
経営者に必要な「勘」と「感」は若いうちに磨くべし
4/28(月)
2025年
大西 洋 2025/04/23
空港ビジネスを推進していく中で、私たちはいくつかの大きな課題と向き合っている。
羽田未来総合研究所では、こうした課題に対し真摯に向き合い、変革の糸口を見出すべく取り組みを続けている。たとえば、日々多くの人が行き交う空港での体験価値は、まだ大きな可能性を秘めている。
現在の空港空間は、移動の中継地点としての機能に留まる部分も多く、滞在そのものを楽しむような仕掛けが十分に整っているとは言い難い時折、米国の空港利用者は年間約8000万人、日本は約9000万人といった数字を引き合いに出して語られるが、単なる来訪者数を誇ることにはあまり意味がないと思っている。
むしろ本当に注目すべきなのは、その膨大な利用者の動向やニーズをデータ化して把握し、どのようなサービスを提供すればより良い体験を届けられるかを提案することにある。
現代は、まさにデータの時代である。約9000万人もの来訪者がいるのであれば、顧客情報を収集・分析し、価値あるアウトプットとして社会に還元していくことが求められる。しかし現状、飛行機のチケットを購入しても、その情報が当社に残ることはない。
私たちは、空港を単なる「通過点」から「目的地」へと変えていくことを目指している。その鍵となるのが、データ活用だ。顧客の動向や志向を可視化し、サービスや施設運営に生かしていく。
現在、羽田空港ではスマートフォンアプリの運用を通じて、マーケティングの概念を導入し、少しずつデータに基づいた仕組みづくりを進めている。
当社には、これまでマーケティング戦略部やECを持たず、まさにゼロからの挑戦だった。
だからこそ、次代を担う若い世代が自由な発想で新たな提案を行い、自ら行動を起こす機会を増やしていくことに大きな意味があると考え、若い世代にはこうした分野に対して柔軟かつ前向きに提案し、自ら動いていけるような人材に成長してほしいと切に願っている。
世の中には、20代でスタートアップを立ち上げ、成果を出している若者もいる。
当社では、そうした人たちと当社の若手社員で共に仕事をさせてもらう機会を設けている。同じ場所で語り合い、価値観を共有することで刺激を受けてもらいたい。目の前の刺激や挑戦から肌で何かを感じ取ってゆくことが、成長には大切なことである。
たとえば、日本空港ビルデングに入社した社員は、まず2~3年ほど空港内のリテール現場で接客や運営の実務を経験する。 その経験は、サービス本質を理解するうえでも非常に重要だと考えている。
一方で、羽田未来総研では、入社4~5年目の若手社員が、新たな視点を得ながら挑戦できるよう、この場所を一つの実践のフィールドとして活用してもらっている。現場で培った経験をもとに、自由な発想で試行錯誤を重ね、自主性や創造力を伸ばしていけるよう、共に取り組む環境を整えている。
羽田という空間を活用し、新しい価値を生み出す――その歩みはまだ始まったばかりだが、一歩一歩の積み重ねが、これからの空港ビジネスの可能性を切り拓いていくと信じている。