Diamond Visionary logo

4/24()

2026

SHARE

    THE CIO LOUNGE 第11回——レガシーを未来資産へ。「マイグレーション」とAIが拓く日本企業のシステム刷新

    THE CIO LOUNGE 第11回——レガシーを未来資産へ。「マイグレーション」とAIが拓く日本企業のシステム刷新

    この記事に関する企業はこちら

     FM大阪で放送中のラジオ番組『THE CIO LOUNGE』。前回は、Nexthink合同会社ジャパンプレジデントの萩野 武志氏を迎え、デジタル環境の快適さを測る指標として注目される「デジタル・エンプロイー・エクスペリエンス(DEX)」が紹介された。3月14日(土)オンエアの第11回では、株式会社システムズの代表取締役・小河原 隆史(おがわら・たかし)氏が出演。旧言語でプログラミングされた基幹システムを捨てずに新環境へと再構築する「マイグレーション」という手法を通し、変化の激しいIT業界において“レガシーを継承する”という新たな価値観を提示した。

     コメンテーターは矢島 孝應(NPO法人 CIO Lounge理事長)氏が務める。

    古い基幹システムを流用し新システムへ移行する、「マイグレーション」という選択肢

    珠久: 株式会社システムズは先代のお父様が創業されたそうですね。

    小河原: はい、今から57年前です。当時はまだコンピューターという言葉がなく、電子計算機と呼ばれている時代でした。当時はキーボードもなかったので、プログラムはパンチカードに穴を開けて入力しており、この穴開けを仕事にしていたのです。それが時代とともに技術者を派遣する会社になりました。しかし、技術者を派遣するだけでは今後ビジネスが広がっていきません。そのためお客様に付加価値を提供できるようなサービスをしようと考え、その一つとして「マイグレーションビジネス」を強化しようと舵を切ったのです。

    矢島: マイグレーションとは、どんなものでしょうか。

    小河原: マイグレーション(migration)とは「引っ越し」という意味で、老朽化した基幹システムをうまく流用して、新しいシステムへの移行をお手伝いするサービスです。携帯電話を新しい端末に変えるときはボタンを1つ押せば新しいハードウェアに移行できますが、一般企業のシステムの移行はそうはいかず、引き継ぎ作業は大変です。そのため古いシステムを捨ててゼロから新しくシステムを構築する企業も多いですが、内容はあまり変わらないのに数億円のコストがかかってしまいます。そこで、今使っているシステムを利用して新しい環境に移行するのが、我々のビジネスなんです。

    矢島: 今、ITの世界は本当に技術革新が速く、コンピューターには新しい言語で新しい指示をしないといけない。新しい言語がどんどん生まれるので、当然古い言語も増えていきます。ここにいち早く着目した先見性は素晴らしいですね。

    小河原: 新しいシステムも、5年、10年経てば必ず古くなります。古いものと新しいもの、両方をしっかり理解して、新しい環境に再構築することが社会的にも必要になるだろうと考えていました。また今あるものを効率的に使ってコストを抑えれば、その分他のDXや新しいビジネスに投資することも可能になるのです。 記事内画像

    旧システムの再構築に困った時の駆け込み寺、“レガシー侍”とは

    矢島: 「古臭い」とネガティブに捉えられがちなレガシーシステムをポジティブに再利用して、ムダをなくす。小河原さんはその促進のために「レガシー侍」というコミュニティを作っているとも伺いました。

    小河原: 古いプログラミング言語を知っている60~70代の人たちはどんどん引退していっているので、知っている人がいなくなっています。しかし金融や電力、重厚長大産業の業界では、30~40年前に使われた「COBOL」や「アセンブリ」といった古い言語で動いているシステムがまだ存在します。この古いシステムを再構築するときにはレガシー技術者の力が必要で、そういった人たちが集まるコミュニティを前もって作っておかなければと考え、2022年に立ち上げました。

    珠久: 若い方が古いシステムを担当したら、何これ! ってなるわけですよね。そんな時にコミュニティの方に質問したり相談したりすると、サポートをしていただけるのですね。

    矢島: 企業の中では、既存技術と最新技術を組み合わせながらIT化を進めていかないといけない部分がありますよね。伊勢神宮の式年遷宮も、20年ごとに社殿を新たに造り替える過程を通じて、宮大工の技術を計画的に次世代へ継承していく側面を持っていますよね。

