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2026

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    ラジオという、シンプルで不器用なメディアの未来図

    #27ラジオという、シンプルで不器用なメディアの未来図

    原石からダイヤへ

    言わなければ、相手には伝わりません。しかし、番組の現場では、出演者に対して「お願いします」と気を遣うばかりで、本当に言うべきことを言えていないケースが多いように感じます。

    もちろん、それでうまくいっているならいいのですが、作り手は同時に番組の最初のリスナーでもあるはずです。「作り手として、また一人のリスナーとして、今日の放送はどうだったか」「今日はこうだったから、明日はもっとこうしよう」。そうした議論を交わすべきだと私は思うのですが、実際には、そういう光景をあまり見かけません。

    多くの人は、出演者によく思われたい、良好な関係を保ちたい、と考えてしまうようです。仲良くなること自体は良いことですが、本当の信頼関係とは何でしょうか。

    昔はよく「本気で喧嘩してこそ仲良くなれる」と言われたものです。意見が合わない相手とは徹底的に議論し、それでもダメなら付き合わなければいい。私はそう教わってきたので、自分の思ったことは言うべきだと考えています。

    もちろん、伝える際は相手に失礼がないよう、プライドを傷つけない配慮は必要です。しかし、そうして意見を交わすことは、自分自身の成長にもつながります。なぜなら、意見を伝える側にも「この人に嫌われたらおしまいだ」という恐れを乗り越える「覚悟」が要るからです。もし嫌われるのが怖くて言えないのなら、それは仕方のないことですが、「ああ、この人はそういう人なのだな」と思うだけです。

    私が意見を伝えた時も、反応は様々でした。言われてもまったく響かないような人もいれば、きちんと耳を傾けてくれる人、「それはどういうこと?」と逆に質問を投げかけてくれる人もいました。

    結局、番組を作っているのは人間同士です。ましてやラジオは、テレビのような大掛かりな仕掛けはありません。だからこそ、喋り手と作り手が互いの「腹の中」をさらけ出し、真剣にぶつかり合うことでしか、良いものは生まれないのではないかと、私は思っています。

    この先、ラジオがどう生き残っていくのかは分かりません。インターネットが普及し、世の中は非常に効率的で便利になりました。人間の思考を超えるような表現も可能になった現代で、ラジオはどうあるべきか。

    私は、逆にその「シンプルさ」に活路があると思います。ラジオは人間の「肉声」で喋るしかないメディアです。シンプルであるがゆえに不器用かもしれない。しかし、そこに「何かを一生懸命に伝えようとしている」ぬくもりのようなものを感じさせることができる。

    『不器用さ』という表現は適切でないかもしれませんが、莫大な予算をかけて完璧に作り込まれたものではなくても、ふと耳にした時に、どこか心にストンと落ちるものがある。そういうメディアとして生き残っていくのではないでしょうか。

    活字がなくならないのと同じです。タブレットで便利に読む人もいれば、そもそも本を読まない人もいますが、紙の活字を求める人も必ずいます。それぞれに存在価値があるのです。

    ラジオも、最新鋭の技術を駆使するのではなく、もっとシンプルで、素朴で、人の肉声の温かみを大事にするもの。だからこそ、何もかも知っていて、誰もが納得するようなことを言う必要はない、ということです。

    「何でも知っています」という態度の人は、かえって不自然です。「いや、私は初めて聞きました」でいい。何か意見を求められたら、「そうなのですね。私はちょっと違う考えでして…」と、自分の考えを述べればいいのです。

    知らないことは知らないと言えばいい。それは恥ずかしいことではありません。パーソナリティは博識でなければならない、というプレッシャーがあるかもしれませんが、世の中のすべてを知っている人間などいるはずがありません。

    昨今話題のオープンAIについて聞かれても、私だって詳しくはわかりませんし、大半の人がそうではないでしょうか。別に専門家ではないのですから、わからなくて当然です。そのときは専門家に語ってもらい、「なるほど、分かったような気もしますが、まだ1割ぐらいしか理解できていません」と正直に言えばいい。

    「いやあ、よくわかりました」と安易に相づちを打つよりも、よほど誠実です。少し話を聞いただけですべてを理解できるはずがないのですから。結局、自分に正直にやるしかないのです。

    聴取者というのは、驚くほど敏感です。政治家であれ誰であれ、その人が話している言葉が、単に原稿を読んでいるだけなのか、誰かの受け売りなのか、それとも自分の腹から出た本当の言葉なのか。聞いている側には、それが分かってしまうものなのです。

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