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THE CIO LOUNGE 第1回――世界のトップ20にも入れない。日本のDXはなぜ遅れているのか?
ビジョナリー編集部 2026/02/13
FM大阪でスタートしたラジオ番組『The CIO Lounge』。日本企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を牽引する関連企業の代表者と、IT導入を担うCIO(Chief Information Officer: 最高情報責任者)が対話を繰り広げ、日本企業のDXを“意思決定者の言葉”で深掘りするビジネスプログラムだ。パーソナリティーはFM大阪DJの珠久美穂子(しゅく みほこ)氏。
初回・第2回のゲストには、番組コメンテーターを務める『特定非営利活動法人 CIO Lounge』矢島孝應(やじま たかお)理事長と加藤恭滋(かとう きょうじ)副理事長が登場。豊富な経験を持つCIOたちを束ね、企業とベンダーをつなぐ同法人の歩み、そしてDX推進の遅れが指摘される日本社会への危機感について存分に語った。まずは1月3日(土)にオンエアされた第1回の様子を紹介する。
そろばんからSaaSへ――情報システムのエキスパートが語る会計システムの進化
珠久: 1月3日にスタートしました『The CIO Lounge』。CIO(Chief Information Officer)とは、ITを活用して経営戦略を立案・実行し、業務効率化や競争力向上を担う経営陣の一員です。そして番組を共に進める特定非営利活動法人CIO Loungeは、豊富な経験を持つCIOたちが集まり、企業とベンダーの橋渡しを行うNPO団体。この番組では企業やベンダーの方々をゲストに迎え、DXをどう進めるかを共に考えていきます。
第1回と第2回は、CIO Lounge理事長の矢島孝應さんと、副理事長の加藤恭滋さんと一緒に進めていきます。矢島理事長は松下電気産業、三洋電気、ヤンマーで情報システム責任者を歴任。加藤副理事長は大和ハウス工業で会計システム開発に従事し、情報システム部長を務めました。会計システム開発とは、どんなことをするのでしょうか?
加藤: かつてはそろばんを使って計算し、手書きでやっていた会計処理を、コンピューターを介した情報システムで行えるようにしようというものです。私は経理部に入社し、三度の会計システムの構築導入に従事しました。最初は昭和58年に構築したオフィスコンピュータによる会計システムの全国展開プロジェクトに従事しました。2番目には2000年問題(2000年への切り替え時にコンピューターがシステム停止や誤作動を起こす可能性があった問題)に対応するためにクライアントサーバー型という新しいシステムの導入を行いました。クライアント(パソコン)の方にプログラムを配布して、そこから吸い上げられたデータを本社に集中して保持するというものです。
珠久: 今では普及し、当たり前のシステムになりましたね。
加藤: 今ではプログラムすら送らず、ウェブの世界になっています。本社にあるウェブサーバーのプログラムを使うか、もしくはSaaS(クラウド型業務システム)といわれるサービスを利用するようになっています。SaaSに接続すると、そのまま業者さんが提供している仕組みにアクセスして仕事ができるように変わっています。
クライアントサーバーシステムも長く使っていると複雑化し、また管理要員が保持できないなど多くの問題を抱えることとなりました。そこで三度目の挑戦になりますが、統合型基幹システムいわゆるERPの導入に携わりました。まず国内外のERPシステムを評価する役割を担いSAP社のERPを導入することを取締役会に提議し承認されました。そうしたら「だったら君が作れよ」と考えられたのか、情報支援部長に任命され構築の責任を持つことになりました。
CIO Loungeには、私を含めいろいろな経験を人たちが集まっているのです。
大阪発、経営とITをつなぐ架け橋 ―― CIO Loungeの設立
珠久: CIO Loungeについての設立のきっかけとは何だったのですか?
