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2026

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    通信制高校の生徒数が過去最高に──今、なぜ「通信制」を選ぶ生徒が増えているのか?

    通信制高校の生徒数が過去最高に──今、なぜ「通信制」を選ぶ生徒が増えているのか?

    「高校生の10人に1人が通信制高校」。この数字を聞いて、驚かれる方も多いのではないでしょうか。通信制高校といえば少数派であり、特別な選択肢という印象が以前はありました。しかし、今やそのイメージは大きく変わりつつあります。2025年度、通信制高校に通う生徒は全国で30万人を超え、さらに増加が続いています。いったい何が、これほどの変化を生み出しているのでしょうか。

    急増する通信制高校の生徒数、その背景にある“社会の変化”

    通信制高校の生徒数は、過去10年で約1.7倍にまで増えています。少子化の波を受けて全日制や定時制高校の生徒が減少する中、通信制高校の生徒数だけが増え続けているのは、現代の教育や社会の在り方の変化を象徴していると言えるでしょう。

    この背景には、「いつでも、どこでも、だれでも」学べるという通信制高校ならではの柔軟性があります。1つ例をあげるなら、全日制高校のように毎日決まった時間に登校する必要はありません。通学頻度や学習スタイルを自分で選べるため、スポーツや芸能活動と両立したい生徒、病気や心身の事情で毎日通うことが難しい生徒、不登校を経験した生徒など、多様なバックグラウンドを持つ若者が「自分に合った学び方」を実現できる場となっています。

    このような「型にはまらない学び」を実現する場所として通信制高校の存在感が高まっているのです。

    通信制高校の仕組みと全日制・定時制との違い

    通信制高校の最大の特徴は、「単位制」と「通信教育」にあります。全日制や定時制では、平日日中や夜間に決められた時間割に従って登校し、クラス単位で授業を受けるのが一般的です。しかし通信制高校の場合、学習の中心は自宅で行うレポート作成やオンライン授業、映像教材の視聴です。

    もちろん、全く学校に通わなくても良いわけではありません。卒業するためには「スクーリング」と呼ばれる登校日が必要で、月に数回の登校から、数日の合宿形式まで、学校やコースによって多様な形態が用意されています。スクーリングでは、普段の自学自習でわからなかった点を先生に直接質問したり、実験や体育など体験型の授業を受けたりすることができます。

    また、通信制高校は、必要な単位を3年以上の在籍期間で修得できれば卒業が可能です。中には自分のペースで10年以上かけて卒業する人もいれば、最短で3年で卒業する人もいます。進学や就職支援も充実し、卒業後の進路選択の幅が広がっている点も、近年の通信制高校の大きな強みです。

    「通信制=ネガティブ」のイメージが変わった理由

    通信制高校のイメージ変化に大きく貢献したのは、インターネットを活用した新しい教育スタイルの登場です。たとえば、2016年に開校した通信制高校の「N高等学校」は、オンライン学習と多彩な課外プログラムを組み合わせた先進的な取り組みで一気に注目を集めました。学園祭を動画配信で楽しんだり、プログラミングや投資など実社会で役立つスキルを学べたりすることで、「自分の未来のために選ぶ積極的な進路」としての通信制高校の新たな魅力を打ち出したのです。

    また、通信制高校の中には、発達障害や不登校経験のある生徒への個別対応に力を入れる学校も増えています。サポート校と連携してメンタル面や生活面のケアまできめ細やかにフォローしたりと、「生徒の多様性」に応える体制が整いつつあります。このような変化は、保護者の意識にも影響を与えました。「みんなと同じではなく、子どもの個性や特性に合った学校を選ぶ」という価値観が広まりつつある今、通信制高校はまさに時代が求める選択肢になっているのです。

