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セ・リーグに導入された指名打者制とは。これまでの歴史と導入されることでどのように変わるのか
ビジョナリー編集部 2025/08/12
2027年シーズンから、セ・リーグにも指名打者制(DH制)が導入されることが決定しました。DH制はどんな制度で、どのような影響があるのか。この記事では、野球界に訪れる大きな転換点について解説します。
そもそも「指名打者制(DH制)」とは?
指名打者制の基本ルール
DHとは「Designated Hitter(指名打者)」の略で、簡単に言えば「守備をせず、打撃だけに専念する打者」を指します。通常、野球では9人が守備につき、その9人が打順にも入ります。しかしDH制を導入した場合、投手は打順から外れることで投球に専念し、代わりに“打つ専門”の選手が入るのです。
ポイントはここ!
- 投手は投球に専念し、打席に立たない
- DHは投手の打順にだけ入れる(他の野手の代わりにはなれない)
- スターティングメンバー発表時にDHを指定。試合中に後から追加することはできない
DH制の有無はチーム戦略や選手起用に大きな違いを生み出します。
なぜセ・リーグはこれまで「9人野球」にこだわってきたのか?
伝統と“妙味”への誇り
なぜセ・リーグは「9人野球」にこだわってきたのでしょうか。理由は大きく2つあります。
- 歴史と伝統への敬意
セ・リーグは、野球が日本に伝わった当時から続く「9人で攻守をこなす」というスタイルを大切にしてきました。打てない投手に代打を送るタイミング、投手交代と同時に生まれる駆け引き──こうした“采配の妙味”も9人制ならではの醍醐味です。 - 野球全体への影響
セ・リーグがDH制を採用すれば、アマチュア野球や高校野球にも波及効果が及ぶ。日本の野球文化全体を見据え、慎重な判断が求められてきました。
国際的な潮流とアマチュア野球界の変化
世界のトレンドに適応
- メジャーリーグ
アメリカン・リーグは1973年からDH制を導入。2022年からはナショナル・リーグも加わり、大リーグ全体でDH制がスタンダードになりました。 - 日本のパ・リーグ
1975年からDH制を採用し、打撃戦の増加や観客動員アップに成功しています。 - 国際大会(WBC・五輪)
ほぼ全ての大会でDH制が標準ルールとなっています。
こうした国際的な流れに対応するため、日本のアマチュア野球界も動き始めました。2026年からは東京六大学野球、関西学生野球、日本高校野球連盟でもDH制が導入されます。
DH制導入で野球はどう変わる? メリットとデメリット
投手の負担軽減と“スペシャリスト”の台頭
メリット1:投手の体力・安全の確保
投手は投球に専念できるようになるため、打席でのケガや走塁による体力消耗を避けられます。特に夏場の連戦や、怪我のリスクが高い高校野球ではこの効果が顕著です。
メリット2:打撃に特化した選手の活躍
「守備は苦手だけど打撃は一流」──そんな選手が、これまで以上に試合で輝くチャンスを得ます。高校野球の現場でも「個性を生かせる」「試合に出る機会が増える」と歓迎の声があがっています。
メリット3:戦略の多様化
DHを使うか否かはチームごとの判断に委ねられます。たとえばバッティングも得意な投手なら、DH制を使わず“投打二刀流”で起用することも選択肢になります。
メリット4:観客が楽しめる打撃戦
打線の切れ目がなくなり、得点シーンが増加することで、球場の盛り上がりやファンの満足度もアップ。チケット販売や視聴率向上も期待できます。
デメリット:控え選手の出場機会と采配の妙味
一方、全てがプラスに働くわけではありません。
- 控え選手の出場機会減少
投手の打順で代打や代走を起用していた場面が減るため、控え選手の出番が減る懸念もあります。 - 采配の妙味が減少?
投手交代のタイミングや、代打・代走の駆け引きといった“監督の腕の見せ所”がやや単調になる、との指摘も一部にはあります。
「大谷ルール」──“二刀流”も活躍できる新時代へ
2027年からのセ・リーグDH制では、世界を席巻した「大谷ルール」も採用されます。 このルールは、先発投手がDHも兼務できるというもの。例えば、投打に秀でた大谷翔平選手のような“二刀流”選手は、投手を降板した後もDHとして打席に立ち続けることができます。
大谷ルールのポイント
- 先発投手がDHを兼務できる
- 降板後も打者として試合に残れる
これにより、投手としても打者としても高い能力を持つ選手の活躍の場が一段と広がります。
まとめ──伝統と進化、その先にあるもの
セ・リーグがついに導入を決めた指名打者制(DH制)は、ルール変更にとどまらず、日本の野球の在り方そのものに大きな変革をもたらします。
- 投手・打者それぞれの特性を最大限に生かせる
- 新たな戦略、多様な選手起用が可能に
- 国際大会やアマチュア野球界との一体化が進む
一方で、伝統の“9人野球”が生み出してきた采配の妙味や控え選手の出場機会など、失われるものもあるかもしれません。しかし時代は変わり、野球もまた進化を続けます。
今こそ、野球の「これから」に注目してみてはいかがでしょうか。