矢島: 現役の時代はITの勉強や情報交換の場、経産省の主催の会合などはほとんど東京で行われており、私たち大阪の企業は東京へ行かざるを得ませんでした。そこで大阪のメンバーでまず議論できる場を作り、ベンダーとユーザー企業の架け橋、さらに企業の中での経営とデジタルITの架け橋になる活動をしようと話していました。日本はデジタル化に遅れていますが、なんとかこれを自分たちの子供、孫の時代に取り返すため、少しでも私たちでお役立ちができればという気持ちで、加藤さんとお話ししたのが7、8年前でしょうか。今や本当に多くの方々にご賛同・ご参加いただいています。ありがたい話です。
珠久: 今メンバーはどれぐらいいらっしゃるのでしょうか。
加藤: 正会員と経営アドバイザーで91名です。
矢島: この組織の設立にあたっては、「矢島さん、その考え方素晴らしいと思うよ。だけど活動しようと思うと、お金がいるんでしょう」と散々、周りからは言われました。私は松下幸之助さんの考え方で、『いい仕事したら、お金は後からでもついてくる、社会に貢献すれば利益も出る』ということをずっと教えられてきたのでまず手弁当でもやっていこうということで進めていきました。ありがたいことに141社のパートナー企業にも恵まれ、活動させていただけています。

「世界トップ20にも入れない」日本のデジタルベースの厳しすぎる現実
珠久: 矢島さんに伺いたいです。去年2025年を振り返って、政治、経済、社会情勢いろんな動きがありましたが、印象的だったことは何でしょう。
矢島: いわゆる「PEST」と呼ばれる、政治(Politics)・経済(Economics)・社会(Society)・技術(Technology)という4つの視点から外部環境を分析するフレームワークがありますが、そのすべてが大きく揺れ動いた年だった、というのが私の印象です。昨年はアメリカでトランプ大統領が就任され、日本でも初の女性首相として高市早苗首相が就任するなど政治がガラッと変わりながら、経済では株も金も上がり調子です。そして技術では、生成AIがどんどん世に出てきました。私自身も3年ほど前に講演などで「2030年ぐらいにはAIは世の中に台頭しますよ」と言っていたんですが、5年早かったですね。
珠久: こんなにもスピード早く! じゃあ、今年はもっと加速するということでしょうか?
矢島: するんじゃないでしょうか。テクノロジーがどんどん進化していく中で、企業経営が追随できていないのでは、テクノロジーをしっかり理解した上で進めていく企業との差がどんどん開き、格差ができていきます。社会や国でも同じですね。これが一番の懸念事項だと思います。
珠久: 日本は世界に比べてまだまだ遅いと?
矢島: かなり遅れていますね。この分野で2024年には世界の31位です。アメリカはもちろん、韓国、ベトナム、インドネシアよりも下になっています。野球の世界大会であるWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)は20カ国しか出られないんですよね。ということは、この状況をWBCに例えるなら、日本は出場すらできないということになる。
珠久: ほんまや!
矢島: そう、それが今のデジタルベースでの日本の現実ですね。
AIの加速と広がるリスク
珠久: 世界との差が広がっているということですね。加藤さんにも伺いたいと思います。ITテクノロジー関連で今注目していることはございますか。
加藤: やはりAIですよね。今般の生成AIだとかAIエージェントだとか、より良いAIを使って高度に業務を進めるのが当たり前になってきているわけですね。過去、AIがチェスや囲碁で人間のプレーヤーに勝つなどの話があり、ワトソン(IBMが開発した質問応答・意思決定支援システム)やペッパーくん(ソフトバンクが開発した感情を認識する世界初の人型パーソナルロボット)などの機械学習をベースにしたAIが世に出ました。
その後幻滅期が訪れ、世の中であまりAIのことが語られなくなったのですが、今度こそは、間違いなくAIが社会に浸透する流れが来るだろうと思います。一番いいのは、人が減って働き手がいなくなる日本の環境の中で、その穴埋めのためにAIを使っていくということです。人でなくてもできることはAIに任せて生産性や品質を向上しなければ日本は生き残れないと思うんです。ただ、ITデジタル経営でのリスクも広がっていることも考えなければなりません。
珠久: 何かやりたい、挑戦したい。けれど、リスクのことを聞くと足踏みしてしまう。
矢島: そうそう。皆さん、そっちで足踏みしちゃう。先日、AIに私のフェイク動画をちょっと作ってもらったんです。日本語、英語、スペイン語で1分ぐらい喋らせたんですが、家内に見せたら、「こんなのが出てきたら私は信じる」っていうほどの出来でした。
加藤: 私も見せていただいたのですが、まさしく矢島さんでしたね。(フェイク動画だと)分からなかったです。
珠久: ありがとうございました。今日第1回とは思えないくらい、かなり内容の濃いオンエアだったと思います。来週はCIO Loungeの組織や会員について、もう少し掘り下げた内容でお届けしたいと思っています。

<番組情報>
番組名:「The CIO Lounge」
放送日時:毎週⼟曜⽇ 7:00〜7:25
初回放送日:2026年1月3日(土) 7:00〜7:25
放送局:FM大阪
パーソナリティー:珠久 美穂子(FM大阪DJ)
ゲスト:矢島 孝應(特定非営利活動法人 CIO LOUNGE理事長)
元ヤンマー株式会社取締役CIO。パナソニック、三洋電機、ヤンマー3社で情報システム責任者を経験。現在理事長を務めながら、数社の社外取締役や顧問等の立場で活動。趣味はゴルフとワイン。
加藤 恭滋(特定非営利活動法人 CIO LOUNGE副理事長)
元大和ハウス工業株式会社上席執行役員・情報システム部長。経理部門に配属され、3度の会計システム開発に従事。2010年から情報システム部長(2021年3月定年)。趣味はゴルフと読書。


