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水痘に注意 ワクチンをすり抜けるブレイクスルー水痘とは
ビジョナリー編集部 2026/02/10
近年「ワクチンをきちんと打っていても水痘にかかる子どもがいる」という「ブレイクスルー水痘」への注意が呼びかけられています。ワクチンの普及で水痘の患者数は減少したはずなのに、なぜ再び水痘への注意が必要なのか、本稿で深掘りしていきます。
なぜ水痘が再び話題に?
2026年、神奈川県や北海道などで水痘の流行注意報が相次いで発令されました。「みずぼうそう」と言えば、毎年多くの子どもがかかる感染症でしたが、2014年に定期予防接種が始まってから患者数は減少しています。特に生後12か月から36か月の間に2回のワクチン接種が推奨されるようになり、重症例や合併症の報告も大幅に減少しました。
しかし、ここにきてワクチンを接種済みの子どもたちの間で水痘が報告されているのです。その多くは軽症で、発熱もほとんどなく、発疹も数個程度と少ないため、「虫刺されかな?」と見過ごされてしまうケースも珍しくありません。けれども、こうした「軽い水痘」にも油断は禁物です。ワクチンをすり抜けて発症する水痘、いわゆる「ブレイクスルー水痘」でも、ウイルス自体の感染力は失われていません。
「ブレイクスルー水痘」とは何か?
水痘は、感染後10日から21日間の潜伏期間を経て、38℃前後の発熱とともに全身に赤い発疹が現れます。発疹は数日かけて新しいものが次々と現れ、紅斑、丘疹、水疱、痂皮と変化していきます。すべての発疹が痂皮になるまでに6日ほどかかり、その間は強い感染力を持ち続けています。※1
「ブレイクスルー」という言葉は、ワクチン接種後にもかかわらず発症してしまう状況を意味します。水痘の場合、2回のワクチン接種で重症化をほぼ完全に予防できる一方、100%感染そのものを防げるわけではありません。特に接種後42日以上経過した後に発症する水痘は「ブレイクスルー水痘」と呼ばれ、その特徴は発疹の数が少なく、発熱もほとんど伴わない点です。※2
2015年から2019年にかけて、5歳から9歳の子どもたちの水痘報告数は横ばいで推移しており、ワクチンを2回接種した世代でも水痘がゼロにはなっていません。これは、ワクチンの効果が時間の経過とともに徐々に弱まることや、免疫が不十分な場合があることなどが影響していると考えられています。
「軽症だから大丈夫」ではない理由
ブレイクスルー水痘の厄介な点は、本人が軽症でも他者への感染力を十分に持ち続けていることです。発疹が少ないからといって油断すると、身近な人、とくにワクチン未接種の小さな子どもや妊婦、免疫機能が低下している方にウイルスをうつしてしまうリスクがあります。しかも、水痘ウイルスは空気感染や飛沫感染、接触感染と、非常に多様な経路で広がります。※2
また、水痘のウイルスは一度感染した後も体内に潜伏し、何年も経ってから「帯状疱疹」として再発することも知られています。特に成人や高齢者が水痘にかかると、重症化しやすく、肺炎や脳炎などのリスクも高まります。※1
「みずぼうそう」は昔の病気ではない
ワクチン接種の徹底により水痘の流行は過去のものとなったように見えます。しかし、実際には「2回打ったのに感染」「症状が軽くて気づきにくい」という新たな課題が浮上しています。流行期には、たとえ軽い発疹でも水痘を疑い、自治体や医療機関の情報も集めることをおすすめします。
たとえば、ある小学校で実際に起きたケースでは、2回接種済みの児童が「虫刺されのような赤い斑点」を訴えたにもかかわらず、家族も本人も大きな体調変化を感じなかったため、そのまま登校を続けてしまいました。後日、複数のクラスメートにも同様の発疹が確認され、最終的に学校内で流行が発生したのです。
予防と対策、今できること
水痘ワクチンの2回接種は、感染を完全に防ぐものではありませんが、重症化を防ぎ、症状を軽くするうえで有効とされています。母子手帳などで接種歴を確認し、未接種の場合は医療機関に相談しましょう。また、流行地域では「水疱」や「虫刺されに似た発疹」を見つけたら、念のため登園・登校を控え、受診前に医療機関へ電話で状況を伝えてください。これは、他の患者さんや医療従事者への二次感染を防ぐためにも非常に重要です。
特に注意が必要なのは、家族や身近に妊婦や免疫不全の方がいる場合です。水痘は、これらの方々にとって重症化しやすい感染症であり、感染の疑いがある場合はワクチンの緊急接種や、状況によっては免疫グロブリンや抗ウイルス薬の投与が検討されることもあります。自己判断で済ませず、早めに医療機関の指示を仰いでください。※2
ワクチンの効果と課題
水痘ワクチンは、1回の接種でほぼ100%の重症化予防効果が認められ、2回接種でさらに発症自体を大きく減らせると考えられています。実際、ワクチン導入後の水痘による入院や死亡例は激減しています。一方で、個人差や免疫低下、時間の経過などにより、完全な感染防御は難しいという現実もあります。
加えて、ワクチンにはごく稀に副反応が起きることも報告されています。発熱や発疹、まれにアナフィラキシー反応や血小板減少性紫斑病などの重大な副作用もゼロではありません。しかし、重症の水痘による合併症や後遺症のリスクを考慮すれば、ワクチン接種のメリットは圧倒的に大きいといえるでしょう。※3
終わりに
私たちはしばしば「ワクチンで防げる病気」に対して安心しきってしまいがちです。しかし、医療の進歩とともに、感染症との闘いもまた新たな局面を迎えています。ワクチンとともに、「正しい知識」と「変化への気付き」を持つことが、これからの時代の感染症対策に欠かせません。
「水ぼうそうなんて昔の話」と油断せず、この機会に家庭や職場、地域で水痘について改めて考えてみてはいかがでしょうか。あなたの小さな気付きが、大きな安心につながる一歩になるはずです。
参考文献
※1:https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/chickenpox/
※2:https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/0086429286fe315c806219756c5648cc56455b8a
※3:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/yobou-sesshu/vaccine/chickenpox/index.html


