町工場の2代目社長が語る——経営課題のヒントと仲...
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「制度の壁を越え、ともに暮らす街を創る」——ケンパ・ラーニング・コミュニティ協会と西武信用金庫が織りなす優しい金融とインクルーシブ保育の未来
ビジョナリー編集部 2026/09/28
西武信用金庫が30年以上前から磨き上げてきた「課題解決型金融」。それは単なる資金供給の枠をはるかに超え、地域社会のあり方そのものを豊かにしていく「相互扶助」の精神に満ちている。効率性や数量データだけを追い求める現代において、どこまでも「人対人」にこだわり、経営者の孤独に寄り添い続ける姿勢こそが、同金庫の神髄だ。
シリーズ第5回となる今回は、多様な保育ニーズや療育支援に対応し、地域に開かれたオープンコミュニティを展開する特定非営利活動法人ケンパ・ラーニング・コミュニティ協会にスポットを当てる。
リーマンショックの爪痕が残る2010年、NPO法人という理由だけで10軒以上の金融機関から門前払いされ、絶望の淵にあった理事長の和久津肇氏。そこに「一条の光」を差し伸べたのが、西武信用金庫の吉祥寺支店だった。出会いから15年余り、ビジネスマッチングによる組織基盤の強化や助成金を活用した先進的なチャレンジを経て、両者は今、日本の福祉制度の壁に一石を投じる「インクルーシブ(包摂的)な社会」の実現へ向けて共に走っている。その深い信頼の軌跡と、次世代へ託す未来のビジョンを、吉祥寺支店長の河本操氏と共に語り合ってもらった。
絶望の淵に差した一条の光。NPOへの門前払いを救った「神様」との出会い
最初にご縁になったきっかけをお伺いしたいと思います。
ケンパ 和久津理事長: 2010年度、私たちが横浜市の認可保育所の整備事業の公募に採択された時が最初の出会いです。当時取引があった金融機関に相談に行ったところ、その銀行の規定では国の認可事業に対する融資ができなかった。それを知らずに公募に受かって大喜びでお金を借りに行ったら、「うちはダメです」と言われてしまって。そこからもう焦りまくって、10軒ほどの金融機関に飛び込みましたが、「NPOになんでうちがお金を貸さなきゃいけないんだ」と門前払い。リース会社にまで行きました。当時はリーマンショックの2年後で世の中の融資が非常に渋く、公募の提示期限まであと2週間しかないという絶望的な状況でした。
そんな時、東京都の窓口で調べたら「NPO融資」を行っている西武信用金庫さんの存在を知り、藁にもすがる思いで吉祥寺支店のドアを叩いたんです。パンフレットには「上限1,000万円」と書かれており、私たちの必要資金は3,000万円だったので3分の1にしかありませんが、「ないよりはいい」という気持ちでした。ところが、当時のご担当者様が 「いいですね、やりましょう。残りの2,000万円も私が支店長に談判するから大丈夫です」 と言ってくださった。真っ暗闇だった目の前へ、一条の光がパーッと差し込んだ瞬間でした。本当に神様に見えましたし、今でも西武さんには足を向けて寝られません(笑)。
当時、西武信用金庫様側ではどのような背景があったのでしょうか。
西武信金 河本支店長: 当時から西武信用金庫ではNPO法人の口座開設はもちろん、NPO法人向け融資の提供や「eco.定期預金」による環境保全活動助成金制度の運営、さらには「西武コミュニティオフィス」(荻窪支店の遊休フロアを社会貢献団体へ事務所として提供する)など地域のNPO法人の皆さまや環境に取組む団体の皆さまなどを応援してきました。その背景には、地域を見渡したときに、公的なサービスでは手が届きにくい分野をNPO法人の方々が支えているという認識がありました。当金庫では「地域をより良くすることを目的とするNPO法人を応援しよう」という経営のもと、2003年にNPO法人向け融資をスタートしたことが、その後さまざまな支援活動の原点となり、今に至っています。
ですから、ケンパさんの 事業計画や地域に対する貢献度、あるいは和久津理事長の理念を、審査上の数字だけではなく重く受け止めた からこそ、規定の上限を超えた融資の決断が出たんじゃないのかなと思います。地域金融機関としての使命に深く共感し合えたからこそのスタートでした。
「カウンター越し」ではない関係性。協同組合理念がもたらす圧倒的な安心感