    不登校・転校・多様なニーズの受け皿として

    通信制高校を選ぶ生徒の中には、不登校や人間関係の悩み、高校中退など「従来型の学校生活が難しかった」経験を持っている人もいます。

    もちろん、通信制高校は「やむを得ない選択肢」ではありません。現役の芸能人やアスリート、すでに社会人として働きながら高校卒業資格を目指す大人など、学びの目的やライフスタイルは多様です。最近では、全日制高校をあえて選ばず、最初から通信制高校を第一希望にする中学生も増えてきています。

    また、コロナ禍を経て「学校に通わずに学ぶ」という経験をした生徒が、自分に合った学び方として通信制高校を選ぶケースも増えました。自分自身のリズムや目標に合わせて学びをデザインできる自由さは、これからの時代にますます求められる価値観と言えるでしょう。

    通信制高校の課題──“自由”の影にあるもの

    自由度が高く、多様な生徒が集まる通信制高校。しかし、課題がないわけではありません。最も大きな課題は「自己管理能力」が強く求められる点です。自学自習が中心となるため、目標を失ったり、学習のペースが崩れたりすると、卒業までに時間がかかってしまうことも珍しくありません。また、学校によっては進路指導や個別サポートが十分に行き届かず、卒業後の進路が決まらない生徒が全日制よりも多いという指摘もあります。また、私立の通信制高校ではサポート体制が手厚い反面、学費が高くなるケースもあり、追加の課外活動やサポート校利用で費用が膨らむこともあります。保護者や生徒が「何が学費に含まれているのか」「どんなサポートが受けられるのか」をしっかり確認することが重要です。

    一方、こうした課題に対応するため、通信制高校では進学やキャリア支援に力を入れる学校が増えています。カウンセラーや専門スタッフが常駐し、卒業後の進路設計を一緒に考えていく仕組みも築かれています。

    “通信制高校が時代を変える”──教育の新たなフロンティアへ

    従来の全日制高校は「同じ制服、同じ授業、同じ時間割」という教育スタイルが中心でした。しかし、現代は多様性が重視される“情報社会”へと移行し、学び方も大きく変わり始めています。通信制高校は、この新時代の変革を象徴する存在と言えるでしょう。

    全日制高校の中にも通信制の仕組みを取り入れる動きが出始めています。たとえば、オンライン授業や通信制との連携により、出席日数にこだわらず単位取得を可能にする学校が登場しているのです。今後は、全日制と通信制の垣根がより一層低くなり、「自分に合った学び」を選べる時代になっていくでしょう。

    保護者・社会ができること──多様な学びを認める視点

    「学校に行かなくてもいい」「通信制でも大丈夫」。そう言われても、いざわが子が学校に行かなくなると、親はどうしても不安を感じてしまうものです。しかし、学びの形は一つではありません。大切なのは、子どもが「学び」や「成長」を続けられる環境を整えることです。好きなことや興味関心を一緒に見つけ、サポートしてあげることが、結果的に本人の可能性を広げることにつながります。

    そして、社会全体が「通信制高校=特別な場所」という古いイメージを手放し、「今はこのような選択肢もあるんだ」とフラットに受け止める目線を持つことが、子どもたちが自分に合った学びを選びやすい社会をつくる第一歩です。

    新しい“学び”の時代へ──通信制高校が切り開く未来

    通信制高校の生徒数が増え続けている今、その存在はもはや「特別な場所」ではなく、「新しい学びの基盤」になりつつあります。多様な生き方・学び方が認められる社会へ──通信制高校は、まさにその最前線を走っています。

    自分のペースで学びたい人、夢や目標に向かって努力したい人、これまでの学校生活でうまくいかなかった人。どんな人にも「もう一度やり直せる」「自分に合った道を歩める」チャンスがある。それこそが、今の通信制高校が持つ最大の魅力であり、これからの教育の新しい可能性なのです。

    #通信制高校#高校生#教育改革#多様な学び#新しい学び方#オンライン教育#進路相談#高校卒業#キャリア教育#進学支援

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