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自動レジ導入の費用対効果を検証する──人件費削減のリアル
ビジョナリー編集部 2026/01/26
多くの店舗運営者やオーナーが、ピークタイムの人手不足、会計ミス、スタッフの教育負担など、多くの悩みを抱えています。そんな現場の課題を解決する「救世主」として注目されているのが、自動レジです。
「本当に自動レジはコスト削減につながるのか?」「投資した分のリターンは見込めるのか?」
導入に踏み切れず迷っている経営者や現場リーダーは少なくありません。今回は、自動レジの費用対効果や運用のリアルを紐解きながら、長期的視点でのコスト削減の可能性に迫ります。
そもそも自動レジとは?広がる選択肢と現場の変化
「自動レジ」と一口に言っても、その種類は多岐にわたります。たとえば、商品の読み取りから支払いまでを顧客自身が完了する「フルセルフレジ」、スタッフが商品スキャンを担当し、顧客が支払いだけを行う「セミセルフレジ」、現金の受け渡しだけを自動化する「自動釣銭機」、さらにAIやセンサーで無人決済を実現する「無人レジ」など、店舗の規模やニーズに応じた選択肢が広がっています。
例えば、日本セルフレジ協会の調査によると、自動レジを導入するスーパーマーケットは年々増えており、その導入率は、2022年に25.2%、2023年に31.1%、2024年には37.9%と拡大しています。2024年にいたっては、17.6%の企業が半数以上の店舗に導入しており、多くの方が一度は見たり使ったことがあるのではないでしょうか。※1
導入の背景には、慢性的な人手不足や人件費高騰、さらにコロナ禍以降の「非接触ニーズ」の拡大といった時代の流れがあります。実際、コンビニやスーパー、アパレル、飲食チェーンだけでなく、個人飲食店にも自動レジの波が押し寄せています。
導入コストは本当に高い?
「自動レジ=高額投資」というイメージを持つ人は多いのではないでしょうか。確かに、フルセルフレジや高機能な自動精算機は1台あたり数十万円から数百万円と、決して安い買い物ではありません。設置工事やシステム連携なども含めると、初期費用が100万円単位になるケースも珍しくありません。
では、導入に踏み切る店舗はなぜ増えているのでしょうか。
一つは、リース契約やサブスクリプション型のサービス、さらには国や自治体の補助金を活用することで、初期投資の負担を分散できるようになってきた点が挙げられます。たとえば、IT導入補助金の活用で導入費の半額以上をカバーできた事例もあり、これが中小規模店舗にも普及を後押ししています。
忘れてはならないのが、「維持費」の存在です。定期的な保守サービスやシステム更新、キャッシュレス決済時の手数料など、月々のランニングコストが発生します。これらを長期的な運用計画に組み込んでおくことが、失敗しない導入のカギとなります。
どこまで削減できる?人件費・業務効率化のインパクト
自動レジの最大の恩恵といえば、やはり「人件費の削減」と「業務効率化」です。では、どこまでコストが減らせるのでしょうか。
例えば、中規模スーパーでフルセルフレジを3台導入した場合を考えてみましょう。従来はレジ担当に3人のスタッフを配置していたのが、導入後は1人のサポート担当で複数台を管理できるようになった、というケースは珍しくありません。この場合、1人あたりの時給を1,200円、1日8時間、週5日勤務とすると、年間約480万円の人件費が浮く計算になります。
仮に、1台300万円の高機能モデルを3台導入し、設置費用やシステム導入費も合わせて初期費用が1,200万円かかったとしても、3年で回収、その後は年間500万円近いコスト削減が継続的に見込めます。
また、人的ミスによる会計トラブルやレジ締め作業の時間も減少し、スタッフは品出しや接客、清掃など「本来の業務」に注力できるようになります。教育コストや残業代、採用コストの圧縮も見逃せないポイントです。
※ここで示した金額はあくまでモデルケースによる概算です。人件費水準や稼働時間、既存業務の設計によって、効果の出方には幅があります。
顧客満足度の向上