取引が始まって15年余りとなりますが、どのような部分にパートナーとしての安心感がありますか。
ケンパ 和久津理事長: 一般的な金融機関は、担当者が転勤してしまうとそこで関係性がブツッと切れてしまいますよね。しかし西武さんは違います。いろいろな勉強会や関連会社のイベントに出向くと、かつての担当者の方々が「ケンパさん!」と今でも普通に声をかけてくれる。私の息子もメガバンクに11年勤めていたのでよく分かるのですが、普通の銀行ではあり得ない、人対人の全く別の世界の話です。 先日も髙橋理事長とお話しさせていただいたのですが、西武さんは 「私たちは協同組合であり、その理念に基づいて金融の仕事をしている」 という軸が非常に明確です。私たちNPOが地域で行っている活動も、その「協同組合理念」と非常に近しいもの。カウンター越しではなく、同じ目線に立って寄り添ってくれるからこそ、人が代わっても安心して何でも相談できるんです。
西武信金 河本支店長: 困った時に「知っている人間にすぐ聞ける」というのは、経営者の方々にとって大きな安心感に繋がります。私たちは単なる顧客と金融機関という境界線を越えて、「地域社会を共につくる一員」になったつもりで関係性を築く ことを大切にしています。だからこそ、和久津理事長が「こんなことまで」という垣根を作らずに、日常の困りごとを迷わずご相談してくださるのが本当にありがたいですね。
ビジネスマッチングと助成金がもたらした「組織のステージアップ」と新たな挑戦
伴走支援の中で、具体的に組織が大きく変わったエピソードはありますか。
ケンパ 和久津理事長: 特に印象深いのは「ビジネスマッチング」でのエピソードです。私たちは認可事業に参入する際、それまでの一般企業会計から「社会福祉法人会計基準」への移行を求められました。これは拠点ごとに予算を執行せねばならず非常に複雑で、以前の会計士の指導方法をめぐって、西武さんに紹介してもらった新しい監事の先生との間で意見が対立してしまったんです。専門家の間で意見が割れてしまい、素人の私たちは「どちらが正しいのか」と本当に頭を悩ませました。
結果として、最終的には西武さんにご紹介いただいた先生が新しく顧問になってくださり、グレーだった福祉会計処理をクリアに整え、法人としてのステージを一段上げていただく ことができました。あのままでは制度的に破綻していたかもしれず、正しい方向へ舵を切っていただいたことに深く感謝しています。
西武信金 河本支店長: お客さまの事業の課題に耳を傾け、例えば、承継される次世代の方がこれからの時代を生き抜くために何が最善かを対面でじっくり考え、人対人の相性を吟味しながら最適なマッチングを行っています。
資金面以外での、助成金を活用した先進的な取り組みについても教えてください。
ケンパ 和久津理事長: 西武さんの各種助成金には本当に助けられています。平成24年には「環境保全活動助成金」をいただき、メンバーの念願だった 「木育(もくいく=木と触れ合う教育)」の活動 をスタートできました。これが後に東京都の多摩産材活用助成金事業へと繋がり、保育所を整備する際の床や壁に多摩産材を使う福祉施設の木質化事業へと大きく発展しました。
また、直近では「地域みらい助成金」をいただき、バングラデシュの支援団体と共同で、将来を見据えた活動を行っています。国内の小児分野の特定技能実習生はまだ国として市場開放されていませんが、いずれ必ず開放される時が来る。その先を見据えて現地の看護学校と連携協定を結ぶため、現地へ赴く活動も応援していただきました。「どうやって融資を回収するんだろう」と不思議に思うくらい、まずは私たちの挑戦を後押ししてくださる姿勢に驚かされます。
西武信金 河本支店長: 私たちが提供する「地域みらい助成金」は、お客様から集めた定期預金の利息の一部と金庫からの拠出金を財源にしています。私たちの目的はお金を出すことそのものではなく、助成金のプレゼン会や協創サロンという場を通じて、地域の仲間や同業の方々との繋がりを広げること です。その場で同じ高い意識を持った人たちが出会うことで、ものすごく良い化学反応が生まれる。お金の話の前に「あのお客さんは何に困っているのか」という原点に戻り、外堀から支援の輪を広げていくのが私たちのマッチングの神髄です。
制度の壁を打破し、障害の有無にかかわらず「ともに暮らす街」へ
理事長が次の世代へバトンとして渡したい、今後の夢をお聞かせください。