    小河原: 日本の伝統芸能・文化には、「継承すること」が仕組みとして組み込まれているのですが、IT業界に関しては同様の考えがまだないんです。40、50年の歴史の浅い分野ですから、作ったら捨ててまた作り直すという文化しかないんですよね。だから私は「使えるものは使っていきましょう」と言いたいのです。全部が全部作り直せばいいということではなくて、今のままでも直して使えるものもあるのだと。 記事内画像

    伝えるべきものを残し、変えるべきものを変える──AI時代のレガシー刷新論

    珠久: リストラクチャAI(Re:Structure AI)という生成AIを使ったサービスを提供開始したそうですが、これについて教えてください。

    小河原: リストラクチャAIは既存システムのソースコードや、運用担当者のナレッジから、システムの仕様書を生成するツールです。マイグレーションを行う際、人海戦術でやる部分が多く、それを生成AIの活用によって効率化を図る目的で作ったものでした。生産性の向上に役立っており、工数を今までの半分か3分の1程度に減らすことができます。例えばシステムを移行する際に必要な情報が揃っていないことが結構あるので、準備にかなりの時間を取られていました。移行の半年から1年前にリストラクチャAIを入れて、不足している情報を事前に洗い出して整理しておくことで、スムーズに作業を進められるようにします。

    矢島: 紙の仕様書が残っていないこともありますよね。

    小河原: そうなんです。そのため、プログラムを解析して機能を明らかにし、現場担当者の知識など、文書化されていない情報も事前に集めて整理します。準備をしておくことで、移行時に無駄なく、確実に作業を進めることができます。

    矢島: 企業の目指すもの、システムを使う目的を明確にして、伝承すべきものと変えていくべきものを見極めていくのが大事になるでしょうね。過去のノウハウを残しながらも、どんどん進化するテクノロジーを組み合わせていかないといけない。この組み合わせをしっかりとできた企業が、これから10年、20年先の日本をリードすると思います。その助けになる小河原さんの仕事は、非常に重要だと思いますね。

    小河原: ありがとうございます。企業のシステムは古くなり続けていきますので、それをしっかり新しいシステムに繋げ、価値のあるビジネスに繋げることを今後も社会に提供していきたいなと思っています。実は現在、書籍の出版を準備しています。レガシーシステムに携わって30年の経験から、システム刷新のあり方に関してまとめました。古いものをしっかり使っていこう、とIT業界に広げていきたいです。 記事内画像 ※番組収録時のディレクターカット版をポッドキャストでお聞きいただけます。
    https://www.fmosaka.net/_ct/17828664

    ※収録の雰囲気も楽しめるYouTube動画をご覧いただけます。 https://youtu.be/SshPTcrHNbs?si=PoFOEQSY_r3K2_Bk

    <番組情報>
    番組名:「THE CIO LOUNGE」
    放送日時:毎週⼟曜⽇ 7:00〜7:25
    放送日:2026年3月14日(土)7:00〜7:25
    放送局:FM大阪

    ゲスト:小河原 隆史(おがわら・たかし 株式会社システムズ 代表取締役社長)

     新卒でパソコンや周辺機器を扱う商社に入社し、営業職を経験。1999年、先代社長(父)が創業した株式会社システムズに入社し、SEとして開発・PL/PMなどを約5年間経験。その後、アメリカ・シリコンバレーに留学し、帰国後は新設営業部門の責任者を務める。2007年、執行役員マーケティング事業本部長に就任。2011年、二代目として代表取締役社長に就任。

    コメンテーター:矢島 孝應(特定非営利活動法人 CIO Lounge理事長)

    元ヤンマー株式会社取締役CIO。パナソニック、三洋電機、ヤンマー3社で情報システム責任者を経験。現在理事長を務めながら、数社の社外取締役や顧問等の立場で活動。趣味はゴルフとワイン。

    パーソナリティー:珠久 美穂子(FM大阪DJ)

    大阪府出身。2000年にFM大阪の『Hit Street Midnight Special』でDJデビュー。趣味はドローン、ゴルフ、テニス。珠算検定2級、暗算検定2級、秘書検定2級。

    この記事に関する企業はこちら

    あわせて読みたい

    記事サムネイル

    実践を通じた人材の育成がDX推進のカギ

    記事サムネイル

    株式上場とは何か?仕組み・メリット・デメリットを...

    記事サムネイル

    一般企業こそIT/デジタル人材の育成を急ごう!

    記事サムネイル

    THE CIO LOUNGE 第10回――デジタ...

    Diamond AI trial

    ピックアップ

    Diamond AI
    Diamond AI