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歯医者はコンビニより多いのに、なぜ潰れない? 6万5,000院のサバイバル戦略
ビジョナリー編集部 2026/08/17
「歯医者って、コンビニより多いらしいよ」そんな話を一度は耳にしたことがあるかもしれません。
実際、2025年10月時点で全国の歯科診療所は約6万5,600施設。コンビニ大手7チェーンの店舗数を大きく上回る規模です。これだけ身近な場所に歯科医院があるのに、なぜこれほど多くの医院が存在し続けられるのでしょうか。
実は、「歯医者は潰れにくい」というわけではありません。2025年には歯科医院の休廃業・解散が147件に達し、過去最多を更新。倒産も発生しており、歯科業界では静かな淘汰が進んでいます。
それでも多くの医院が地域に残り続けている背景には、患者のニーズの変化と、それぞれの医院が「選ばれる理由」をつくるためのさまざまな工夫があります。
「歯医者ならどこでも同じ」ではない
「歯科医院」と掲げてあるからと言って、その利用目的は各医院によって違います。
「子どもを安心して通わせたい」
「できるだけ自分の歯を残したい」
「歯並びを相談したい」
「歯周病をしっかり管理したい」
「定期的にクリーニングを受けたい」
「見た目もきれいにしたい」
患者によって、求めるものは大きく異なります。つまり、すべての医院が同じ患者を奪い合っているわけではありません。診療内容や得意分野、患者層などに合わせて、それぞれが異なるポジションを取れることが、歯科業界が単純な価格競争になりにくい理由の一つです。
さらに近年は、歯科医院の役割そのものも変化しています。かつては「歯が痛くなったら行く場所」というイメージが強かった歯科医院ですが、現在では予防やメインテナンスを目的に定期的に通う人も増えています。
厚生労働省の2024年歯科疾患実態調査では、過去1年間に歯科健診を受けた人の割合は63.8%。2022年の58.0%から上昇しています。「治療する場所」から「健康な状態を維持する場所」へ。この変化も、歯科医院が患者との長期的な関係を築くうえで重要になっています。
「また来たい」と思わせる患者体験
歯科医院には、「痛い」「怖い」「できれば行きたくない」というイメージがつきまといます。だからこそ、治療技術だけでなく、患者が安心して通える環境づくりに力を入れる医院もあります。たとえば、
- カフェのような落ち着いた待合室
- 完全個室・半個室の診療スペース
- キッズスペース
- 子どもが安心できる診療環境
- 治療前の丁寧なカウンセリング
- レントゲンや口腔内写真をモニターで見せながらの説明
などです。
特に歯科治療では、「自分が何をされているのか分からない」という不安を感じる患者も少なくありません。そこで検査画像や口腔内の状態を見せながら説明し、患者自身が治療内容を理解できるようにする。こうした「分かりやすさ」や「安心感」も、医院を選ぶ際のポイントになっています。
口腔内スキャナーなどのデジタル技術や診療支援システムの導入も進んでおり、歯科医院にとっては、治療そのものだけでなく「どう伝えるか」まで含めた患者体験が差別化の一つになっています。
生き残る歯科医院に共通する4つの戦略
では、競争が激しいなかでも選ばれ続ける歯科医院には、どのような特徴があるのでしょうか。
①「子どもと家族」で安心して通える
小児歯科に力を入れる医院では、虫歯の治療だけでなく、歯並びや口腔機能、歯磨きの習慣など、子どもの成長に合わせたケアを提供するケースがあります。キッズスペースを設けたり、子どもへの声かけや診療方法を工夫したりすることで、「歯医者は怖い」というイメージを和らげることもできます。
そして、このスタイルにはもう一つの強みがあります。子どものために来院した親が、そのまま自分自身の定期検診やクリーニングを受けるようになるケースです。さらに兄弟姉妹も通院するようになれば、一つの家庭から複数の患者が生まれます。
つまり、「子どもを入口に、家族全体のかかりつけになる」という戦略です。
②「予防・メインテナンス」で継続的に通ってもらう
もう一つ重要なのが、予防・メインテナンスです。虫歯や歯周病になってから治療するのではなく、定期的な検診やクリーニングによって、健康な状態を維持してもらう。 このスタイルでは、一度治療して終わりではなく、定期的に来院してもらうことが重要になります。
そのため、歯科医師だけでなく、歯科衛生士が中心となって歯周病の管理やブラッシング指導、メインテナンスを行う医院もあります。「痛くなったら行く場所」から、「健康を維持するために定期的に行く場所」へ。患者との長期的な関係を築けることは、医院にとっても大きな意味を持ちます。
③「ここなら任せられる」という専門性をつくる
患者にとって、歯科医院はどこでも同じではありません。たとえば、
- 根管治療などの精密治療
- マイクロスコープを活用した治療
- 小児歯科
- 矯正歯科
- 審美歯科
- インプラント
- 睡眠時無呼吸症候群に関連する治療
など、特定の分野に強みを持つ医院があります。
「家から一番近いから」ではなく、「この治療なら、この医院に相談したい」と思ってもらえれば、価格や距離だけでは比較されにくくなります。歯科医院が多いからこそ、「何でも診ます」だけではなく、「この分野なら強い」という専門性が武器になるのです。
④「通いやすさ」そのものをサービスにする
そして、もう一つ見逃せないのが患者の「通いやすさ」です。予約の取りやすさ、待ち時間、スタッフの対応、説明の分かりやすさ、院内の清潔感、子ども連れへの配慮など。医療機関である以上、治療の質が重要なのは当然です。
しかし、患者が実際に医院を選ぶときには、「無理なく通い続けられるかどうか」も重要になります。だからこそ、治療技術だけでなく、予約・説明・院内環境・デジタル技術などを含めて、医院全体の「患者体験」を整えることが、選ばれるためのポイントになっているのです。
まとめ――あなたに合った歯医者を見つけてみよう
歯科医院は、決して「潰れない業界」ではありません。競争やコスト上昇、後継者問題などを背景に、業界では静かな淘汰も進んでいます。
一方で、子どもや家族に強い医院、予防・メインテナンスを重視する医院、特定の治療に特化した医院など、それぞれが異なる強みを打ち出しながら患者に選ばれています。
歯医者が多いからこそ、選択肢も豊富。「子どもを安心して通わせたい」「定期的にメインテナンスを受けたい」「専門的な治療を相談したい」など、目的に合わせて、ぜひ自分に合った「お気に入りの歯医者」を見つけてみてくださいね。