自動レジの導入は、顧客体験にも大きな変化をもたらします。たとえば、ユニクロのRFIDタグ活用セルフレジのように、商品をまとめて置くだけで一括精算が完了する仕組みは、会計のストレスを驚くほど軽減します。
ピークタイムでもレジ待ちが少なくなれば、顧客の不満も減り、「また来よう」と思わせるきっかけにつながります。キャッシュレス決済への対応も標準装備されているため、「現金を持ち歩かない」層の取り込みや、訪日外国人客の利便性向上にも寄与しています。
実際、多くのスーパーやカフェ、ドラッグストアで「レジ前の行列が減り、顧客満足度が上がった」との声が上がっています。現場の混雑緩和は、スタッフのストレス低減や離職防止にもプラスの効果を与えているのです。
一方でデメリットも。高齢者対応・トラブルリスクの現実
「自動レジを導入すれば全てがうまくいく」。そう単純な話ではありません。現場では、いくつかの壁にも直面しています。
まず、高齢層や機械操作が苦手な方にとって、自動レジはハードルが高い場合があります。タッチパネルの操作に戸惑い、結局スタッフのサポートが必要になる──。こうした声に応えるため、有人レジを一部残したり、スタッフが周辺でフォローに回る体制を整えたり、といった工夫が欠かせません。
また、スキャン漏れや機器トラブルが発生した場合、会計が一時的に止まってしまうリスクもあります。特に自動精算機は精密機器ゆえに、定期的なメンテナンスや、トラブル発生時の迅速なサポート体制が重要です。メーカー選びの際には、24時間体制の保守や電話サポートの有無も必ずチェックしておきたいところです。
加えて、会計の自動化によって顧客との会話やコミュニケーションが減る、という課題も浮上しています。常連客の多い地域密着型店舗では、「会話の機会が減った」と寂しさを感じる方もいます。一方で、会計業務から解放されたスタッフが、売り場や商品説明、困っているお客様への声かけに時間を割けるようになったことで、「むしろ接客の質が向上した」という事例も数多く聞かれます。
導入で失敗しないためのチェックポイント
それでは、「自動レジ」を長期的なコスト削減ツールとして最大限活かすために、どこに注意すればよいのでしょうか。
1つめは「目的の明確化」です。単なる流行や「便利そうだから」という理由だけでの導入は失敗のもと。人件費削減を最優先するのか、レジ待ちの解消か、スタッフを接客に回したいのか──。自店舗の課題を洗い出し、数値目標を設定したうえで最適な導入台数や機種、方式を選びましょう。
2つめは「顧客層の分析」です。高齢者や機械操作が苦手な層が多い場合には、セミセルフレジや有人レジとの併用など、サポート体制の強化が不可欠です。逆に、若年層中心やキャッシュレス比率が高い店舗なら、フルセルフレジの効果がより大きく発揮されます。
3つめは「スタッフ教育と運用設計」です。機器操作やトラブル対応のマニュアル整備に加え、ピークタイムやイレギュラー時のオペレーションも事前にシミュレーションしておくことが求められます。導入初期は現場の混乱を防ぐために、十分な研修やメーカーサポートを活用しましょう。
4つめは「通信・保守体制の整備」です。セルフレジはネットワーク依存度が高いため、通信障害やシステムエラー時のバックアップ手順、保守サービスの内容までしっかり確認しておくことが、安定運用の決め手となります。
まとめ
自動レジは、初期投資やランニングコストなど一定のハードルがあるものの、現場の人手不足や会計ミス削減、顧客満足度向上といった多くの課題を一気に解決する可能性を秘めています。導入にあたっては「本当に自社に合った方式か」「コスト削減の効果はどれくらいか」を多角的に検証することがポイントです。
慢性的な人手不足や最低賃金の上昇、非接触ニーズの拡大といった時代の流れを考えれば、自動レジは単なる「業務効率化ツール」から「店舗経営の根幹を支える仕組み」へと進化しつつあります。
そして何より、自動レジの本質は「現場の働き方そのものを変える力」にあります。今こそ、未来の店舗経営に向けて、その一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。
参考文献
※1:https://www.super.or.jp/wp/wp-content/uploads/2024/10/2024nenji-tokei.pdf


