかねない。バランスが重要なのである。
自分の意見をきちんと言えなければ、これからの時代には通用しないだろう。とはいえ、礼節や配慮も同じく大切だ。自らの意見を発信し、他者の共感を得ながら、ときには反対を受けながらも対話を続け、解決策を見いだせる人が、今後ますます求められるようになるはずだ。
たとえば企業の面接において、積極的に意見を述べるタイプの人材は、時に「扱いにくそう」と判断されてしまうことがある。結果として不採用となり、平均点を取れるような“まともな人材”を採用するというケースは少なくない。もちろん、そのような人材も組織には必要なこともあるが、非常にもったいない決断をしてしまっている可能性もある。
だからこそ面接官には、自身の感情や、組織に役立つか否かといった視点で終わらせるのではなく、長期的に組織を成長させるために必要な人材であるか、その人材の可能性を組織として引き出すことができるかといった広い視点をもち、判断することが求められる。
それならば、社長が一次面接からすべて行えば早いと思うかもしれない。しかしほとんどの場合、それは現実的ではないだろう。また、面接官の成長にも繋がらない。面接官自身も、自己の判断が正しいと盲信せず、上席と議論するなどして人を見る目を養っていくことが大切である。
私自身も、30代から40代前半で活躍するスタートアップの若手経営者たちと、意識的に多くの交流の機会を持つようにしている。
正直なところ、今の彼らにはもう自分では到底かなわないと感じることも多い。むしろ、それで良いのだと思っている。彼らは私の時代とはまったく違う発想で動いており、ITやデジタルに囲まれた環境で育ってきた分、世界観も多様で柔軟である。
だからこそ、自分に何が伝えられるかと、いつも考えるのだが、やはり伝えたいことは『外に出て人と出会い、視野を広げる』ということだ。世の中を360度の視点で捉え、人脈を広げ視野を広げていくこと。この重要性は、私の経験から学んだことである。
今の若い世代の能力や行動力には、目を見張るものがある。そのような彼らに対して、ビジネスに関する具体的な相談に乗ることはできるが、将来の生き方に対してアドバイスをするのは、差し出がましいことである。優秀な若者は、すでに自らの力で道を切り拓いている。彼らと交流することで、私にとっても毎日が学びの連続となっている。
同時に、組織の現場では、まだ古い慣習が残っていることも否定できない。たとえば、若手社員がちょっとした失敗をした際、それを大きな問題として扱ってしまうような空気感があるとすれば、それは成長機会を阻んでしまう可能性もある。そうした風土では、若い人材は萎縮してしまい、力強さや主体性を失ってしまう。
大切なのは、失敗を成長のきっかけとして捉え、未来へつなげていく姿勢である。 これからの若手人材には、そうした状況に左右されず、しなやかさと強さを併せ持った強い人物に育ってほしいと心から願っている。