
第一次産業が成長産業になるために
8/2(土)
2025年
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楠本 修二郎 2025/07/30
「農業を始めたい」「家業を継ぐ決心がついた」「店舗拡大ではなく、食の根源に向き合いたい」――私が発信を重ねていると、そんな声が届くようになりました。立場は違えど、日本の食の未来を本気で考える仲間が増えている。それを心から嬉しく思っています。
私の夢は一貫しています。それは、日本という国がもつ自然、歴史、風土、そしてそれらの集合体である「食」という文化を、未来への資産として活かすこと。そして、その価値は他国が模倣できない、唯一無二のものだと信じています。
地球儀を眺めてみてください。日本は、アジア大陸の東の端。黒潮という巨大なベルトコンベアによって、古くからアジア各地の文化が絶えず流れ着く場所でした。歴史的にも長く平和が続いたことで、異なる文化を排除することなく受け入れ、調和させ、独自に育んできた。こうした背景の中で、日本の食は「和をもって貴しとなす」精神のもと、昇華されてきました。この懐の深い精神性こそ、日本の食文化が持つ最大の強みなのです。
この精神性は、他のどの産業にも応用できるはずです。不動産、観光、モビリティ、金融…。あらゆる業界が「食」を軸にすれば、地域の価値が再発見され、新たな戦略のコアとなる。食を守ろうとする意識は、自ずと景観や自然、歴史を守ることにもつながります。
人口減少が進む日本において、この視点は未来への希望でもあります。現在、日本の食料自給率はカロリーベースで40%弱ですが、今世紀末には人口が5,000万人台になるという予測もあります。だとすれば、今の生産量を維持するだけで、食料自給率100%が視野に入ってくるのです。ましてや、ZEROCOの技術によって在庫を持つことができ、食品ロスがなくなれば、その実現可能性はさらに高まります。
もはや、経済成長率で世界一を目指す時代は終わったのかもしれません。しかし、他国にない文化や精神性を持ち、世界からリスペクトされる国になることは、できるはずです。そうすれば、100年、200年後の未来を生きる世代から、「素晴らしい日本を残してくれてありがとう」と感謝されるのではないでしょうか。
戦争という大きな悲劇を80年以上経験していない私たち。平和な時代に生きる私たちだからこそ、未来に残すべきものがあるはずです。若い世代の皆さん、私たちは同じ時代を生きています。共に、未来への遺産を残そうではありませんか。
私が残したいもの。それは、「和をもって貴しとなす」日本の精神性、そして、それによって育まれた多様な食文化です。インバウンドでは訪れる人々の心を打ち、アウトバウンドでは日本の味が世界へと羽ばたいていく。そうした循環が、やがて日本の食産業を根底から変えていく。そこまで成し遂げることができれば、これほど幸せなことはありません。
そんな未来を、私は本気で信じて行動していきます。