ケンパ 和久津理事長: 私も60歳を超え、次の世代へどうバトンを渡すかを本気で考えています。私が実現したいのは、保育所や療育施設という枠組みを超えて、 「違いがある人たちが日常の中で出会えるオープンコミュニティ」 の創造です。
現在の日本の福祉は、保育・教育・療育(発達支援)の制度設計が細かく分断されており、縦割りになっています。しかし、子供たちに制度の壁など本来関係ありません。私は大人になってから父親がALS(筋萎縮性側索硬化症)になり、重症心身障害者の現実を初めて目の当たりにしました。そうした重症の障害を持つ方々は、社会から見えにくい入所施設の中で暮らしていることが多いのが現状です。
でも本当は、みんなやりたいことがあり、地域の中で一緒に暮らしていけるはずなんです。子供の頃から場所を分けてしまうから、お互いの顔を知らないし、知らないから助け合おうという意識も生まれない。だからこそ、住む場所や障害の有無、国籍といったあらゆる壁を取り払い、街の中にみんないっしょにいる仲間じゃないのという世界 に行き着きたい。これが、私が生きているうちに何としても走って成し遂げたい強い課題感です。
西武信金 河本支店長: 和久津理事長が目指す「インクルーシブ(包摂的)で壁のない保育事業」は、まさに当金庫が地域金融機関として目指す「人に、地域に、未来に“やさしい”金融機関」というビジョンと完全に一致しています。制度とのギャップに苦しまれる部分を、私たちの持つブレーンやマッチングの力で支え、共に走る仲間を増やしていくお手伝いをこれからも全力で続けていきます。
「非効率なことこそ有益」——ノルマなき信用金庫が貫く伴走型支援の神髄
改めて、西武信用金庫様が体現されている「伴走型支援の神髄」とは何でしょうか。
西武信金 河本支店長: 当金庫は30年ほど前にお客様への集金業務を一切やめ、課題解決の提案型へと舵を切りました。私たちが大切にしているのは、銀行のような売上至上主義ではなく、協同組織としての「相互扶助」の精神です。たとえ費用や手間がかかっても、徹底的にお客様の支援を実施する。それによってお客様の収益が改善し黒字化(※当金庫のお客様の黒字率は68.04%(2026年3月末))すれば、結果として不良債権が減り、金利競争に頼らない本業の成長へと繋がるという「循環可能なビジネスモデル」を貫いています。
これからの人口減少時代、大手企業のような効率重視のやり方では、中小企業のきめ細かなニーズには応えられません。私たちはあえて 「非効率なことこそが一番有益である」 と捉え、汗をかいて徹底的にお客様の話を聞くことに集中しています。
実は、西武信用金庫には本部から各支店へのノルマが一切ありません。 各支店の現場スタッフが自発的に「この地域のためにこれだけの数字をやります」と積み上げたものが、全体の事業計画になります。与えられたノルマではなく、自分で考えて動くからこそ、お客様のために何ができるかを純粋に追求できる。これからも固定観念を持たず、常にお客様のニーズの原点に立ち返り、一番近い存在として手を取り合ってまいります。
効率化の時代に敢えて「ともに汗かく」伴走を
「NPOだからと10軒も断られた私たちを、西武さんだけが信じてくれた」。ケンパ・ラーニング・コミュニティ協会の和久津理事長が語ったあの日の一条の光は、いまや多摩産材を使った木育や、バングラデシュとの国際的な医療・保育連携という大きな大樹へと成長を遂げている。
同協会が描く「インクルーシブな社会」の実現には、行政の制度や社会の意識といった高い壁が立ち塞がる。しかし、その高い壁に対しても、単なる数字の関係ではなく「この人と共に、この地域を良くしたい」という情熱で寄り添い、共に汗をかく西武信用金庫という心強い伴走者がいる。
「効率化」がもてはやされる現代だからこそ、あえて非効率な対話に汗をかき、経営者の孤独な隣人であり続ける地域金融の姿勢は、ケンパ・ラーニング・コミュニティ協会のインクルーシブな理念とも深く響き合っている。一社の挑戦を地域みんなで支え、その化学反応がまた新しい豊かさを生み出していく。住む場所や障害の有無にかかわらず、すべての人が安心しながら手を取り合って生きていける優しい社会の実現へ向けて、両者のあたたかな挑戦はこれからも続いていく。
特定非営利活動法人 ケンパ・ラーニング・コミュニティ協会
https://www.kenpa.jp/


