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2025

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    「ラジオのデジタル放送化は国策の一つです!」

    #16「ラジオのデジタル放送化は国策の一つです!」

    原石からダイヤへ

    前回、総務省のYさんから「ラジオのデジタル化は、国土強靭化計画と結びつけて、二階俊博先生に相談すべきだ」というアドバイスをいただいた、というお話をしました。

    早速、私は二階先生の事務所を訪ねました。これまでの経緯を説明すると、先生は経験豊富な政治家らしく、じっくりと話を聞き、こちらの事情を深く汲み取ってくださいました。特に心強かったのは、開口一番、「私の地元は和歌山放送でね。ラジオが今大変なのはよく分かるよ」とおっしゃってくださったことです。

    そして、先生はこう続けました。「分かった、協力しよう。しかし、国会議員の半分以上は、デジタル化はテレビで終わったと思っている。だから、私が毎週開催している勉強会に来て、君がラジオの重要性を議員たちに直接話してくれないか。そうして少しずつ理解者を増やしていけばいい」。断る理由はなく、「分かりました」とお引き受けしました。

    こうして、私は自民党の朝の勉強会で、何十人もの国会議員を前に話すことになりました。当時、日本民間放送連盟の井上会長に同行していただくことになりましたが、「ラジオのことは君に任せるよ」と言われてしまいました。当日は、幸いにも顔見知りの議員も何人かいて、応援してくれたのが救いでした。

    私が事情をひと通り説明し終えた時、通信系出身だという新任の議員がすっと手を挙げ、こう言いました。「お話は分かりましたが、国の補助金というのは、これから発展する成長産業にこそ投じるべきです。そうでない産業に税金を投入するのは、国の資金運用として間違っていると思います」と。

    これには、私もカッと頭に血がのぼりました。「先生、お言葉を返すようで大変申し訳ありませんが、私たちは経営が苦しいから助けてくれ、と言っているのではありません。東日本大震災の時にも改めて示されたように、ラジオは有事における最後の情報ライフラインです。そのラジオをデジタル化するということは、国民の安全を守るための情報インフラを整備するということ。これはまさに国の仕事、国策ではありませんか。一企業の資金繰りのために金をくれと言っているのではないのです」。

    私がそう言い放つと、その議員は黙り込み、他の出席者からは「その通りだ」という声が上がりました。

    そんなやり取りを重ねた後、二階先生に改めてお願いに上がると、「分かった。ただ、俺はラジオのことはよく分からんからな。ラジオに詳しい佐藤勉という議員がいる。彼に任せてあるから、君は彼のところに行けばいい」とおっしゃいました。

    佐藤勉先生のことは、私もよく存じ上げていました。私が社長の頃、先生が副大臣でいらっしゃった時に、NHKも含めた各放送局の社長を集めた勉強会を主宰されていたのです。

    後日、佐藤先生のもとを訪ね、「二階先生のご紹介で参りました」と経緯をお話しすると、「分かった。ラジオのことはよく分かっているから任せなさい」と、力強くおっしゃってくださいました。その後、先生が各方面に働きかけ、奔走してくださったおかげで、ラジオのデジタル化に対する国の補助金が、ついに実現することになったのです。

     
    写真提供:内閣官房ホームページ
    https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kokudo_kyoujinka/pdf/kkf_h270316.pdf

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