真似ではなく根本を変える——次世代へつなぐ持続可...
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#16民間主導の街づくり——100カ国で築いた世界平和への民間外交
木村 清 2026/09/16
築地の窮地を救い、街に昔のような賑わいを取り戻すために生み出した「すしざんまい」にとどまらず、私は常に「自社の利益だけでなく、街全体、そして水産業界全体がどうすれば良くなるか」という大局的な視点を持って挑戦を続けてきました。
その大きな節目となったのが、築地から豊洲への市場移転に伴う新たな市場・まちづくり構想をめぐる試練でした。
かつて年間600万人から150万人へと来場者数が激減していた築地場外市場に、24時間営業・明朗会計の「すしざんまい本店」を構えることで、築地へ人波を呼び戻したことから、豊洲移転に際しても「街全体を盛り上げる新たな拠点を作ってほしい」という大きな期待が寄せられました。
そこで私は、単なる市場機能の移転にとどまらず、豊洲の地を「世界中の美味しいものや商品が一堂に集う、世界規模のマーケット・ショッピングモール」へと昇華させる壮大な構想を描きました。
この構想のために、私は自ら1級建築士の仲間とともに設計図を引き、多額の自費を投じて建設・運用のプランを練り上げました。その中には、地下に1万台規模の大型駐車場を整備して周辺の交通渋滞を解消する案や、地中深く(地下6〜10メートル)の温度が年間を通して15〜16度で一定であることに着目し、地中熱を利用して莫大なエネルギーを使わずに冷暖房を行う、画期的な「エコシステム建築」の導入が含まれていました。実はこの地中熱を活用した住宅構造は、私自身が開発して千葉で600戸の建売住宅として展開し、即完売した実績のある確かな技術だったのです。
しかし、利権や目先の思惑が複雑に絡み合う中で、官民のパートナーシップや調整には様々な紆余曲折と厳しい不条理が立ちはだかりました。共同で開発を進めるはずだった大手企業や行政の都合によって突如梯子(はしご)を外され、多大な身銭を切って描いた理想の設計プランが歪められてしまったことは、非常に悔しいことでした。
しかし、「街にお客様を呼び込み、地域と産業全体を繁栄させる」という私の根本的な志が揺らぐことはありませんでした。一部の私利私欲や過剰な外国人観光客目当ての熱狂に流されるのではなく、まずは地元や日本国内のお客様を大切に迎え入れ、その上で世界中の方々にも安心して楽しんでいただける「人に優しい店・街づくり」こそが、真の繁栄をもたらす商売の本質だと信じているからです。
そして、この「持続可能な発展」と「命・資源を大切にする」という姿勢は、私が長年取り組んできた海外でのビジネスや支援活動のすべてに一貫して通底しています。
たとえば、寿司ネタとして絶大な人気を誇る『エビ』についても同様です。業者の中には、目先の利益を優先し、狭い池に密集させて抗生物質や薬品を多用するような過密養殖法を行っているところもあります。しかし私は、一貫して自然に近い安全な環境での養殖を追求してきました。50年以上も前から自ら台湾へ渡り、ブラックタイガーや甘エビの持続可能な養殖技術を開発し、これをタイ、ベトナム、インドネシア、ミャンマーといった国々へ赴き、現地の人々に惜しみなく伝授し、何万トンもの安全でおいしい水産物を世界に供給できる雇用と産業の基盤を築いてきたのです。
魚を単に無計画に獲り尽くすのではなく、自然の資源を保護・回復させながら、持続可能な形で活用していく。そして現地に技術と産業を残し、人々が自立して豊かな暮らしを営めるように手助けする——。
こうした50年以上にわたる世界各地での地道な取り組みを評価いただき、スリランカ大統領、またジブチ大統領からは、ソマリアで海賊行為を繰り返していた漁師に魚の獲り方と加工の仕方などの技術を教えるとともに流通を整備して、立派な漁師へと転身させた実績と貢献を評価され、勲章を授与されました。さらに、2022年にはスペイン国王フェリペ6世から「エンコミエンダ章」を授与いただきました。そして今年1月には、モロッコ王国から「名誉領事」に委嘱されるなど、世界各国からご評価をいただいています。
お金や権力で人を従わせたり、誰かを騙して得た利益には、何の意味もありません。
「現地の人々が喜び、幸せになる仕事をしながら、正当な対価を得て、暮らしと自立を支えていく」
このシンプルな商売の真理を愚直に伝えることで、相手が誰であれ国境を越えて心から信頼し合える関係が生まれます。国家間の複雑な政治や外交のレベルだけにとどまらず、民間企業や一人の人間として積み重ねていく真摯な交流——。この食とビジネスを通じた「民間外交」こそが、私が生涯をかけて実践し続けたい「世界平和」への確かな道筋です。


