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くまモンの誕生秘話から熊本の野生グマ事情まで――“熊”にまつわる熊本の真実
ビジョナリー編集部 2025/11/20
全国で熊による被害が相次いでいます。これまで目撃例がほとんどなかった地域でも熊が出没し、各地で警戒が強まっています。自治体も連日注意を呼びかけるほど、状況は深刻さを増しています。
その一方で、「熊が出没しない安全な地域」として注目されているのが九州です。では、なぜ九州では熊の目撃がほとんどないのでしょうか。
また、その背景があるにもかかわらず、熊本県ではなぜ“くまモン”がご当地キャラクターとして全国的人気を誇っているのか。
今回の記事では、九州に熊がいない理由を掘り下げるとともに、その謎を紐解く過程で見えてきた“全国でも珍しい熊のテーマパーク”の存在についてもご紹介します。
熊本に野生の熊はいない
近年、日本の各地で熊の目撃や被害が相次ぐ一方、熊本を含む九州ではそのようなニュースをほとんど耳にすることがありません。なぜ九州だけが“熊のいない地域”なのでしょうか。
九州のクマは絶滅種
実は、かつて九州にもツキノワグマが生息していました。しかし、江戸時代末期の段階ですでに個体数は大きく減少しており、森林伐採や狩猟の影響によって生息環境が急速に失われていきました。昭和初期には一部の山岳地域にわずかに残るのみとなり、1941年の記録を最後に野生のクマの痕跡は確認されていません。
そして1989年、九州のツキノワグマ固有の個体群は正式に絶滅と認定されました。
その背景には、次のような複合的な要因があります。
- 森林資源の変化:主食であるドングリやブナが、人工林化によって大きく減少した。
- 生息環境の破壊:山林の分断や開発が進み、クマが移動できる範囲そのものが縮小した。
九州に熊がいない理由は、自然環境の変化と人間活動の歴史が深く関わっているのです。
くまモン誕生秘話
野生の熊が絶滅した九州で、なぜ“熊”が県のシンボルになったのか。その答えが、2010年に生まれたキャラクター「くまモン」です。
誕生のきっかけは、九州新幹線全線開通を盛り上げるための「くまもとサプライズ」キャンペーン。当初はキャラクターを作る予定すらなく、企画書の最後に“おまけ”として描かれていた存在にすぎませんでした。
しかしその後、かわいらしいビジュアルと圧倒的な親しみやすさで人気が爆発し、いまや関連売上は累計1.5兆円を超える“熊本の顔”へと成長しました。
「くまモン」の“モン”は、熊本弁で“熊本の人”を意味する「熊本者(くまもともん)」が由来。黒いボディは熊本城の黒漆、赤いほっぺは「火の国」熊本の情熱や、トマト・スイカなど特産品の赤をイメージしてデザインされています。
くまモンの経済効果
デビューから15年たった現在も、くまモンの人気は衰えるどころか勢いを増し続けています。
- 累計関連売上:約1兆4,596億円(2023年時点)
- 2023年単年売上:過去最高の1,664億円
ここまでの経済効果を生む最大の理由は、くまモンならではの“開かれた戦略”にあります。
イラスト使用料を無料化する大胆な戦略
熊本県産品や県のPRにつながる用途であれば、くまモンのイラスト使用料は無料。これにより、全国のスーパー・コンビニの商品パッケージにくまモンがあふれるようになり、「くまモンを使いたいから熊本県産の原料を採用する」という逆転現象まで生まれました。
一方で、ブランド価値を守るための審査は厳格です。たとえパッケージにくまモンを載せても、商品そのものを“推奨”することはせず、あくまでも「熊本県産の原材料が使われていること」をPRするという姿勢を貫いています。
海外でも愛される“グローバルくまモン”
台湾や香港では認知度が7割に達し、熊本県の事実上のグローバルアンバサダーとして活躍。偽物対策として海外での商標利用は有料化するなど、知財管理にも本格的に乗り出しています。
くまモンランド化構想
くまモンは単なるマスコットではなく、熊本県の観光・経済戦略の中心にもなりつつあります。
「くまモンランド化構想」は、くまモンのブランド力を軸に、熊本全体を“体験型コンテンツ”として磨き上げていくプロジェクトです。
例えば──
- くまモンルームを備えた宿泊施設
- くまモンデザインのレンタカー
- くまモンをテーマにした体験型観光プログラム
訪れる人が“くまモンの世界観”に浸りながら熊本を楽しめるよう、県内外でさまざまな取り組みが進行中です。
国内でも珍しい“熊のテーマパーク”
九州には野生の熊がいない一方で、熊本県には“本物のクマに会える場所”が存在します。
それが、全国的にも珍しい熊の飼育施設を持つ阿蘇カドリー・ドミニオンです。
阿蘇カドリー・ドミニオンとは
阿蘇の雄大な自然に囲まれたこの動物テーマパークは、クマを中心に多くの動物たちと触れ合える人気スポット。中でも名物エリア「ベアバレー」には、ニホンツキノワグマやエゾヒグマなど、約130頭ものクマが暮らしており、その規模は国内でも屈指です。
阿蘇カドリー・ドミニオンで楽しめる体験
訪れた人が“クマの世界”を存分に体感できるよう、さまざまな体験型コンテンツが用意されています。
- 子グマの抱っこ体験(時期・条件により限定開催)
- 個性あふれる“おねだりポーズ”を楽しめるクマのおやつやり体験
- クマの生活や野生での習性を学べる 「くまの洞窟」
- 大迫力のクマたちを上空から見下ろせる 「ガラスの橋」
園内には、全長3メートル級の巨大ヒグマのモニュメントもあり、記念撮影スポットとして大人気です。
まとめ
九州・熊本に野生のクマがいないのは、かつて生息していたツキノワグマが環境変化や狩猟の影響で絶滅したことによります。
その一方で、熊本では九州新幹線のPRから生まれた「くまモン」が県の象徴となり、全国的な人気を獲得しました。
さらに、阿蘇には国内でも珍しい熊のテーマパーク「阿蘇カドリー・ドミニオン」があり、飼育されたクマと触れ合える環境も整っています。
熊がいない土地でありながら、キャラクターや観光施設を通じて“熊”が深く根付いていることが、熊本のユニークな特徴と言えるでしょう。


