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この感動を逃すな――受け継がれる三大花火の物語
ビジョナリー編集部 2025/07/11
夏の風物詩として多くの人に親しまれる花火大会。しかし近年、日本三大花火大会のひとつとして名高い「長岡まつり大花火大会」が、増加する来場者数や観覧マナーの悪化により、市民が自由に見られない/運営団体が「無料席はありません」といった広告を打ち出し間接的に規制をかけるなど、かつてない事態が話題となっています。
SNSでは「地元の人が見られないなんて本末転倒」「静かに楽しみたい」という声も多く聞かれました。
こうした状況を見ると、このような長年続く伝統を、なんとか守り続けたいという思いが募ります。
では、そもそも「日本三大花火大会」とは、いつからどのように始まり、なぜこれほど多くの人を惹きつけるのでしょうか?
そもそも「日本三大花火大会」とは?
まず押さえておきたいのが、どの花火大会が「三大」に数えられているのかという点です。広く認識されているのは、以下の3つの大会です。
- 秋田県大仙市:「全国花火競技大会(大曲の花火)」
- 新潟県長岡市:「長岡まつり大花火大会」
- 茨城県土浦市:「土浦全国花火競技大会」
これらは単なる規模の大きさや知名度だけでなく、長い歴史、花火師たちの技術の粋、地域に根差したストーリー性のすべてが融合した、まさに“日本最高峰”の花火大会なのです。
ここが特別!三大花火大会の共通点
- 100年を超える伝統と歴史
- 全国トップクラスの花火師が集う競技性(大曲・土浦)
- 地域や人々の想いを背負ったプログラム(長岡)
- 圧倒的なスケールと芸術性
このように、三大会それぞれが独自の魅力を持ちながらも、日本の花火文化を牽引してきたという共通の役割を果たしています。
全国花火競技大会「大曲の花火」
― 花火師の頂点を決する、真剣勝負の芸術祭 ―
「大曲の花火」と聞いて、花火好きの胸が高鳴らないわけがありません。その歴史は明治43年(1910年)、諏訪神社の祭典で催された「奥羽六県煙火共進会」までさかのぼります。
以降、100年以上にわたり、国内最高峰の競技大会として花火師の夢の舞台となってきました。
なぜ「大曲」は別格なのか?
- “競技大会”としての権威
全国から選び抜かれた花火師が、自らの技と芸術性を競い合います。 内閣総理大臣賞をはじめとする名誉ある賞が授与されるため、受賞は花火師にとって最大のステータスです。 - 昼花火と夜花火の二部構成
日本で唯一、昼間に色付きの煙で模様を描く「昼花火」を鑑賞できます。青空をキャンバスに描かれる一瞬の芸術は、まさに大曲ならではの体験です。 - 伝統と革新が共演する競技内容
直径30cmの「10号玉の部」では、完璧な真円や消え際の美しさが問われます。一方「創造花火の部」では、音楽と連動した独創的な演出が花火の新たな可能性を切り拓いています。

長岡まつり大花火大会
― 平和と復興への祈りが夜空を彩る ―
もし「感動する花火」を探しているなら、長岡の花火は外せません。
その起源は、1945年8月1日の長岡空襲。市街地の8割が焼け野原となり、1,480名以上が犠牲となった悲劇を決して忘れないために、翌年の「長岡復興祭」を経て、戦没者慰霊と復興・平和への祈りを込めて花火が打ち上げられるようになりました。
長岡花火の魅力は「想い」と「スケール」
- 復興祈願花火「フェニックス」
2004年の中越地震からの復興を願い誕生。約2kmにわたる黄金の光が不死鳥のように舞い上がる様は、目の前の全てを包み込む圧巻のスケールです。
音楽『Jupiter』とともに打ち上げられるその光景は、涙を誘うほど感動的と評されています。 - 超巨大「正三尺玉」と“ワイドスターマイン”
直径90cm、開花幅650mの「正三尺玉」は、夜空に咲く最大級の花。さらに信濃川の川幅を生かした横2km規模のワイドスターマインも見逃せません。 - 地域と一体となる演出
「米百俵花火」「ナイアガラ大瀑布」「天地人花火」など、地域の歴史や文化を反映したプログラムが多数あります。
花火とともに、長岡の“今”と“未来”を感じることができるでしょう。

土浦全国花火競技大会
― 秋の澄んだ夜空に、革新と伝統が共鳴する ―
日本の花火大会は夏が定番ですが、「秋にこそ行くべき」と語られるのが土浦全国花火競技大会です。
その始まりは大正14年(1925年)。霞ヶ浦海軍航空隊の殉職者慰霊と、関東大震災からの復興・経済振興を願い、神龍寺住職が私財を投じて開催しました。
戦後は全国の花火師が集う競技大会へと発展し、今や“スターマイン日本一決定戦”とも称されています。
土浦花火の見どころ
- 秋開催ならではのクリアな夜空
11月初旬の冷たく澄んだ空気は、花火の色彩や輪郭をよりくっきりと映し出します。夏の花火とは一味違う“凛とした美しさ”が楽しめます。 - 三部門で競う高度な技術
- スターマインの部:数百発の花火を連続して打ち上げ、リズムや構成美を競います。
- 10号玉の部:伝統的な尺玉の完成度を問う、職人技が光る部門。
- 創造花火の部:小型花火玉を用いた自由な発想による新感覚の花火が多数登場。
- 革新の舞台としての土浦
最新技術やコンピューター制御を活用したタイミング、斬新な色彩や形状の花火が次々と披露されます。「こんな花火、見たことがない!」という驚きが、毎年生まれるのが土浦の強みです。

花火の歴史を知ると、もっと深く楽しめる
花火の起源は、古代中国で不老不死の薬を作る“錬丹術”の副産物として火薬が発明されたことに始まります。
日本には戦国時代、火縄銃とともに火薬が伝来。江戸時代には庶民にも花火が広まりました。
慰霊や厄除けの意味を持ち、夏の川開きやお祭りで打ち上げられるようになったのが、今の花火大会の原型です。
明治から昭和にかけて、花火技術は格段に発展。
三大花火大会は、そんな日本の歴史と技術の結晶ともいえる存在です。
まとめ
- 技術と芸術の頂点を見たいなら「大曲」
- 祈りと感動、圧倒的なスケールを味わうなら「長岡」
- 革新と伝統、秋の澄んだ夜空を堪能したいなら「土浦」
どの大会にも、“ここでしか味わえない”と断言できる体験があります。しかしその感動は、観客一人ひとりの思いやりとマナーによって支えられているのです。
【おわりに】
伝統は、守られてこそ続きます。
それぞれの花火大会が何十年、あるいは100年を超えて受け継がれてきた背景には、地域の人々の努力と誇りがありました。私たち一人ひとりがルールとマナーを守って楽しむことこそ、次の世代にこの美しい文化を手渡す第一歩です。
今年の夏・秋、ただ花火を“見る”だけでなく、“守る”という意識も、心の中に灯してみませんか?


